「モスリン鼻笛ライブ!(前篇)」第145回サルシカ隊がいく

投稿日: 2012年04月16日(月)20:23


写真/加納 準 & 松原 豊・中谷兼敏  文/奥田裕久

江戸橋にある小劇場「津あけぼの座」にワレワレが入ったのは、2012年4月9日の午後2時であった。
みんな勢い込んだ様子はなく、リラックスした感じでゆるゆると・・・悪くいえばダラダラと(笑)、荷物を運び込むところから今回の物語はスタートするのである。

きっかけは、昨年末に行われた「鼻笛第九」であった(上の写真)。
日本鼻笛協会という摩訶不思議なものがこの世には存在しており、かつ、その三重支部(伊勢友の会)というものが珍妙なことに実在していて、その会長(さとうさん)と副会長(池山大工)が、鼻笛で第九をやろう、みんなで集まってホーホー吹こう、などと言い出したのである。

最初は物好きが10名ほど集まり、鼻笛を力いっぱい吹いて、あー疲れた疲れた、さあビールで飲んで笑っておしまい、なんてことだろう思っていたら、なんと日本で唯一のプロの鼻笛奏者であるモスリンさんから突然連絡があり、「いやあ、それは面白い、私もぜひ参加しよう!」なんてことになった。
で、埼玉在住のモスリンさんは深夜バスに乗って三重県津市までやってきちゃったのだ。

一方、サルシカ隊長のワタクシは、写真師マツバラや池山大工から「鼻笛って面白いぞ~、吹け~吹け~吹け~」と呪いのように言われていて、いつのまにかそのドップリと鼻笛にはまっており、もちろんYoutubeなどでモスリンさんの存在は知っていた。
モスリンさんの動画を見ながら鼻笛の練習をしてきたのだ。
鼻笛ファンにとっては、もう憧れの、神様のような存在なのだ(笑)。

そのモスリンさんがくる・・・しかも鼻笛第九に!!
ワタクシはすぐさま鼻笛をホーホー吹きながら会場である四天王寺に走ったのである。
しかしそれはワタクシだけではなかった。
なんと50人を越える鼻笛ファンが四天王寺に集い、そして年末の寒空に幾十ものホーホーの音色を響かせたのである。

※「鼻笛第九」の詳細はこちらを参照のこと。

以来、ワタクシは風呂で鼻笛を吹くことを日課としており、生出演している三重テレビの番組で、頼まれてもいないのに鼻笛を披露し、ぬははははは、と笑っている始末であった。
どこへ行くにも鼻笛を持ち歩き、アチコチでホーホーと吹いて鼻笛の魅力を語り、布教活動に努めてきたのだ(笑)。

そんなある日、Facebookを通じて、モスリンさんが「また三重に行くよ~、鼻笛吹きに行くよ~」と連絡が入った。
日本鼻笛協会伊勢友の会は、ただちに反応し、「スグサマキタレイ ハナブエフイテマツ」と電信。
すぐさまいくつものイベントにモスリンさんの鼻笛ライブが組み込まれ、モスリン三重ツアーが形づくられていったのだ。

ワーイワーイ、モスリンさんがくるぞ~!!
ワタクシも最初、彼のいちファンとして大喜びしていた。
が、わざわざ埼玉から三重にまで来てもらうのに、モスリンさん主体のイベントがなく、他の企画との連動型ばかりで、正直交通費などの経費すら稼いでいただくことも出来ないのでは・・・と思い立ったのである。
不安に襲われたのである!

「お金より、まずは楽しむことですから!」
と、モスリンさんは優しく語ってくれているが、毎回毎回赤字じゃ、もう三重に来てくれなくなるんじゃないか。
「三重はね、鼻笛人口は多いけど、シミッタレなんだよ、もう三重キライ!」
なんてことになるんじゃないか!
いかん!
これはイカン!!!

コレハナントカセネバナラヌ・・・・。

たぶんモスリンさんも含め、誰もそんなことは思ってなかったと思うが、ワタクシはひとり激しく決意し、
「やるぞ! モスリンさんの本格的ライブをやるぞ!! モスリンさんには絶対にギャラを払えるライブをやる!! お客さんが入らなかったらサルシカがギャラを保証する!!! するったらする!!」
と、宣言しちゃったのだ。

万年貧乏集団で銭湯企画の銭湯代にも事欠く次第であるのに、言うことだけは立派なのだ(笑)。
そして宣言して35分後には、あーあーどうしよう・・・と不安になっているワタクシなのであった・・・。

光陰矢のごとし。
あっという間にライブ当日になった。

ライブ会場は津あけぼの座。
林家染弥さんが8時間耐久落語を完遂した、津が誇る小劇場である。

実はライブをやることに決めてすぐ、この津あけぼの座の運営母体であるNPO法人パフォーミングアーツネットワークみえ・・・絶対に一度では覚えられたないこの法人の代表の油田さんに、カクカクシカジカで劇場を貸してもらいたい、とお願いをしたのであった。

