南伊勢神前浦 歴史の謎と神秘の力を追え!③

投稿日: 2012年11月16日(金)14:25

提供:ゲンキ3ネット

   

第39回『サルシカ隊長レポート』2012年10月

サルシカ隊長オクダ、今回は南伊勢町神前浦へ!
絡み合う歴史の謎、神秘の力を追う!!

 
    


写真師と隊長のワタクシは史跡「倭姫命の腰掛岩」へと舞い戻った!
今から1時間ほど前、ワレワレはここを訪ね、写真を撮り、あたりを探索した。
しかし倭姫命が腰かけたとおぼしき岩は見つからなかったのだ。
これには何か秘密がある。
巧妙なトリックが仕掛けられている!

この石碑はあくまで案内板である。
しかしいろんなブログを見てみると、この下の台を腰掛岩だと思って写真を撮って掲載している人が結構いる。
そしてワレワレのように、「もう岩はないのだ」と決めつけて帰ってしまっている人もいた。
が、これこそが罠だ。

実は「倭姫命の腰掛岩」は、一番奥のこの石碑の裏にある。
それがこれだ!!

確かに椅子のようだと言えなくもない。
先っぽの丸まり方からいって決して座りやすそうとも言えない(笑)。
が、これが腰掛岩だ。
なぜ石碑の裏に、まるで隠すように置かれているのか・・・。

「おおおおおおおおおおおお!!」

その時、ワタクシはある符号に気づいたのだ。

巨大石は本殿の裏に・・・。
そして腰掛岩は石碑の裏に・・・。

ともに隠されているのだ!!

「写真師ワトソン君、西方寺へ向かってくれたまえ!」
「いったい何かわかったんです!?」
「神前浦の歴史の謎をひとつにつなぐものだよ!」
「それは・・・!?」
「私の推理が正しければ、次の西方寺で裏付けられる!」
「ワトソン君、急いでくれ!]
「もう着いてます!!」

そうであった。
仙宮神社も、倭姫命の腰掛岩も、そして西方寺も、歩いていける範囲に存在するのだった(笑)。

西方寺に到着した。
正式には「金網山 西方寺(こんもうざん さいほうじ)」。
しかし地元では、奈津観音堂として親しまれている。
 
国道260号をはさんで正面に海が広がる。
昔、この前の浜に小さな黄金の仏像を頭に戴いたクジラが迷い込んできた。
地元の漁師が網を入れてすくい上げると、海面が金色に染まり、そのクジラは巨大な岩に化してしまったそうな。
その黄金の仏像を祠を建てて祀ったのが、観音堂なのである。

いま黄金の仏像はここにはない。
聖武天皇に献進され、いまは奈良の二月堂の本尊になっているらしい。
西方寺には、黄金の仏像の代わりに頂いた聖観音像がいまも祀られている。

仙宮神社の宮司の加藤さんに事前に連絡をしてもらっていたので、住職は中に通してくれたばかりか、通常は毎月18日以外は開帳しない聖観音像を特別に拝見させていただいた。

観音像は、海を向いている。
昔、国道が出来るまでは、西方寺はほぼ海に面して建っていたという。

そしてもう今は消滅してしまったが、その前の浜では、古くからこの地に伝わる特殊神事があったという。

「三棚神事」。
それは山方の豊作と、海方の大漁を祈って行われたもので、神官と僧侶の立ち会いのもとで行われたという。
神官と僧侶。
そう、具体的には、仙宮神社の宮司と西方寺の住職である・・・!!

写真師とワタクシは仙宮神社へと戻った。

「写真師ワトソン君、もうわかったかね、スタート地点のこの仙宮神社こそゴールだったのだよ」
「えっと・・・腰掛岩とここの裏にある岩の共通項ですね」
「それもひとつ。しかもいま宮司の加藤さんに聞いてきたが、『倭姫命の腰掛岩』の管理をしているのは仙宮神社なのだよ」
「ま、まじで!?」
「平家の落人伝説に関わるのも最初に聞いた通りこの仙宮神社! そして薬師山城跡の城の主は、宮司の加藤さんにつながる加藤左衛門尉定有! しかも西方寺と仙宮神社も古き神事でつながっていた!」

写真師も明らかに興奮しているようだった。
シャッターを押す指が止まっていた。

そう。
この仙宮神社を中心に、二千年以上も前の倭姫命の伝説と、千年前の平家の伝説、そしてこの地域に残る古き伝説(黄金の仏像を頂いたクジラ)が、時の流れを超えてひとつにつながったのだ!

365段の石段の上にある仙宮神社の本殿。
その周囲には無数の玉石が敷き詰められている。

これは遥か昔から、地元の漁師さんたちが大漁と安全を祈って浜から拾い上げ、ここに奉納したものだという。
どれだけの人にどれだけの長い間、その祈りはささげられてきたのであろうか。
この仙宮神社に神秘の力があるのなら、それは偶然ではないはずだ。

ワタクシは旅の最後に海に出た。
丸い石を探して手にしてみた。

そして、
「あ、ここで石を拾ってから仙宮神社に本殿に登るべきだった」
と思った。
でもきっとまたここには来るだろう。
ワタクシはその石をポケットに入れ、帰路についた。


写真:松原豊    文:奥田裕久