写真/松原豊 文/奥田裕久
さて、今回はノーマルな銭湯企画なのである。
前回は「銭湯落語」というスペシャルな企画であったし、その前は宿泊つきというスペシャルであった。
そろそろ銭湯の近所をふらふらめぐって、湯に入り、そしてふらりと飲んで終わる、銭湯企画の基本に立ち戻ろうではないか、ということになった。
で、選ばれたのが四日市。
サルシカ銭湯企画はじめての場所である。
最近は毎回そうなのであるが、銭湯企画のリーダーであるケロリンが事前に該当銭湯に事前リサーチ入浴。
そして写真師マツバラを連れて事前取材(風呂に入って酒を呑むだけらしいが。笑)をしてくれている。
だから銭湯の当日取材はしっかりできる。
しかしながらそれ以外は、例によって行き当たりばったり(笑)。
完全ノーアポ突撃、いや思いつき取材なのだ!
今回の待ち合わせ場所はJR四日市駅。
三重県以外の人のために書いておくと、たぶん四日市は三重県イチの都会である(笑)。
県庁所在地は津市であるが、四日市は名古屋に近いせいか華やかで賑やかなのだ。
が、それは近鉄四日市の方の話。
JR側は驚くほど静か。
しかも駅前に何もない。
隊長のワタクシは津市からJR(途中まで第三セクターの伊勢鉄道)に乗ってやってきたのであるが、四日市駅で降りてビックリ。
貨物線が果てしなく広がり、駅舎がはるか遠くに見える。
すっかり寝過ごして、タイヘンなところまで来てしまったのだと思った。
駅構内をえんえんと歩いて改札を出ると、ケロリンとスズキックスがすでに到着していた。
今回の参加者は4名。
あとは写真師マツバラを待つばかりである。
すると、改札とは反対の方から「おまたせぇ」と写真師の声。
どうやら仕事が終わらず、そのまま車で来てしまったという。
「それじゃあ飲めんではないか!!」とケロリン。
写真師は心の底からガックシという感じでうなだれる。
「そうなんよ~、どうしよう~、誰か代行でいっしょに帰らへん?」
帰るかい、とみんなで突っ込んだ。
運転代行で四日市から津まで帰るならホテルに泊まったほうがずっと安い。
アホなことを言ってないでさっさと出発しよう。
例によって何の計画も立てていない。
目的の銭湯の営業は3時半から。
現在2時すぎである。
そのとき、レンタサイクルという黄色い垂れ幕が目に入ったのだ。
駅構内に市営のレンタサイクルがあった。
おおおおおお、自転車で四日市をめぐって銭湯に入る・・・いいではないか!
「あ、隊長も思いました? 実はボクもええなあ思ってそこにあったサイクリングマップをもらっておいたんです!」
と、ケロリン。
さすが銭湯リーダーである。
しかも受付のお兄ちゃんに話を聞くと、普通自転車の1日のレンタル料金は120円!
電動アシストつき自転車で240円だという!
「安いではないか!
気に入った! 今回の企画はこれで決まりだあ!」
ワタクシの決断は早かった。
「よーし、今回は奮発して全員で電動アシスト自転車だ! ゼータクしちゃうぞ~! わはははははは!」
が、ここで受付のお兄ちゃんが申し訳なさそうに言うのだ。
「すいません・・・電動のは人気であと2台しか残ってないんです・・・」
「にゃ、にゃにおう!!!」ワレワレは色めきたった。
電動アシスト自転車は赤い最新型のが1台、旧型の黒が1台。
ごく普通のコギコギ自転車はずらりと並んでいらっしゃる(笑)。
で、ワレワレがやったこと。
ジャンケンである(笑)。
人生をほぼ半分以上生きてしまったおっさんたち4名は、JR四日市構内で大声で「最初はぐー、じゃんけんぽん!」と本気の勝負。
まず写真師とワタクシが勝ち、ケロリンとスズキックスが負けた。
ここで前者が電動アシスト権獲得決定。
後者はキコキコアナログ自転車確定なのだ(笑)。
続いて最新型の赤を狙って写真師とワタクシが対決。
勝ったのはワタクシ!
隊長の力をみせつけ、赤い電動アシストをゲット!
