「隊長のところに大きな発泡スチロールがあったでしょう! ただちに持ってきてください! 一刻も早く!」
電話に出るなり、聞こえてきたのは大工のT橋の声である。
逼迫・・・というよりコーフンしている。
しかも、彼は我が家のガレージに置かれている巨大な発泡スチロールの塊の存在をめざとくチェックしているのである。
それを「よこせ!」と言っているのだ。
ちなみにその発泡スチロールは、昨年、紀北町で開催されたイカダレースに出場した際の残りである。
次回に備えてキープしてあるのである(笑)。
「発泡スチロールならあるけど、何に使うのだ?」とワタクシ。
「今ね、模型を作ってるんですよ、トレーラーハウスとか発泡スチロールでつくろうと思って」とT橋。
「模型?」
「そうですよ、秘密基地の模型!」
「いますぐ行く!!」
てなワケで、ワタクシは軽トラに発泡スチロールを積み込み、ただちに大工のT橋の工房に向かうのであった。
秘密基地の模型・・・なんとワクワクする言葉の並びか。
この10月の27日(土)と28日(日)。
サルシカ秘密基地の最終建造計画が実行される。
ワレワレ、サルシカ隊の拠点となる基地がついに完成するのだ。
その模型をつくる・・・なんてことだ。
すぐいく!
すぐみたい!
なんなら自分もつくるの手伝いたいのだ!!
ワタクシの家から大工のT橋の工房「木神楽」まで車で5分。
工房に入ると、すでに制作作業に取り組んでいた。
「やっぱりね、パソコンの画面の図面だけじゃイメージがわかないんですよ。だから模型でつくってみんなに説明しようと思って」
いつもは寡黙なT橋であるが、きょうは饒舌である。
明らかにコーフンしている。
「して、どこまでできているのだ?」
そのワタクシの問いに、T橋は明らかに「どや顔」をした。
「これです!!」
「・・・・・・・・・・。」
ワタクシは5秒ほど沈黙した。
「なんなのだ、この板切れは?」
「何言ってるんですか、隊長とこの敷地ですよ! 秘密基地をつくるとこじゃないですか!!」
なんとT橋は土地から作っていたのだ。
現地で測量したデータをコンピュータに打ち込み、きっちりと20分の1に縮小してあるという。
すばらしいではないか。
そして、ワタクシが持ってきた発砲スチロールをカッターでキコキコ切り、ボンドでパーツをつけ、出来上がったのが、次のトレーラーハウスである。
ちなみに窓などを描き、着色したのは隊長のワタクシである。
「・・・・・・・・・・」
今度はT橋もワタクシといっしょに5秒ほど沈黙した。
「あまり緻密とはいえんな」とワタクシ。
「いや採寸はちゃんとなってますよ」とT橋。
「じゃあ、まるでオレの絵がひどいと言ってるみたいじゃないか!」
「そうは言ってませんけど・・・」
「けどなんだ!!!」
まあ、いつものと同じ状況になっていくわけである。
その一方で、黙々と別の模型をつくっている男がいるのだ。
大工のK氏。
T橋の仲間だという。
全体のイメージがつかめるように、実際にはすでに完成しているガレージをつくっている。
それがこれだ!!
なんかニヒルに笑っているようなガレージである(笑)。
大工のK氏は聞いてもいないのに、まるで言い訳のように絵の説明をはじめる。
「真ん中にあるのは取っ手ですよ。これは空いている状態なんです」
「なぜ目があるのだ?」
「目じゃありませんよ、シーカヤックです、吊るしてあるやつ!」
が、もう何を言ってもダメなのだ。
これはニヒルなガレージでしかないのだ(笑)。
ひとまず今日は現状の様子まで模型を制作した。
模型と実際の様子を比較してご覧いただこう。
模型のひとつひとつのクオリティはともかく(笑)、
寸尺はすばらしく合っているのである。
ワタクシは大いに感動していたが、それは大工には当たり前のことで、問題はやはりガレージとトレーラーハウスの出来栄えにあるらしい(笑)。
まあ確かに、どう見てもこれは「おおおおおおおお!」と感動するものではなく、「ひひひひひひひ!」と涙を受けべて笑うべき方向の産物である。
「何かが足りない・・・」
大工のT橋はボソリとつぶやくのだ。
そして、しばらくして、模型のガレージの前に、まるで「チェックメイト」とでも言うようにあるものを置いたのだ。
このヒゲにバッグ。
ワタクシであろうなあ・・・やっぱり。
大工のT橋。
頼むから、遊んでいないで、本当の秘密基地の模型をつくってくれ。
10月27日(土)28日(日)に開催される秘密基地建造最終プロジェクトの参加者を募集しています。
隊員以外の方もOK!
詳細はこちらをごらんください!!
http://www.salsica.com/?p=10617