写真/フォトグラファー加納(加納準) 文/サルシカ隊長(奥田裕久)
「今度の今度こそ本当に完成させるぞ!」
決行前夜、ワタクシはひとり、雲が多い夜空を見上げながらそう誓った。
こぶしをギュッと握り、そして唇をわなわなと震わせ、なぜかこぼれ出る涙を拭いもせず、空に吠えた。
「やるのだ! やるといったらやるのだ!」
近所の犬がアホーンと鳴き、流れ星がひとつ西の空に落ちた。
ワタクシの願いは神に通じたのだ。
で、翌朝。
三重県津市美里町の秘密基地周辺は、見事なまでの白銀の世界であった・・・。
雪はこれまでも降ったが、今回は道路まで真っ白で凍てついている。
もはや神も仏もないのだ(笑)。
ワタクシは朝から、ネットで天気予報情報を集め、そして凍てつく道を走って近隣の道の調査を行った。
「スタッドレスタイヤであれば大丈夫! ノーマルタイヤの人はもう少し暖かくなってから来たれし!」
そんな情報をこのサルシカやFacebookでどんどん発信した。
朝からドタバタなのである。
そんなこんなで迎えた開始時間の午前9時。
集まったのは、これだけであった。
今回が「ラストだあ!」と言いふらしたので、昨年10月の一番最初の秘密基地イベントに次ぐ参加表明者がいたはずである。
が、雪で足止めを食ったり、安全のために出発時間をずらす人が続出。
「やっぱり今回で終わらないかも・・・」
ワタクシの決意は早くも揺らぎつつあった(笑)。
午後10時近くになって、ようやく人が集まってきた。
写真左上から、愛知県から中谷のおとうちゃん。
写真左下、原田さんとすずきっくす。
写真右上、三重テレビ撮影隊、前田くん。
写真右下、秘密基地皆勤賞のもやし石黒。
特に中谷のお父ちゃんは、今回もお昼ごはんの担当であったため、
「お父ちゃんは本当に来るのか」
「われわれを見捨てたんじゃないのか」
「お父ちゃんが来なかったらお昼ごはんはどうしたらいいのか」
「ああ、どうしようどうしよう」
「あわわあわわ」
という具合に一気に不安が広がっていたのであった。
そのお父ちゃんが雪の中、高速をひた走って駆けつけてくれたことによって、凍てつき沈んでいた隊員たちの心は一気に春を迎えた。
お父ちゃんはサニトラから大きな寸胴鍋、時計ストーブ、薪、さまざまな食材を次々に運び出し、着々と準備をはじめた。
「よーし、やるのだ!!」
「働くぞ~!!」
サルシカ隊はいよいよエンジン全開、いきなり猛発進で作業を開始したのである。
さて、今回の主な作業であるが・・・。
まずは、大工のT橋が事前に発表したイラストを見ていただこう。
寡黙で仕事一途だった男は、秘密基地をつくるうちにニヤけたハモニカ男となり、ついにはこんな珍妙なイラストまで描くようになってしまったのだ(笑)。
ま、それはいいとして、今回はこのツリーハウスと、石焼窯をつくるのがミッションである。
これらが出来れば、サルシカ秘密基地は完成なのである!!!
このイラストを見て、ずいぶん最初の計画と変わってきてるなあ、と思った方もいるかも知れないが、まあそのあたりはまたあとで触れる。
というわけで、今回は石焼窯班とツリーハウス班のふたつにわかれての作業となった。
こちらは石焼窯班。
まずは窯をつくるスペースを整備。
窯は雨に濡れるといけないらしいので、屋根をつくる。
その柱を建てるための穴を掘る。
続いてこちらはツリーハウス班。
こちらも2メートル上空にイカダをつくるため、それを支える柱の穴を掘る。
つまりみんなでどんどこ穴を掘ったわけだ(笑)。
今回も材料の中心となるのは、古電柱である。
ツリーハウスのいかだや柱はすべてこれでまかなう。
石焼窯も下の台をこの電柱を並べてつくり、そこに枕木を置いて、土をのせていく作戦である。
石焼窯班のリーダーは、左官屋こやまさん。
なんと彼は、「基本的に土だけでつくりますから! だから石焼窯じゃなくて土焼き窯ですから!」と言った。
土だけで窯がつくれるのかどうかわからないが、プロがいうなら大丈夫であろう。
が、こやまさんは根本的に「だははははははははは!」と笑ってばかりいるのだ。
「土台の電柱を切る長さを間違っちゃった」とワタクシが言えば、
「だはははははははは! 大丈夫、大丈夫、多少の誤差は大丈夫!」
「あ、柱を建てる位置が違うみたい」と誰がが言えば、
「だはははははははは! いいのいいの、そんなのテキトーでいいの!」
てな具合である。
何気にちょっと不安なのである(笑)。
そしてツリーハウス班のリーダーは、サルシカ秘密基地の棟梁でもある大工のT橋!
最近ワタクシがニマニマばかりしてると書くもんだから、カメラが向けられるとしかめっ面をする(笑)。
普段はこんなシブい顔をしていないのだ。
本当はヘラヘラ、ニマニマしてるのだ。
それにしても。
今回のみんなのがんばりようはすごかった。
全員が無駄な動きなく、しっかりと連携して作業をしていた。
その最大の理由はテレビカメラである。
スチールカメラだと、多少仕事をさぼっていてもわからない。
が、テレビカメラの場合は、さぼっているところがそのまま写ってしまう。
しかも、サルシカ隊はみんな「ええ格好しい」である。
カメラが回っていると、ついつい格好をつけて普段以上に働くのである。
普段、一番仕事をしない隊長のワタクシも働いた。
やまぴーも働いた。
みんな、「さあがんばろう!」「力を合わせていこう!」などと、普段絶対に言わないセリフを口にしながら、カメラを思い切り意識しつつ汗を流していた(笑)。
それが功を奏してか、雪でスタートが1時間も遅れたにもかかわらず、作業は予定より早く進んでいた。
まだお昼にもなっていないのに、石焼窯の柱や梁ができあがろうとしていた。
基本的に掘っ立て小屋方式なので、土に埋める部分には防腐剤をたっぷりと塗りこんだ。
そしてツリーハウスも、イカダを支える柱が立ち上がっていた。
しかもいつのまにか雪は止み、見事なまでの青空が広がっている。
「思ったより早く進んでると違いますか・・・・えへへへ」
大工のT橋はテレビカメラの前で思わず笑っていた。
まもなくお昼。
さあ、中谷のお父ちゃんが動き始める!!!
(次回につづく)