銭湯いこにVol.24「銭湯の壁を塗れ!(伊賀池澤湯)」前篇

投稿日: 2012年10月31日(水)09:10

photo:写真師マツバラ(松原豊) txt:サルシカ隊長(奥田裕久)

隊長である。

最近、「サルシカの銭湯企画はあまりに本筋から脱線しすぎなのではないか!!」というご指摘をよくいただく。
確かに直近の回を読み返すと、銭湯で落語をやっちゃったり、銭湯に入ったはいいが、そのあとはどんどんお酒を呑んで、はしご酒企画みたいになっちゃったりして、実際お風呂に入ってる写真は1枚か2枚というヒドイ回もあったりして、さすがに「おおおお、これではいかぬ」とサルより深くコウベをたれて反省したのである。

が・・・・。
すまぬ。
今回も脱線するのだ。
しかも、大幅に。
でもね、今回で終わりにするから。
銭湯企画のリーダーのケロリンや写真師とも相談して、「今度から基本に戻ろうね! ね! ね!」と確認し合ったから。
今回で最後だから!!
ぜひともお許し願いたいのだ!!(笑)

というわけでやってきたのは、三重県伊賀市。
忍者の里にある池澤湯なのである。

今回もワタクシが出演している三重テレビ放送の「とってもワクドキ!」という番組のロケつき。
つまり、サルシカ得意のダブル取材なのである。

で、この池澤湯であるが、
最初に訪れたのは、今年3月の銭湯落語のときであった。
すぐ近くの一乃湯さんの脱衣場で林家染家さんが落語をする前にお邪魔してひとっ風呂いただいたのだ。
この時もテレビと同時取材であった。

※前回の池澤湯のレポートはこちら!

サルシカでの紹介はそれっきりであったが、
テレビ番組の方では何度か取材が続いていたのであった。

池澤湯「銭湯の息子さん」

実はこの池澤湯は、三重県で唯一ペンキで描かれた富士山のある銭湯なのである。
その貴重なペンキ画を描きなおすというので、その後もワタクシはテレビのレポーターとして取材し、風呂に入り、プヒーなんぞとやっていわけである。
もうすっかり池澤湯の息子さん(まだ跡をついでいない、あくまで息子!)ともすっかり仲良くなり、奥さんと共にサルシカ隊にも入隊してもらう関係になっていたのである。

で、今回のテレビの方の企画は、コーナーのメインレポーターの林家染弥さんがワタクシといっしょに池澤湯を訪問。
完成した新たな富士山を見に行く、というものであった。

ご覧あれ。
これが新しい三重県唯一の富士山のペンキ画である。

富士山が中央に移り、女性風呂からも拝めるようになった。
そして白糸の滝が新たに描き加えられたのである。

染弥さんとワタクシはその富士山に驚いた。
以前とまるで雰囲気が変わっていた。
新しい世代へのバトンタッチ。
それが池澤湯の父から息子へのメッセージだったに違いない。

この画が完成する直前、現ご主人のお父さんは、富士山の横に3羽のカモメを描き加えさせた。
なぜカモメなのか、なぜ3羽なのかはまったくわからない。
しかし自分が思ったことを意見し、実行する・・・そのこだわりを息子に伝えたかったのではあるまいか。

が、もちろんこの富士山を拝みに来ただけではない。
ここからが本題なのだ。

「いよいよ私も親父のあとを継ごうと思いましてね・・・それで浴室の富士山も心機一転新しくしたんですが、もうひとつ私の決意を固めるためにやりたいことがあるんですよ・・・」

前回のテレビロケのあと、池澤湯の息子はこんなことを言い出したのだ。

本来、風呂屋というのは人が集まる場所である。
地域にとっては小さなコミュニティセンターである。
ついては外観もみんなに親しんでもらえるものに変えたい。
が、ぜんぜん予算がないので、番組およびサルシカでなんとかしてくれないか。
例えば、みんなで心があったまるような楽しい画を外壁に描いてもらえんだろうか・・・・と。

