「秘密基地建造ファイナル①~午前8時のスタートダッシュ」第164回サルシカ隊がいく

投稿日: 2012年11月14日(水)09:27

写真/フォトグラファー加納(加納準) 写真師マツバラ(松原豊) ウッディ中谷(中谷兼敏)

文/サルシカ隊長(奥田裕久)

この日の朝、5時に目が覚めた。
窓の外はまだ薄暗かったが、鳥の声が聞こえ、日が昇る気配が感じられた。
きょう、あすと長い戦いが続くのだから、もう少し寝ておきたいと思ったが無理だった。
目覚めると同時にワタクシは明らかにコーフンしていた。
ベッドを静かに抜けだし、すばやく着替えて外に出た。
薄闇の中に、トレーラーハウスと、それを取り囲むように地面に突き立てられた十数本の柱が、まるで古代遺跡のようにそこに存在していた。
きょう、ここにサルシカの秘密基地をつくるのだ。

2012年10月27日、土曜日、午前7時30分。
まず大工のT橋が現場にやってきた。

これまでの秘密基地の記事を読んでいる人はもう十分に知っているであろう、この秘密基地計画のリーダーであり、古き良き日本の伝統建築を愛する大工である。
サルシカに深くかかわるまでは、寡黙で不器用そうに笑いつつも仕事一筋という感じ男であったが、ここ最近はすっかりイメージを変え、いつもヘラヘラと笑ってカホンばかりをつくり、そのくせスキさえあらばハモニカを吹き鳴らしてまた笑う・・・という、根本的にイケナイ人間になりつつあるようなのだ。
そんな彼がいつになくまじめな顔をして、柱と梁を見上げている。

「いよいよですね・・・へへへっ」

やはり今日も笑った。

サルシカ秘密基地を支える柱と梁は古い木製の電柱を使っている。
廃品利用ということもあったが、まず何よりお金がなかった。
それを掘っ建て・・・つまり地面に穴をあけて突き立てて柱にしている。
さすがにこれは人力というわけにはいかず、建柱車というドリルがついたクレーンみたいなのを頼み、事前に工事をしてもらった。

これは「大勢の人が集まる秘密基地イベントのときに重機を使うのは危ない」というT橋の判断である。
最近の彼は無口に笑ってばかりいるが、心優しき男なのである。

本日の「サルシカ秘密基地最終建造計画」イベントは、27日(土)と28日(日)の2日間で、これまで数カ月にわたってジワジワとつくり続けていた秘密基地をもう一気に仕上げちゃおうぜ、というものであった。
具体的には・・・

1.雨漏りだらけのトレーラーハウスの上に屋根をかける。
2.トレーラーハウスの前にイベント用の超大型ウッドデッキと屋根をつくる。
3.サルシカの事務所(小屋)をつくる。
4.枕木を敷き詰めて焚き火ができるイベントスペースをつくる。
5.敵(鹿)の侵入を防ぐために柵で基地を囲む。
6.鬼太郎ハウス(ミニツリーハウス)をつくる。

という、とんでもなく大掛かりなものであった。
で、サルシカ隊員を中心に参加者を大募集し、結果両日を通して60名をこえる人からの参加表明をもらっていたのであった。

ちなみに上の写真の右側は、鬼太郎ハウスをつくる用の木柱(7.5メートル)。
近所の人たちが「無線でもはじめるんか?」とか「風力発電から直接電気を引くんか」と騒ぎになった(笑)。

イベントの開始は午前10時。
が、それに向けての準備もあるので、午前8時にはサルシカ隊の主要メンバーがぞくぞくと集まってきていた。
まずはキヨちゃん隊長代行、フォトグラファー加納、銭湯企画のケロリン、写真師マツバラ、やまぴー。
そして電気工事の西川さん、まさやん隊員、もりやん隊員、サルシカファームのあさお社長、のだっち隊員、よしひろ隊員、ムネちゃん隊員、やっさん、大工T橋の仲間の大工M田の姿も。

簡単なあいさつのあと、準備の役割分担を決め、それぞれの場所へと散った。

キヨちゃん隊長代行とムネちゃん隊員は看板の設置に。
これは2週間前に参加した「みえ森林フェスタ」用につくったものの使い回し(笑)。
国道から集落へ入るところ、駐車場への入口に設置する。

「歩いていくの~?」と文句を言ってるのはムネちゃん隊員。
キヨちゃん隊員は「トラックが通ったら倒れるで針金で固定せな・・・」

トンカン、トンカン。
ギュイイイイイイイイイン!

