「秘密基地建造ファイナル⑦~泥沼の決断!」第170回サルシカ隊がいく

投稿日: 2012年11月20日(火)13:29

写真/フォトグラファー加納(加納準) 写真師マツバラ(松原豊) ウッディ中谷(中谷兼敏)

文/サルシカ隊長(奥田裕久)

この「秘密基地建造ファイナル」も7回目。
いよいよ終盤なのだ。

27日の土曜日から最終建造に入り、ついに28日(日)の午後となった。
あと数時間でプロジェクトは完了なのだ。
ウッドデッキもメインの巨大スタジオ部分は完成したが、トレーラーハウス前の一段高くなる部分を残している。
事務所となる小屋と、ツリーハウスの鬼太郎ハウスはいまだ手付かずであった。

焦る気持ちもあるが、やれるところまでやるだけだ。
決意を新たに外へ飛び出すと、また一段と雨が激しくなる悲しさなのであった(笑)。

ここにきて新たな作業がはじまった。
ウッドデッキへとつながるアプローチ部分への枕木の敷設であった。
防腐剤のタールがたっぷりと注入された枕木はめちゃくちゃ重い。
それを2人で1本ずつ運び、大きさを合わせ並べていく。

泥沼状態の地面に枕木を置くと、がっちりと吸着してしまって手や足ではまったく動かなくなる。
それをハンマーで叩いて少しずつ動かしていく。
ただでさえ疲れる作業なのに、雨が体温を奪い、泥沼が足元をすくい、すぐさまみんな無口になった。

割烹やまきのやまちゃんがいつの間にかリーダーシップを握るウッドデッキチームは、順調に作業を進めていた。
巨大ステージ風のメインウッドデッキから一段高くなったトレーラーハウスへとつながるアプローチをちゃくちゃくとつくっていく。
ここに来て、60歳、70歳のお父さんたちの活躍は目覚しいものがあった。
普段の鍛え方が違うのであろう、疲れをまったく見せず、時にどーしようもないダジャレをぶちかましながら働いた。

一方、泥沼の枕木チームは悲惨であった。
隊員たちは疲れ果ててどんどん倒れ、放心して座り込んでいる者もいた。

「これは戦争だ・・・ここはベトナムだ・・・」

泥の中から誰かがいった。

隊長のワタクシは心を鬼にして、中津軒の中田さん、初参加の太田さんなど、午後からやってきた人たちをどんどん枕木隊へ送り込む。
倒れた次のもの、その人が倒れたら、ようやく立ち上がった者を送り込むのだ。

が、そんな隊員たちをあまりに哀れに思ったのか。
神さまが手を差し伸べた。
そう、雨がやんだのだ。

他のイベントに参加していたエロンも戻ってきた。
稲ちゃんもスマートフォンを投げ捨て、枕木へと走った。

サルシカ戦記に残るであろう、「枕木の戦い」は終わった。
しかし払った代償は大きかった。
何人もの隊員のカッパはズタボロになり、ワタクシ隊長のカッパは股から裂けた。
そしてエロンは顔から泥をかぶり、ニマリと笑って泥の海へと散ったのであった(笑)。

3時の休憩もないまま作業は続いた。
ウッドデッキはほぼ完成し、なんと計画になかった手すりまで取り付けていた。
お父さんパワー炸裂なのである。

もうすぐ4時。
あと1時間もすれば日が暮れる。
が、やり残した作業はまだまだあった。

宴会用、宿泊用として、トレーラーハウスに仮置きしてあった古畳の撤去。

トレーラーハウスの床貼り作業に入る。
とても1時間では出来ない作業だとわかっているが、お父さんたちのチームは果敢に立ち向かう。
床は杉板を貼ることになっていた。
1枚1枚サイズに合わせて切り、加工しつつ釘でとめていく。

お父さんたちの士気は高かったが、ひとつ大きな問題があった。
夕暮れが迫ってどんどんあたりは暗くなり、差し金やメジャーの数字が見えなくなってきたのだ。

「メガネメガネ!」
「ライトライト!」

老眼という苦難にもお父さんたちはひるまない。

そして隊長のワタクシはまた取材を受けていた。
地元のローカル新聞。
事前に連絡をもらっていたので、ほぼ完成しているであろうこの日時を指定したのだ。
が、現場は戦いの真っ最中。
しかも泥にまみれた隊員たちが、泥人形と化してあちこちに倒れている。
まさに修羅場であった。
銃声と流血こそなかったものの、そこは戦場そのものであった。
記者の人はその様子に唖然となり、ゆっくり話をすることもできなかった。
非常に申し訳なかったのだ。

4時半をまわった。
屋根とウッドデッキはすべて完成していた。
が、大工のT橋は休むことなく、次の作業へと入った。
事務所となる小屋づくりである。

大工のT橋は弱音を吐かず、ヘヘヘと笑わず、ひょうひょうと作業を続けた。
もうさすがに終わりだろうと思っていた隊員たちはその大工のT橋の様子をみて、思わず立ち上がり、邪魔な荷物の移動と木材の搬入をはじめる。
よーし、やるならとことんやったろうじゃないか!!
この時間になって、みんなそんなムードになっていた。

隊員たちは火を焚いて、作業を続けようとしていた。
が、時計の針は5時を回っていた。
決断のときである。

「もう片付けをして終わろう」

ワタクシはT橋にいった。
まだ完成はしていないけれど、ここまでやったのだ、互いの健闘をたたえ合い、ちゃんと乾杯をして終わろうと話した。

「そうしますか・・・」大工のT橋はしばらく考えて、「うん、そうしましょう」と言った。

こうして2日間に及ぶワレワレの戦いは終わった・・・。

結局、事務所となる小屋は、ここまでしか出来なかった。
トレーラーハウスの床は、リビングスペースを半分ぐらいまで貼ったところで終わりだった。
そしてツリーハウスの鬼太郎ハウスはまったく手付かずのまま、柱のみが空に突き立っていた。

割烹やまきの大将やまちゃんは、金槌から包丁に持ち替え、休む間もなく腕を振るっていた。
ここはやはり彼に宴会料理長をやってもらうしかないのだ。

外では、
完成した屋根とウッドデッキに明かりが入った。
焚き火を起こそう。
宴会の準備だ。

秘密基地建造ファイナル・・・2日目の宴会がはじまろうとしていた。