写真/松原豊 文/奥田裕久
午後6時過ぎからのテレビの生中継は、大きな失敗もなく無事に終了した。
「あ~、やれやれ」
「終わった終わった、さあビールでも・・・」
みんなそんな気分になって、本堂の畳の上に座ったり、寝転んだりしたが・・・・違うのだ。
これからが本番なのだ。
テレビの生中継の間、住職の姿がないなあ、と思っていたら、彼はひとり台所で、本番後の打ち上げのための鍋の仕込みをしていた。
まったくもって頭がさがるのである。
えのきをすばやく切って鍋に投入。
長ネギをすばやく切って投入。
焼き豆腐も切って投入。
こんにゃくも投入。
なんでもかんでも、どんどん切って、どんどん放り込んでいくのだ(笑)。
本堂では、全国からやってきた「おもしろ楽器演奏者」の紹介と、演奏披露がはじまっていた。
テレビの生中継が終わったのが午後6時40分。
休憩を15分ほどはさんで、午後8時の本番までつないでいくのだ。
写真左上/楽器は自分の口・・・口笛演奏家です!!
写真左下/おお、懐かしいリコーダー。京都大学の方です!
写真右/北海道からいらっしゃったミュージックソーの演奏家。のこぎりで「北の国から」のテーマ曲を演奏してくれた! なんとも不思議な音!
そして大道芸人「加藤みきお」さんによる即興パフォーマンスも!!
なんともゼータクで不思議なイベントになってきたのだ。
そんないろんな催しをやっていたので、人がどんどんやってきて、いつの間にか本堂は人で溢れていることにその時は全然気づかなかった。
本番がはじまる8時前、トイレ休憩をとったが、その時、何人かのメンバーで参加総数をカウント。
正確にはわからないが、105名から110名ぐらいの人がいた。
考えてみれば。
昨年の12月に思いつきといきおいではじまったのが、この「鼻笛第九」で、
三重県における鼻笛の初のイベントであった。
それからわずか1年の間に、サルシカ主催でモスリンさんのライブを津あけぼの座でやり、さまざまなイベントでもライブをやり、そして鼻笛のコンサートが開催された。
まだ1年なのだ。
なのに昨年の2倍のスケールになって、いまこうして人が集まってきているのだ。
三重の鼻笛シーンは熱い。
本当に熱い!
外はみぞれが降るほぼ氷点下。
が、四天王寺の本堂はみんなの熱気でムンムンしていた。
定刻の午後8時。
いよいよ「鼻笛第九2012」の本番がはじまった。
司会は昨年に引き続き、サルシカ隊、隊長のワタクシ!
このイベントの主催者「日本鼻笛協会伊勢友の会」会長のさとうエミックスがいつもの調子であいさつ。
そして、さっきまで鍋を作っていた四天王寺の倉島住職からありがたいお言葉をいただき、どんどん気分は高まっていく!!
そんな中、
昨年に引き続き、「般若心経」の読経。
今回も会場として本堂を提供してくれた四天王寺に感謝の意をこめて、みんなでお経を唱える。
昨年もそうだったが、これが妙に不思議な雰囲気を醸し出す。
はじめて来た人は、「なんだなんだ、いったいこれから何がはじまるのだ!?」と若干びびる(笑)。
そして般若心経を読み終えた頃には、すっかり気分は和風(笑)。
第九ではなくて除夜の鐘の音がぴったりの雰囲気になっているのであるが、ここからゴーインにベートーベンの世界へと誘っていくのである(笑)。
第九演奏の前に、最後のパート分けを行う。
昨年は全員で同じメロディを吹いただけだが、今回はアルト、ソプラノ、テノールの3つに分かれて鼻笛を演奏。
そして他にも歌、おもしろ楽器もパートで入るのだ。
調整をしていくうちにどんどん気分がまた洋風になってくる(笑)。
明らかにみんなコーフンしている。
まだか、まだか。
みんなスタート前の競走馬みたいになっている。
鼻笛を鼻に押し付け、ピーピー(鼻笛)、フーフー(興奮)、ピーピー(鼻笛)、フーフー(興奮)みたいな状況になっている。
そしてついに!!
ピアノの前奏のあと、モスリンさんの鼻笛ソロから「第九」ははじまった!
メロディは少しずつ盛り上がり、高まり、熱くなり、そして一気に燃え上がる!
歓喜の歌!
100個の鼻笛が四天王寺の本堂に鳴り響く!!
100個以上の鼻笛が合奏されたのは、ひょっとして日本初、いや世界初ではなかろうか。
なんともやさしく、おかしく、そして感動的な音のひろがりだった。
なんて素敵なんだろう・・・。
たぶん会場にいた人のほとんどはそう思っていたに違いない。
みんなでこうして鼻笛を吹いていたら、
争いや諍いや、悲しみや不安も、みな乗り越えられる・・・・。
そんな気がした。
そしてファイナル。
盛り上がりに盛り上がった音が、一気に消えた。
一瞬の無音。
鼻笛第九2012はこうして幕を閉じた。
このあと、盛大な打ち上げが行われたらしいが、写真師とワタクシは別の用事があって、第九の演奏が終わると同時に会場をあとにしたので、残念ながらその様子は知らない。
今回の鼻笛第九に協力していただいたみなさん、そして参加していただいたみなさんに心より感謝いたします。
たぶん2013年もあります。
しかし参加者がさらに増えることを考えると、運営を少し見なおした方がよいのではないかという話になっており、これから反省会を含めて会議をしていく予定です。
またわかり次第、お知らせしていきます。