静かな山間の集落に金槌とドリルの音が響き渡る。
大工プロチームと、DIYセミプロチームが、モーレツなスタートダッシュで作業をはじめる。

実は梁は柱の上に載せられているだけで固定されていなかった。
それをバカ長ボルトでガッチリと固定していく。
この作業は専用の機械を使うので、10時まえにやっておこうという作戦だ。

続いて手の空いた者でトイレの設置。
なんたって2日間で60人がくるのである。
さすがにみんなで立ちションというわけにはいかない。

そこで工場の建て替えをしているキヨちゃんから仮設トイレをもらっていた。
みんなでガレージ裏にうんしょうんしょと運んで設置。
さっそくムネちゃんがウンチングスタイルを決める。
とても40歳を超えたオッサンがやることとは思えない(笑)。

今回のイベントの駐車場は、サルシカ隊のタカシ隊員の家に提供してもらった。
なんと1000坪ほどの空き地が秘密基地の下に広がっていて、それがタカシ隊員の家の土地だったのだ。
前日、キヨちゃんが草刈りをして30台以上の車が駐められるようにしてあった。

誘導係りをしているのはやまぴー隊員。
午前9時を回ると、参加者の車がぞくぞくとやってくる。
すぐさま「誘導が間に合わん~」という悲鳴がやまぴーからあがり、応援を送る。

そして上の写真の右下。
開始時間を待たず、スーパーカブで離脱する写真師マツバラ。
きょうは近くの中学校の文化祭でその撮影に向かう。
「すぐ帰ってくるから!」という写真師に、

「こんでええ!!」
「もう今晩の宴会の参加権はなしじゃ!」

情け容赦ない見送りの言葉が連射される(笑)。

午前9時30分。
紀北町から一色さん&元町さん夫妻が到着。
ふたりとも現役の漫画家でありながら、なぜか東京から三重に移住し、さらになぜかこの夏、「道瀬珈琲」という屋台カフェ・レストランを開店。
これまでペンしか握ってなかったはずなのになぜかそのかき氷、カレーなどなど、あらゆるメニューが絶品級のうまさで、サルシカ隊の面々にファンが多く、今回のイベントの昼食、そしてドリンク関係をすべてお願いしたのだ!!

到着するなりさっそく開店準備。
いきなりの移動販売車の登場に、参加者たちがにわかにざわめく。

上から下から。
右から左から。
車がどんどんやってくる。

「これ差し入れ~」

ビールやら日本酒やらワインやらが、どんどん山積みになっていく。
人もどんどん増える。

ワーワーギャーギャー、すごいことになってきた。
そして・・・
いよいよ午前10時になった。

この日のために購入した拡声器で、大工のT橋があいさつする。

「きょうはみなさんわざわざ集まってくれてどうもありがとう・・・とにかくケガのないように楽しんでやりましょう・・・まあ、それだけです・・・へへへっ」

なんともまあしまりのないあいさつなのである。

続いて元サルシカのボスで今は市議会議員とかいうものになってしまったKちゃんがごあいさつ。
そして集落の自治会長さんもごあいさつ。
いつもは「やるぞお!」「おう!」ぐらいしかしないサルシカにしては、珍しいほどしっかりした開会式である(笑)。

隊長のワタクシはすぐさま班編成にとりかかる。
どれだけ人数がたくさんいても、用意できる道具には限りがあるし、作業可能な人数は限られている。
できるだけ作業を分配して進めていかねばならない。
事前にしっかりと大工のT橋と作業プランを練ってあった。

しかし・・・。
明日はほぼ100%の確率で雨であった。
それを考えると、何より先に屋根を完成させるのがいいのではないか。
屋根さえ出来ていれば明日も作業ができる・・・!!

そこで急きょ、屋根チームを強化しての変則的班編成が組まれた。
当初は一部のプロチームとDIYセミプロチームだけで屋根をつくる予定が、身軽な人、デブじゃないヤツはどんどん屋根に送り込まれた。

「じゃあ、お願いします!!!」

みんな一斉に動きはじめた。
影のボスKちゃんは、足場の邪魔になる木や石を運んだ。
屋根にどんどん人が登り、下のものは木材を運んだりしてサポートした。

スタート直後の参加者は約30名。
作業開始と同時に人はどんどん増えはじめ、すぐさま40名ほどの人間が動いていた。

写真左/サルシカファーム浅尾社長。
写真右/愛知県から参加、三重県ラブの中谷さん。

写真左/サルシカ8時間耐久ママチャリレースのディレクターみずえD
写真右/最近ダイエットを成功させたムネちゃん。写真じゃわからないけど(笑)

おいおい忍者がいるぞ!!
サルシカ隊が壁画を描いた伊賀の銭湯「池澤湯」の池澤さん(風呂屋の息子)。

身軽なやっさん、のだっちは屋根の上へ!

現場のリーダーは大工のT橋(写真右)。
彼の指示で作業が次々に進められていく。
彼がこの作業に「3人欲しい!」とか「こっちを手伝って!」というオーダーを受けるのは、隊長のワタクシ(写真左)。

いわば現場のディレクターが大工のT橋で、それを受けて人の配置や全体に目を配るプロデューサー的なことをするのが隊長のワタクシ(写真左)という塩梅であった。

実はツリーハウス計画のとき、この指示命令系統をちゃんと作っておかなかったせいで、あちこちで混乱が生じて大変だったのだ。
で、今回は事前にしっかりと体制を作っておいた。
チームは作業に合わせてどんどん編成が変わるが、必ずそこにはリーダーを置いた。

T橋→隊長→リーダー→メンバー

この流れで作業は続けられた。
おおおお、まるでビジネス書みたいな話になってきたぞ。

が、それだけですべてがうまくいかないのが世の常なのだ(笑)。
あとは気合で勝負!
なにごとも気合だあ!(笑)

というわけで、
サルシカ秘密基地の最終建造プロジェクトは幕をあけた。
果たして2日間でつくり上げることができるのか。
長い戦いの一部始終をどうかお見届けくだされい!!!!