第8回「藁の家」

投稿日: 2009年06月23日(火)01:00

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今回の話を最初に教えてくれたのは、まさやん隊員であった。

「隊長、隊長。ストローベイルハウスって知っとる?」
「知らん」
「ワラの家なんやけど・・・」
「3匹の子ブタの?」
「・・・・・・」

こりゃダメだと思ったのか、まさやん隊員はずいぶん黙ったままだった。
冗談だって、冗談(笑)。

まさやん隊員の話によると、薪ストーブ関係の知り合いの人がワラの家・・・ストローベイルハウスづくりにチャレンジしているというのだ。

場所は三重県某所。
さっそくフォトグラファー加納とワタクシ隊長は現場へと急行した。

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こちらが、ワラの家の施主のマンボウさん。

・・・・あのぉ、作業中にお邪魔してスイマセン。

マンボウ「ようこそ、いらっしゃいました」

・・・・ワラの家ってあまり想像がつかなかったのですが、見た感じはそんなに普通の住宅と変わらないんですね?

マンボウ「パッと見はそうですかね。でもよく見ると、ずいぶん違いますよ。まず中をご案内しましょう!」

週末を利用しての作業。
かなり忙しいと思うのだが、快く取材を受けていただいた。

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が、中に案内してもらう前に、大量につまれた薪を発見!
薪ストーブユーザーであることは聞いていたが、まだ未完の新居ですでに薪割りはスタートしていたのだ。
すごいのである。

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しかも売るほど大量に保管されてるし・・・・。
ワラの家の前に、薪でいきなりカウンターパンチを食らう隊長。
マンボウさんはきっとスゴイ人に違いないのだ(笑)。

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見てください!
手作りの薪割り機です。

自分でいろいろ考え、つくったそうです。
こんなの初めて見ました。

そもそも薪割り機をつくっちゃった人が日本にどれだけいるんでしょうか。
いやはや、すごい人がいたもんです。

マンボウさんに話を聞いてみると、薪ストーブユーザーとしての歴史が違います。
10年選手です。
もはやプロ状態です(笑)。

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家の前にすっかり薪と薪割り機でコーフンしてしまった。
で、中に案内していただく。

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こう見ると、ごくごく普通の住宅に見える。

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が、あらゆるところにワラのブロックがいっぱい山積みされている。

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そもそもストローベイルとは何なのであろうか?
家畜の飼料用に圧縮加工された藁のブロックのことを指すらしい。
この藁ブロックを積み上げて壁を作り、粘土を塗り漆喰で堅めるのが、ストローベイルハウスなのである。
藁壁の家は壁厚が40~50センチもあるため断熱効果に優れ、冷暖房エネルギーの大幅な削減が出来るというエコ住宅である。
また木材使用量が従来建築の1/3程度で済むローコスト住宅でもあり、セルフビルトも可能で、100%自然素材の家をつくることができるのだ。

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・・・・マンボウさんはそもそもなぜ「ワラの家」をつくろうと思ったのですか?

マンボウ「私たちはこれまで海に近い住宅街で薪ストーブライフを楽しんできたんですが、薪を割る音がうるさいと苦情が入るようになって・・・。それならば薪ストーブが思いきり楽しめる少し田舎の里山に引っ越そうと・・・・。
しかし、いい物件にめぐり合うまで、かなりの時間がかかりました。
そしていざ物件が見つかって、家を建てよう、と思ったとき、悩んでしまったんですよ」

・・・・悩んだ?

マンボウ「薪ストーブといえばログハウスのイメージがあるのですが、私には天邪鬼なところがあって、田舎暮らしイコールログハウスとか古民家じゃないだろうって。で、何かいい家はないかと探していたときに、ストローベイルハウスを知ったんです」

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マンボウ「実際にストローベイルハウスづくりにも参加しました。愛知県で行われたワークショップです。
で、つくらせてもらって思ったんです。
壁の厚さが40cm以上もある。こんな壁で家をつくったら、家の中の空気が違うだろうなぁ、って。それがスタートです」

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こうして、マンボウさんの「ワラの家」づくりがはじまった。
設計、施工、監督は、薪ストーブつながりの一級建築士の友人。

ゆりかごのように気持ちいい家をつくること。
できるうる限り自分たちでやってみること。

そんな家づくりである。

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現在、マンボウさんの「ワラの家」は、ワークショップというスタイルを導入し、全国から参加者を集って家作りをしている。

マンボウ「先日は沖縄の人も参加してもらいました。こうして自分の家づくりにいろんな人が携わってもらえるのは不思議な感じですね」

参加者は参加費を支払って家づくりを学ぶ。
つまりお金を払って労働するわけだ。
そこまでする人がいるということは、ストローベイルハウスがじわじわと認められつつあるという証拠であろう。

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外壁の作業もちゃくちゃくと進んでいた。
ワラのヒモで壁を編み上げるように固定していく。
これがこれから塗る土壁をしっかりとキャッチすることになる。

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そしてここに今回のストローベイルハウスで欠かせない重要な人物が。

ストローベイルハウス・プロジェクトの大島秀斗さんである。

大島さんは2003年に初めてストローベイルハウス建設に参加。
以来、ずっとストローベイルハウスづくりにたずさわってきた。

現在は、ストローベイルハウスの設計、施工監理、技術指導をしている。

大島さんに、これまでの実績の写真をお借りして、ストローベイルハウスの特徴などをうかがった。


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ストローベイルハウスは、ワラのブロックをつみあげてつくります。
壁の厚さが40cm以上必要ですので、写真を見ていただいたらわかるかと思いますが、柱が2重に、通常の壁にあたる部分を2つ作る必要があります。
ここにワラを積み上げていくわけですね。

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それから土壁を塗り、漆喰などを塗って仕上げていきます。
この時、重要なのは湿気です。
壁のワラから十分に湿気が抜けていないと、あとで腐ったりして大変なことになります。

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壁の叩き締めという作業をして、仕上げていきます。
ワラという自然の断熱材が40cmも入っているわけですから、その断熱効果はすごいです。
冬暖かく、夏涼しく。
そして薪ストーブとの相性もバッチリだと思います。

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ちなみにこれは「真実の窓」と呼ばれる内壁に設けられた遊び。
壁に押し込められたワラをガラス越しに見ることができる。
快適さと、その窓が、ワラの家の証だ。


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マンボウさんの家に取材にうかがった時も、土壁の準備が進んでいた。
じっくりと熟成させた土をこねていた。

いよいよ、マンボウさんの家ができあがる。
また完成した家を見せてもらいたいなぁ、と思います。

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■関連リンク:ストローベイル・プロジェクト