この話を聞いた時、さすがにいつもの調子で「よーし、わかった!」とは言えなかった。
なんたってワタクシにはまったくと言っていいほど絵心がない。
他の銭湯企画のメンバーも同じだった。
そんなワレワレが、看板でもある風呂屋の外壁に画を描いていいわけがない。

が、池澤湯の息子は、「なんとかお願いします!」と頭を下げるのだ。
で、番組とサルシカで絵心がある参加者を募集し、みんなで描くことで着地したのであった。

今回、唯一の救いは、プロのイラストレーターであるシャンティーさん(写真上)に来てもらえたことである。
志摩在住の彼女に伊賀まで来てもらった。
ありがたいのだ。

そのシャンティーさんを筆頭に、
サルシカ隊銭湯企画部のケロリン桶太郎、ボーノー隊員、スズキックス、写真師マツバラ、
研修生として片山さんと黒石くん、
たまたまこの撮影の様子を取材にきた某編集会社のTさん、
視聴者からの参加として、ケンちゃんラーメンさん、ふるぴこ、さん。
そして番組レポーターとして落語家の林家染弥さんと隊長のワタクシ、計12人が銭湯壁画に挑むことになったのだ!

まず壁にどんな画を描くか、脱衣場で企画会議。
画用紙にいろいろ画を描きながら検討するが、そのサンプルとなる画があまりに下手すぎて笑えて会議にならない。
そもそもプロのイラストレーターのシャンティーさんすら、初のテレビ出演で緊張して画がぼろぼろ(笑)。

そして染弥さんの画にいたっては、破壊性のある前衛芸術作品で、ボーノーさん笑い死に。
染弥さん本人も泣きながら笑っていた。
いやー、テレビのロケであんなに笑ったのは初めてだなあ。
本人たちは面白かったけど、まったく視聴者には伝わらんだろうから、すべてカットだろうなあ。
個人的に永久保存版でほしい(笑)。

ま、こんな風に笑ってばかりであったが、なんとか方向性はまとまった。

実際に外に出て、改めて壁を見てみる。
うーん、本当にここにワレワレが画を描くのか。

いつまでもグジグジしてても仕方ないので、さあ準備だ。
ケロリンはペンキを入れるための空き缶をたくさん用意してきてくれていた。
それに針金のトッテをつけて、持ち運びしやすいようにする。
さすが銭湯企画のリーダーである。

壁を見ながらイメージを画用紙に描いていたシャンティーさんも、下絵が完成した。
それがコレだ!!

富士山とかわいい野菜たち。
は? 野菜?
そう思われた方も多いであろう。
が、これにはちゃんと意味があるのだ。
以前のレポートでも触れたが、実は池澤湯では野菜の販売をしているのだ。
近所の畑からその時期の野菜を仕入れ、番台のそばに並べている。
それは、近所に八百屋がスーパーがなくて困っているお年寄りのために、お風呂に来たついでに買い物もしてもらおうという、息子さんがはじめたサービス。
もちろん採算度外視。
売れ残った分は自分たちで消費するため、毎日野菜づくし。
健康になってたまらない、と笑う。

ね、ええ話でしょ。
だから、あえて銭湯の壁に野菜を描いちゃおうではないか、ということになったのだ!!

シャンティーさんは壁に鉛筆で下絵を描きはじめた。
残りのメンバーは買ってきたペンキを調合して必要な色をつくる。

が、赤と黄色をまぜて紫をつくろうとしたらうまくいかず、それに青をまぜて泥沼と化し、さらに黒をまぜて取り返しがつかない状態・・・なんてことになって多くのペンキを無駄に(笑)。
ワレワレは色さえつくることができないバカなのだ。

こんなことで果たして!
池澤湯の外観を画で飾ることができるのか!?

本日18時から放送の「とってもワクドキ!」と共に後半も連続公開!!
放送と共にお楽しみに!!!