「トレーラーハウスを移動せよ!②」第149回サルシカ隊がいく

投稿日: 2012年05月09日(水)13:19


photo/写真師イナガキ(稲垣博文)  txt&photo/サルシカ隊長(奥田裕久)

サルシカ秘密基地計画の第2弾!
いよいよトレーラーハウスの輸送である。

トレーラーハウスを提供してくれた三重県津市久居の勝田歯科医院から、秘密基地建造計画地がある津市美里町の某所(隊長の家の前ね)まで、およそ15km。
乗用車ならあっという間の距離だが、大型のトレーラーとクレーン車が走るのである。

先発隊、前後の安全を守る守備隊、そして撮影隊やその他もろもろでの大移動。
携帯電話を無線機のように使いつつの大作戦であった。

仕事のため久居の現場を離れたワタクシ、サルシカ隊長のオクダは、急いで美里へと戻っていた。
美里町へ入る直前、今回臨時カメラマンを務めているエネオス稲ちゃんに電話した。
稲ちゃんもワタクシもPhoneユーザー。
稲ちゃんはBluetoothのイヤフォンマイクを使って格好いいが、ワタクシはダッシュボードにiPhoneを固定してのスピーカフォン。
お金はかからんが、大声で怒鳴ってしゃべらないと相手に聞こえないという弱点がある。

「稲ちゃーん!! 今どこにおるんや~!!」
「あ、ボク?」と稲ちゃん。「久居西中学のそばのローソンを通り過ぎたとこやけど」
「ちがーうー!! トレーラーハウスはどこを走っとるんやってこと~!!」
「ああ、それやったら目の前を走っとるよ」
「カフェ ヒビコレの前あたりで待ちかまえるで~!! 電話をくれるか~!!」
「今しゃべっとるやん」
「ちがーうー!! ヒビコレのそばに近づいたらもう一度や~!!!」

こんな調子で、もうすでに私の声はガラガラなのだ(笑)。

そしてワタクシがヒビコレの前の道に到着し、車を止めた途端、稲ちゃんから緊急コール!

「隊長! いまグリーンロード曲がったあ! もうすぐいく!!」
「わかった!!」
「隊長、iPhoneでの撮影やろ! 役場の前の道を抜けるから、トレーラーより先にそっちいく!!」

おおおお、すばらしい動きなのだ。
若干ローカルな固有名詞が入っているのでわからんだろうが、ワレワレ美里に暮らすものなら誰でも知っている道をトレーラハウスは曲がり、ゆっくりとこちらに向かっている。
そして稲ちゃんは、自分の経営するエネオスのGSで合流する近道で、トレーラーの前に出てこちらにやってきた。

稲ちゃんは車を停めるなり、さっそうと飛び出してきた。
やはりエネオスの作業着である。
彼はパソコンの講師のときも、カメラマンの時も、必ずエネオスなのだ(笑)。

「隊長、もう来る!!」

そう稲ちゃんが言うやいなや、巨大な親子ガメ状態のトレーラーがやってきた。
エネオス稲ちゃんは、写真師イナガキとなって、バシャバシャとシャッターを切る!!

「うひゃ~、すげえ~!!」

iPhoneで撮影していた隊長の横を親子トレーラーが通り過ぎる。
すごい迫力であった。

そしてすぐさま稲ちゃんとワタクシは車に乗り込み、その巨大編隊を追った!!

あたりの木々を揺らし、トレーラーハウスはいく。
後ろの安全を守る車の赤いランプが点滅する。

通り過ぎる車の運転手、道行く人が何事かと振り返る。
慌てて写真を撮っている人もいた(笑)。

続いて我が集落へと入る。
ますます道が狭くなり、トレーラーに木々がこすれる。
桜の花の残りが雨つぶとともに落ちてくる。

トレーラーハウスは予定されていた一時待機場所へと停車。
稲ちゃんとワタクシはぐるりと回って秘密基地建造計画地へと入る。
もうそこには、指揮官ヨシヒロ君やキヨちゃん、やっさんが先に到着して、現場を見守っていた。

「あ、きた!」

またゴゴゴゴゴという音が聞こえてくる。

60トンクレーン車が、世帯数47、総人口100名ほどの集落を揺らしてのっそりと坂道をあがってきた。
まるで牛鬼のような怪物がノシノシとやってきたようだ。
近所の犬たちがワンワンと吠え立てる。
何事かと玄関から走り出たじいさんばあさんが10人ほどが、ヒイイイイと腰を抜かして座り込んでいた(ウソです)。