すると、「よろしおま、やってみたらよろしいがな」と、なぜか珍妙な大阪弁で、全面協力していただくことになったのだ。
こうしてモスリンさんの単独ライブが決定したのである。

こちらがモスリンさん。
心優しき鼻笛奏者である。

実はモスリンさんはもう4日ほど前から三重入りしていた。
うきさと村や鈴鹿、関町などを転々とライブし、酒を飲み、ごろ寝してきたのである。
同行している鼻笛協会のさとう会長と池山大工に、
「見た目は元気そうだけど、結構年いってんだからムリをさせてはいかんよ。夜は薬でも盛って寝かせなさい!」
と、ワタクシは密かに指令を出しておいた。
が、鼻笛奏者はえんえんと鼻笛を吹き、飲み、騒ぎまくっていたという。
にもかかわらず、この日もやたらゲンキであった。
恐るべきオッサンである(笑)。

モスリンさんの単独ライブというものの、鼻笛奏者を支える仲間たちがいた。
日本鼻笛協会伊勢友の会副会長の池山大工(写真右)が率いる?「地熱エナジーズ」のみなさん。
なぜか職人さんが多いグループである。

そして三重が誇る尺八奏者、新田みかんさん。
が、なんでチンドンの格好なのだ。
しかも作業着だし(笑)。

ま、細かいことはいいとして、このメンバーでライブをやるのである。

さっそくリハーサルがはじまった。
おおよその流れと曲目は考えてあるが、もう一度ここで確認しつつ形にしていく。
それぞれの立ち位置と演奏者の入れ替わりが大きな問題だった。
何度も何度も繰り返し確認する。

最初は生音で対応する予定であったが、あけぼの座の好意でマイクやラインを用意していただくことに。
照明を調整するのは、山中さん。
今日来ていただくお客さんに、喜んでもらいたい、鼻笛の魅力を存分に知ってもらいたいという思いで調整していく。
魅せる聴かせるプロなのだ。

が、魅せる聴かせるプロたちは、誘惑に弱い(笑)。
お客さんに販売するはずの鼻笛を、いち早く物色し、一番イイ音が出るものは自分のモノにしてしまうのだ、ウシシシシシ・・・という様子である。
まだ開場もしていないのに3000円の鼻笛3個お買い上げ。
すでに9000円の売り上げである。
こんなことでいいのかどうか・・・今となってはどうでもよいのだ(笑)。

リハーサルが一段落した午後4時30分。
モスリンさんとさとう会長、フォトグラファー加納とワタクシの4人は、津あけぼの座から車で10分ほどのところにある三重テレビ放送へと移動。
ワタクシも出演している番組「とっても!ワクドキ!」にモスリンさんが生出演。

対応してくれたのは、銭湯企画でおなじみのボーノーさん。
彼は月曜日のワクドキの担当ディレクターでもあったのだ。

無意味ににらみを効かせるワタクシを横目に、やりにくくて仕方ないという様子のボーノーさん。

「た、隊長、言いたいことがあるなら言えばいいじゃないですか。それともモスリンさんといっしょにテレビ出ます?」
「出ん!! ワシはモスリンさんのマネージャーじゃ!!!」

なんとも態度のでかいマネージャーなのである。

実は「とっても!ワクドキ!」では、曜日をこえて、何度も鼻笛ライブの告知をしてくれた。
そしてモスリンさんの生出演も。
ライブ直前の出演だから、今日の告知にはならないが、鼻笛の普及には大きく貢献してくれるに違いない。
感謝なのだ。

そしてスタジオへ。
月曜日の出演者は、稲葉さんと中津さんである。
ワタクシが水曜日に座っているところに中津さんが座っている。
女性ふたりだと妙にスタジオが華やかなのだ。
なぜワタクシがあの席に座ると、画面が暑苦しくなるのか、不思議である。
まったくもって理解できない(笑)。

生放送がはじまった。
ライブだけでなく、テレビやラジオにも何度も出演しているモスリンさんは、いつもの調子で落ち着いてお話。
なかなか良い感じなのだ。

そしてスタジオで生演奏。
吹いたのは、『アメイジング・グレイス』。
透き通った音色が、電波に乗って三重に降り注いだのだ。

そして演奏のあと、稲葉さんと中津さんに鼻笛レクチャー。
「口をあーんと開けて、もっと下、口をすぼめて、もう少し上・・・」
言葉だけ聞いていると、なんかエッチなのだ(笑)。

出演を終えて、ワレワレは三重テレビを飛び出した。
もうすぐ7時の開演の時間である。
最後のチェックと準備、そして何より大切な晩ごはんを食べなくてはならぬのだ!!(笑)

なんとも中途半端なところであるが、続きは後篇にて!
24時間以内に後篇アップする・・・と思う(笑)。