「秘密基地からトレッキングなのだ!」第206回サルシカ隊がいく

投稿日: 2013年05月25日(土)06:58

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すべては唐突に。
なんの準備も覚悟もなく決まったのである。

実は次の秘密基地イベントの企画として、ノルディック・ウォーキングをやりたいなあ、と思っている。
そして近く「レッ津!ノルディック」というノルディック・ウォーキングを普及につとめるグループの代表と事務局長と打ち合わせをすることになっているのだ。

が、しかし。
その前にある程度、どこを歩きたいか、みんなに歩いてもらいたいかぐらいはリサーチしておいた方がよかろうという話を先週の田んぼ草刈りのときに話していた。

で、5月23日の木曜日。
野遊びに命をかける「ひだのん」さんから、
「きょう午後から仕事が空いたので、秘密基地周辺を歩いてみます! だから車を基地に置いておかせてくださいね!」
と、メールが入った。

おおおお!
なんと心優しき人なのか!!
ひだのんさんはノルディック企画のことをちゃんと覚えていて、かつ自ら歩いてくれるというのである!!

午後から名古屋に行かねばならず、なおかつお昼締め切りの原稿に追われていたワタクシは、キーボードをパチパチしつつ感涙したのであった。

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ひだのんさんが秘密基地にやってきたのはお昼ちょっと前だった。
そのちょっと前に、名古屋の予定がキャンセルになり、遅れ気味の原稿をワタワタと書いていたのである。
が、その原稿もあとちょっとで終わる・・・・
午後の用事はない・・・
ん、待てよ!
これはいっしょに行けるのではないか???

そこからのワタクシの行動は迅速であった。
ひだのんさんは山の中で食べようと思っていた食事を先にして待っていてくれるという。
ワタクシは着替え、帽子やリュックやブーツを用意し、そしてインスタントラーメンをすすった。
そして「出発準備完了!!!」と勢いよく秘密基地へ戻ると、ひだのんさんは携帯食のお湯をのんびり沸かしているところだった(笑)。

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こうして唐突に、ひだのんさんと隊長のワタクシふたりのトレッキングがはじまったのである。
行き先は田んぼの草刈りのときにぼんやりと考えていた。
秘密基地のある津市美里町平木のおとなり・・・サルシカ田んぼのある細野。
そこに目無地蔵という、山の中にひっそりとたたずむ社があるのだ。

国道に車で出て走ればわずか5分の距離である。
が、その平木と細野をつなぐ林道がある・・・らしい(笑)。

前からその話を地域のひとに聞いていて、そこを行こうではないかと盛り上がっていたのだ。

平木の墓場の近くから林道へと入る。
そこからは平木の集落が一望できた。

「うわ~、すごい眺めですねぇ!!」

ひだのんさんはやたら感動している。
でもこちらとしては自分が暮らしているところなので、なんとも不思議な、恥ずかしいような感覚である。

そしてふたりは山へと入った。

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最初は舗装されている林道であった。
軽トラなら十分通れる。
途中から竹林が道の両方からせり上がってくる。
折れた竹が道をふさぎ、落ちた竹の葉で舗装路が見えなくなってくる。

ゆるい傾斜が思いの外キツイ。
普段歩き慣れていないせいか、ワタクシはハアハアゼイゼイと息が荒くなる。

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進むと、道はどんどん細くなり、舗装はなくなり、ついには獣道になった。
目をこらしていないとどれが道かわからなくなる。
ほとんど人が入っていないようだ。
道というか山はどんどん荒れ、そしてついには消えた・・・。

が、どこからか車の音が聞こえる。
いやそんなに遠くない。
音の方へと歩いていくと、それは国道163号線で、平木の集落を出てほんのすこし行ったところであった。
完全に道を間違っている・・・。

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平木から細野へのルートはいくつかあるという。
近所の人に聞いただけで2本。
1本は今チャレンジした道で、もう1本は山の方へ少し入った道。
こちらの方は一応、美里の案内マップにも掲載されている。

「せっかくここまで来ましたけど、道がわからないし、上の道へいきましょうか」と、ひだのんさん。
「ゼエゼエ・・・」とワタクシ。
「じゃ、最初のところまで戻りましょう!!」
「ゼエゼエ・・・」とワタクシ。
本当は戻るのがイヤでイヤでたまらなかったけれど、あまりに呼吸が乱れて声が出なかった(笑)。

で、仕方なく、軽快に歩くひだのんさんの背中を追って、ワタクシはヨロヨロと歩くのであった。

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もう1本の道は、平木を見下ろす経ヶ峰(標高819m)の登山道へと入り、少し行ったところを東へと向かうルートであった。
が、経ヶ峰に向かう道は大工事中。
なんとも立派な道がつけられている。

去年から集落の中をダンプがずいぶん通るなあと思っていたらこんなものを作っていたのか!!
なんだなんだ、サーキットでもつくる気なのか??(笑)

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工事のため途中で道は寸断され、仕方なく山へ入り、道なき道をゆき、大きく迂回して登山道へと戻る。
もうきょうは一体なんなのだ。
軽く数キロを歩くつもりが、山の中をずんずん進むアドベンチャーではないか!!