トレーラーハウスを設置する場所は数日前にコンクリートで土台がつくられていた。

我が家は集落のメイン道路をあがって、そこからさらに横幅2.5mほどの細い路地を上ったところにある。
その道には絶対にトレーラーは入らなかった。
そこで、我が家の敷地の下にある道に目をつけた。
その道も60トンのクレーン車やトレーラーは入らないが、その横の空き地がタカシ隊員のところの所有であった。
なんと、今回の移動計画のために土木工事を敢行し、道を大幅に拡張したのだ!
まさに、やってる本人が驚くほどのスケールなのである!(笑)

その広げた道にクレーン車が入った。
アウトリガーを広げ、唸り声をあげてクレーンの頭をあげていく。

写真師イナガキは危険を顧みず、その中を走り、シャッターを切った。
もはや彼は戦場カメラマンである(笑)。

と、ここまで調子よく書いてきたが、もうすでに午後1時を回ろうとしていた。
ここで一度、昼休憩とする。

まだ雨が降り続いているため、作業員のみなさんには、完成したばかりのガレージで休んでいただくことに。
サルシカ隊の面々は、サルシカ号でのごはんとなった。

お弁当を食べながら、
いま自分たちがやっていることのスケールの大きさに改めて驚く。
冷静になればなるほど、現実とは思えなくなる(笑)。

そして午後2時まえ。
作業再開。

今回の輸送のためにつくったオリジナルの鉄骨フレームをクレーンに装着。
そしてトレーラーがゆるゆるとバックでクレーン車のまえへとやってくる。
巨大な機械たちが連なり、このままトランスフォームしてしまいそうだ(笑)。

作業スタッフのみなさんは雨に打たれながらもキビキビと動いた。
緊張感がこちらにも伝わってきた。

固定したフレームとワイアを何度も何度も調整する。
少し上げては降ろし、調整。
そして・・・・。
ふわりと静かにトレーラーは浮かんだ。

が、わずかにトレーラーが歪む。
そしてその時吹いてきた風に揺れる。
翻弄される。

「あかんあかん! 右がさがっとる! 一度下ろしたほうがええ!!」

指揮官が叫ぶ。

それから2回、3回とアタックした。
しかしうまくいかない。

そして4回目、5回目だったろうか。
今度こそまっすぐに安定してトレーラーは浮かび上がった。

「よっしゃ~!!」

誰もが吠えた。

トレーラーハウスは方向を変え、ぐいぐいと上にあがっていく。

その下を作業スタッフのみなさんがロープで支えながら走る。
石垣の坂を転びながら走る。

トレーラーハウスは、まるで巨大なUFOのようにしずかに秘密基地計画地へと飛来した。
「おおおお」とか「あああああ」と声をあげるワタクシたちは、さしずめ超常現象信者である(笑)。

集落の少し離れたところからの写真。
まるでクレーンが首長恐竜のように見える。
そして鳴り響くエンジン音は、恐竜たちの唸り声だ。

「いったい何をやっとんの、あんたんとこ!」

近所のおばちゃんがマジで目を剥いていた。
この夜、たぶん集落の中で、いろんな話が飛び交ったに違いない(笑)。

「あの、イノブタ隊とサルシシ隊とかやっとるオクダさん、あそこは一体ナニをするつもりやな」
「ホテルでも作る気やろか」
「えええ、こんな山奥にかなあ~」

はい、里山の食卓の会話も提供するサルシカ隊でございます(笑)。

トレーラーハウスは着地ポイントにゆっくりと、しかし確実に近づいていた。
作業スタッフのほとんどがトレーラーハウスを取り囲む。
みんなで「もっと左!」「ちょい奥!」と声をかけ、人力で押して位置を微調整する。

そして午後3時30分。
ついにトレーラーハウスは秘密基地へと接地した!

作業をはじめておよそ7時間・・・。
長い戦いであった。

輸送を担当していただいたスタッフのみなさん、指揮官のヨシヒロ君、キヨちゃん、やっさん、そしてカメラマンをしてくれた写真師マツバラ、写真師イナガキに心より感謝するのだ。

設置後、サルシカ隊の面々で横のでっぱりを元に戻した。
いろいろ頭を悩ませ、苦しんだでっぱりである。
が、引っ張りだすのは一瞬であった。

「おおおおおおお・・・・」

離れたところから改めてトレーラーハウスを見て、みんなで思わず声をあげた。
すごい存在感なのだ。

このトレーラーハウスを中心に、サルシカの秘密基地づくりは始まる。
ここがサルシカ隊の拠点となるのだ。

電気工事、水道の問題、そして今後の拡張工事。
秘密基地計画はこれからスタートなのである。

〈協力〉
勝田歯科医院
・エコーリフォーム
・野澤商店
ミヤコ産業株式会社
・吉川自動車
office369番地 松原 豊
稲垣商店
マルゼン有限会社