「秘密基地建造ファイナル⑤~雨の2日目」第168回サルシカ隊がいく

投稿日: 2012年11月18日(日)08:16

写真/フォトグラファー加納(加納準) 写真師マツバラ(松原豊) ウッディ中谷(中谷兼敏)

文/サルシカ隊長(奥田裕久)

2日目はやはり雨だった。
朝6時に目が覚めた時には、窓の外はそこそこ明るく、雨音が聞こえなかったので、もしかしたら、と思った。
しかし霧のような雨が静かに落ちていた。

山間の集落の朝は静かである。
神秘的ですらある。
上の写真は朝早く起きた写真師マツバラが集落を歩いて撮影したもの。
遠くで聞こえる水の流れと、雨のシトシトという音と、ときおり鳥の声・・・それらが聞こえてくるようだ。

そんな時、仮設ウッドデッキでむっくり起きた男がいた。
ウッディ中谷である。
10月の終わり、屋根があるとはいえ、基本的に屋外のデッキのうえで彼は一夜を明かしたのである。

「あー、気持よかったあ。ここで寝るのは最高だねぇ。わははははは」

相当の強者である(笑)。
しかも寝袋だけじゃなく布団まで敷いている。
わざわざ持ってきたのだという。
その布団を丁寧にたたみ、大きな風呂敷に包みながら、

「夏ならここで寝たらエアコンいらずだ。そうだそうだ、蚊帳を買おう」

などと言っている。
そして「ちょっと朝の散歩に行ってこようかなあ」と小雨の中を歩いていった。
これぞ自由人である。
心の底からうらやましい。

一方、道瀬珈琲の移動販売車のあたりは朝から大賑わいであった。
一色&元町夫妻は、ここからはあくまでプライベートとして、みんなの朝食を用意してくれていたのである。

「わー、メシだメシだあ!」
「コーヒーだあ!」
「うお、うまい!!」

そんな声につられて、みんな寝袋から這い出てくる。

サルシカ秘密基地のモーニングはバイキング形式で。
ストーブであぶったパンにサラダやトマト、たまごやスパムを自由にはさんでどうぞ、というスタイル。

「うんめえ、うんめえ」

隊長のワタクシは2個食べた。
ちなみに妻のM子は3個食べたという(笑)。

が、朝食をいただいている間にも、どんどん雨は激しくなってきた。
もうすでに大雨に近い状態である。

雨の中、ストーブの煙突から煙がのぼり、食事を求めて立ち並ぶ人の姿は、もはや難民キャンプの様相である(笑)。
この雨の中、これから作業に入るのかと思うと、やはり気が重くなる。
そしてメシを食べ終えると、きょう用事のある隊員たちが帰りはじめる。
それを見送る隊員たちの目は、一様に暗く沈んでいた。
もはやここは強制労働収容所なのだ(涙)。

この日もスタート時間は午前10時であった。
が、雨が止む気配はまったくないし、昨日からの作業は遅れているので、午前8時には今いる隊員だけで作業開始することにした。
気力を振り絞り、カラ元気全開で「よーしゃ、はじめますかあ!」とワタクシが声をあげたところで、まるでその瞬間を見計らったかのようにドバババババと雨が落ちてくる。
容赦ない土砂降りであった。

ワタクシたちは言葉を失い、臨時のウッドデッキに腰を下ろした。
もう今日はやめちゃおうかな、と思った。
お酒はいっぱいあるし、雨をしのぐ屋根はあるから、もう飲んじゃおうかな、とも思った(笑)。

が、そんな時、ヤツが現れたのである。
サルシカがツリーハウスを作ったとき、遠く山形県から車に乗ってやってきた男。
人一倍働き、人一倍飲み、そして気持よく帰っていった男。

でこさん!!(写真右の右の男)
彼がまた・・・今度は秘密基地のために、わざわざ山形から三重までやってきてくれたのだ。
まさに男のなかの男!
ワタクシが女であったなら、たぶん惚れたであろう男である!(笑)

「ナーニやってんのぉ、早くつくろうよ~、こんな雨へっちゃらだ~」

でこさんは東北なまりでみんなに言うと、カッパも身につけずに動き出した。
彼は今から3年前のツリーハウス制作ではじめて三重を訪れてから、すでに4回ほどこの地に来ている。
また、でこさんの左のまさやんや隊長のワタクシは、逆に山形を訪ね、彼の家に泊めてもらったりもしている。
800キロの距離なんぞ関係なし!
これぞサルシカの友情なのだ!

でこさんの登場でムードが一変した。

「よーし、やりますかあ!」

大工のT橋がついに笑わずに叫んだ。
そして、みんなが一斉に動き出した。

まずはきのう作った仮設ウッドデッキの撤収。
みんなで動くが、労働者は10人ほどしかいない。
きのうのようにハイスピードでは片付かない。
その分、ひとりひとりが動く。
きのうは基本的に作業に入らなかったワタクシも動く。

仮設ウッドデッキを片づけ、本チャンのウッドデッキ制作に入る。

写真左、「あーそこのデカイ人(加納さん)邪魔、邪魔」とT橋。
写真右下、デカイ人もカッパを来て撮影。

ピンコロ(四角いコンクリ。基礎になる)を置いて水平をとって。
74個もあるので大変。

9時を回って応援部隊が次々にやってきてくれる。
この雨の中、本当にありがたい。

左上/スズキックスがいつもの研修生2名を連れて登場!
右上/雨はますます激しく!
左下/やまきの大将はお母ちゃん、えっちゃん、小出監督といっしょに!
右下/ごんちゃんは単身で!

他にも昨日に続いてウッディ山本や、新隊員の太田さん、大橋さんとぞくぞくと!
午後から稲ちゃんなども参加し、気づけばほぼ昨日と同じぐらいの数の人に!

土砂降りの中、ウッドデッキの床材を運ぶ。
これは、きのう写真師マツバラ率いる「ぬりぬり隊」が防腐剤を塗ってくれたもの。
雨が目に入る。
手が滑る。
そして泥に足を取られる!
まさに苦行だ!

雨は一段と激しくなった。
秘密基地の前は、ご覧のような泥の池に。

が、ひるんでなどいられない。
昼までにウッドデッキを完成させなければ、お昼ごはんを食べるところがないのだ。
雨の中で突っ立って食べなくてはならなくなる。

「昼めしまでにデッキを仕上げるぞぉ!!!」
「しゃあああああ!」

気合が入ってきたのだ。
さあ、ウッドデッキを一気につくるのだ。

〈次回へつづく〉