そしてようやく上の標識を発見!
右にいけば「細野」だよん、と書いてある!!
よっしゃ、今度こそ大丈夫!
と、その看板の指すほうを見れば、なんといきなり獣道なのである(笑)。
さっき地図に乗ってなかった道ですら舗装されていたのに、こっちはいきなり幅50センチの未舗装路。

ひだのんさんとワタクシは顔を見合わせた。

「ま、大丈夫でしょう、標識もあるんですし、地図にも載ってるんですから」
「ま、とりあえず行ってみますか」

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が、5分後、道ロスト(笑)。
しかもようやく見つけた道をいくと、元きた道の手前に出た。

ワタクシ、思わずその場にヘニャヘニャとへたり込みましたな。
道をロストしてようやく見つけた道。
たぶんワレワレは反対に歩いてきてしまったのだ。
さて、どうしよう。

結局、ワレワレは同じ道をまた歩いて、つまりあの看板まで出て、そしてまた獣道に入った。

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たぶんワタクシはすでに涙目になっていたに違いない。
道を間違える、戻る、二度歩く・・・これほど人間を疲れさせるものはない。
背中に鉄アレイをくくりつけられてようにガックシとくる。

なのに鉄人バカのひだのん(もう呼び捨てなのだ!)は、笑いながら振り返り、「隊長、だいじょうぶですかあ!?」と脳天気にシャッターを押すのである。

大丈夫じゃねえっての!!

で、ワタクシは坂道をのぼる時に借りていたひだのんさんのストックを、もうずっと奪い取ったままにした。
何があっても返すものか!!
もはやストックはワタクシの心のささえだ。

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今度はどうやら大丈夫のようであった。
道筋に時おり赤いテープが巻かれ、マーキングされていた。
iPhoneで現在位置を確認すると、ちゃんと細野方面に向かっている。

が、途中で何度も道を見失った。
しかも細い川であったが、それを渡らねばならなかった。

やはりこれはトレッキング(山歩き)であり、とてもウォーキングという感じではない。
ワタクシはそんな径(みち)をゼイゼイハアハアと歩いた。
ただただひだのんさんの背中を追って。

実はこのあたりからワタクシが撮影した写真は一切ない。
余裕がなかったからだ。
だから当然、ひだのんさんは一切写真に写っていない。
写ってるのは見苦しいワタクシばかり。
まあ、許されよ(笑)。

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細野側に入ると、道を示す看板がいくつ立てられ、迷うことなく大きな道に出た。
そこは、娘たちが小学校の6年間登り続けた経ヶ峰の細野登山口のすぐそばであった。
目的地の目無地蔵まであとちょっとの距離である。
終わりが見えたので、とたんにワタクシは元気になった。

が、しかし、いま来たコースは決してノルディック・ウォーキングのコースに適していない。
険しいトレッキングコースだ(笑)。

けれど、せっかくここまで来たので、ひとまず目無さんへ向かうことに。

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最後の最後。
目無さんへと登る坂道はまさに心臓やぶりであった。
疲れきった足が悲鳴をあげる。

坂を登り終える。
しばし平坦な道をいくと、そこに緑の中にひっそりとたたずむ社があった。

目無地蔵。
細野地蔵尊とも呼ばれる地蔵堂。
目の病気に効くと言われ、毎月24日には祭礼が行われている。
特に4月24日、7月24日の祭礼は「大祭」と呼ばれ、多くの信者が訪れるそうである。

目なし地蔵の由来についてはまた別のところで述べるとして、室町の時代のころ、この地蔵堂を含む北長野の山々は、修験道の修行の場所として有名だったらしいのだ。
そりゃあアップダウンはげしく、険しい道があって当然である。

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この日の目無さんはワレワレ以外に誰もおらず、まわりの緑に吸い込まれるほど静かであった。
しばしその静寂の中で身体を休めた。
そして今度は平木へ戻らず、細野の集落のほうへと道を降りはじめた。

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細野はサルシカ田んぼがあるところである。
その記事を見た人は、そこの眺めの素晴らしさをすでに知っていると思うが、そのもっと上から望む景色は、息を飲むほど。

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で、当然、サルシカ田んぼに立ち寄る。
ひだのんさんと水のチェックをする。
アウトドアウェアのまま田んぼに入ると、これがまったく似合わない。
どちらかというと怪しい。
近所の人たちに目撃されぬよう、こそこそとチェックを終える(笑)。

そしてワレワレはそこからさらに歩いてくだり、かんこ踊りで有名な長野神社を越え、長野小学校の敷地内にある美里ふるさと資料館へ。

そこは、美里ボランティアガイドの拠点でもある。
お茶をいただきつつ、コースの見直し。

結局この日。
迷いに迷って8キロ近くを歩いたのに、コースは決まらなかった(笑)。

ふるさと資料館を出て、北長野の集落をいく。
バスに乗って平木へ戻ろうと思ったら、その横をバスが走り抜けていった。
2時間に1本のバスである。

で、ワレワレは、そのままキヨちゃんの工場まで歩き、やっさんに車で平木まで送ってもらい、唐突な旅を終えたのであった。

さあ、
サルシカ秘密基地イベントのノルディック・ウォーキングは一体どーなるのか!?
不安をあおったまま今回のリポートは終わるのである(笑)。