むろん「赤い彗星」号と名付ける(笑)。
「わははははははははははははは! ソーカイソーカイ!! このまま自転車で津まで帰れる!」
「美里の山道も立ち漕ぎせず帰れる! ギャハハハハハハハハハ!」
子どものようにはしゃぎ倒して走るのは、ワタクシと写真師である。
ふたりとも電動アシスト自転車に乗るのは初めて。
あまりの軽快さに、ペダルをぐいぐい漕ぐ。
こんなにアシストしてくるとは思わなかった。
たぶんノーマル車に乗っているケロリンやスズキックスの半分の力で前に進む。
「ちょっとちょっと、もっとゆっくり走ってくださいよ~」とスズキックス。
「情けないヤツだなあ、ゴーゴー、スズキックス!」と写真師。
「なんちゅうヤツらや。逆やったら文句タラタラのくせに」とケロリン。
「うるさいぞ、ケロリン! さあオレについてこい!!」
こうしてワレワレはJR四日市駅から海の方へと向かって疾走したのである。
倉庫街を走り抜けて到着したのは、末広橋梁。
千歳運河にかかる現役の跳開式可動鉄道橋梁で、昭和6年に竣工。
全長58メートルのうち中央部の16メートルの橋桁が跳ね上がる。
平成10年に国の重要文化財に指定された。
「おおおおおおおおお、なんだなんだあ! 列車がくるのかあ!」
写真師がコーフンして自転車を降り、運河の方へと走っていく。
何度かこの末広橋梁の撮影にきている写真師に話を聞くと、通常橋桁は跳ね上げられた状態で、貨物が通るときだけ橋桁を下ろすのだという。
いまは夕方の1回ぐらいしか橋桁は下りないはずなのに、いまなぜか下りている。
それで大騒ぎしていたのだ。
上の写真をよーく見ていただくとわかるのだが、黄色いヘルメットをかぶった人たちがたくさんいる。
実は橋梁の点検中であったのだ。
点検を終えると、橋桁がゆっくりと上がりだす。
なんの計画性もなく、たまたまこの瞬間をとらえることができるとは!
これがワレワレ、サルシカ銭湯部なのである!(笑)
「いやー、たまたまやけど、ええもん見たあ・・・」
と、大満足のワタクシたち。
風に潮の香りがする。
ワレワレは次の目的に向かって自転車を走らせた。
風が強い。
逆風にケロリンとスズキックスはヒイヒイ言っている。
が、電動アシストのワタクシと写真師はへっちゃらだ(笑)。
海に出る。
そこでワレワレが両手を突き上げ「コンビナート!」とやっている(笑)。
こういうことをやらせるのは、もちろん写真師だ。
「ボードウォークと壁画」
港の堤防に壁画があり、遊歩道みたいになっていると聞いてやってきたが、壁画も歩道も100メートルほど。
自転車で走るまでもない。
この壁画は地元の高校生によって描かれ、平成8年に完成。
壁画はすばらしいのだが、壁画の横を自転車で突っ走ろうと勝手に想定していたワレワレは、
「なぜこんなに短いのだ、まったくもう!」
と文句をたれまくって次へ向かう(笑)。
ノーマルキコキコ自転車に乗るケロリンとスズキックスが、
「ちょ、ちょっと休ませてください~」
「つ、冷たいものを~」
と、うるさいので、ワタクシと写真師はまったく平気であったが、店に立ち寄りひと休みすることに。
なかなかええ感じの店でアイスクリームの冷蔵庫があったので中に入ったが、その冷蔵庫の中に入っていたのはなぜかコロッケやエビフライなどの冷凍食品(笑)。
「冷たいエビフライ食うか?」
と聞くと、
ケロリンとスズキックスは涙ながらに「いらんいらん」と首を振るのでそのまま走ることに(笑)。
運河沿いの気持ち道を見つけ走る。
ワタクシと写真師は鼻歌を唄いながら。
ケロリンとスズキックスは寡黙に。
が、そんなワタクシと写真師にバチが当たった。
気持ちいい運河沿いの道は途中で階段になって終わった。
で、持ち上げて運んだのだが、電動アシスト自転車はバッテリとモーターがある分重い。
ヒイヒイ、ハアハアいいながら運ぶ。
すでに汗ダラダラのケロリンとスズキックスの満面の笑みが憎い。
潮吹防波堤を望みながら。
潮吹き?
ここでいやらしく笑った者はヘンタイなのだ(笑)。
こちらは、旧港が暴風雨によって大破したため、明治26年に服部長七という人によって築かれたもの。
波の力を弱めるために堤防の腹部に穴をあけて波の力を分散させているそうだ。
こちらも平成8年に国の重要文化財に指定されている。
潮風に吹かれながら自転車を漕ぐ。
気持ちいいもんだ。
が、そろそろ銭湯の営業がはじまったようだ。
さあ、一旦駅に戻ろうか!
が、駅へ戻ると、足パンパン、喉カラカラ、汗ダラダラ、息ハアハアのケロリンとスズキックス。
その後ろで高笑いの隊長。
さてさて、銭湯に疲れと汗を流しにいこうではないか!
次回、銭湯に入ります!!