第92回「隊長、人口わずか5人の熊野須野を歩く・その2」

投稿日: 2014年09月25日(木)09:12

提供:ゲンキ3ネット

第92回『サルシカ隊長レポート』2014年9月

三重県グリーン・ツーリズムネットワーク大会in熊野に講師(!)として参加することになったサルシカ隊長。
熊野の魅力を全身で感じようと、事前の体験ツアーに参加!
人口わずか5人の須野で感じ、そして得たこととは!?

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久保さん(旧姓)は、神奈川県に生まれ育った。
おじいちゃんが熊野出身ということもあり、何度も里帰りをしているうち、熊野の地に惚れ込み、移住をしちゃった女性である。
木花堂という熊野の魅力と資産がたっぷりと詰まった小さなお店を熊野市街でやっていて、それを写真師と共に取材したこともある。

そんな久保さんが結婚をした。
いにしえの道が脈々と続き、辺境と呼ばれる熊野の中でも、さらに辺境と呼ばれる、人口わずか5人の集落へ、結婚を機に引っ越した。
旦那のふるさとでもない。
ただただそこが気に入ったからだ。

そんな二人を惹きつけた須野とはどんなところなのか。
歩くのが楽しみで仕方なかった。



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須野のメインストリート「須野銀座通り」の階段を登りきると、熊野灘の海が望めた。
背後の山には給水所がある。
須野の人たちはこの山水で生活しているのだ。

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須野銀座通りの真ん中あたりに清水家があった。
久保さんと旦那さんの志水さんが暮らす家だ。
今回のツアーの案内をしてくれている濱田さんが、家を借りてくれたのだという。

ここで薪割り体験とお茶でひと休み。

「隊長も薪割りいかがですか?」

と誘われたが、ワタクシは冬のあいだそれこそ毎日のように薪割りをしているので、丁重にお断りした(笑)。

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志水家はまだ改装中。
仲間とこつこつと手を入れているという。
ここで、「木花堂」は再開するのである。

人口5人。車を降りてから坂道をあひあひ歩いていくお店だ。
これはこれで面白い。

参加者のみなさんはロケットストーブに夢中。
志水家ではコレを使って日々の煮炊きをしているそうだ。
薪は家の裏の山にいくらでもある。

「海にいけば魚も釣れるし、本当にお金がかからないんですよ〜。
 あとはお米ですね、田んぼさえ小さくてもできればいいんですけど〜」

うーむ。
海沿いに暮らしていると、おかず力が強いな。
夏でも冬でも魚は釣れるしな。

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志水家の裏はみかん畑。
もうこれでビタミンはバッチリだ(笑)。

山水だから水道代はかからない。
薪を使ってるからガス代はかからない。
電気は使うけど必要最小限。
食べるものは家のまわりから、それこそ自然のめぐみをもらってくる。

なんともすばらしい暮らしではないか。

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志水家で休ませてもらってから、そのまま須野銀座通りを降りて海へと出た。
熊野ならではの荒々しい岩壁が切り立った海。
海岸には大きな丸石がごろごろと転がっている。

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季節になると、ここにはブリが大群でやってくるそうだ。
海が揺れる、そう表現されるそうだ。

「去年はブリをたくさんいただいて、バーベキューで本当に贅沢にいただきました〜」

久保さんがうらやましい発言をしている。
うらやましい話だけでなくて、ただちにワタクシたちにも食べさせなさい。
参加者はみんなグルルルルと飢えた獣状態になっているよ(笑)。

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海岸沿いに滝があって、その落ち込みが天然のプールになっているという。
ワタクシたちが行った時は満潮に近くて海水が入り込んでいたが、干潮のときは真水のみになるという。
波も入ってこないし、子どもたちが安心して遊べるところだ。

「夏はわたしたちもここでよく泳ぎますよ。
 私はアトピーなんですけど、真水と混じっているせいか、ここに入ると肌の調子がすごくよくなるんです〜」

案内人の濱田さんが言う。
確かにいまの濱田さんのお肌はつるつるだ。

参加者はタイドプールで小さな魚を見つけて声をあげる。
大人でこんなに楽しめるのだから、子どもたちには楽園のようなところだ。

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熊野市須野。
消滅ぎりぎりの集落で、人はわずか5人しかいないけれど、昔のままの人の営みというか、匂いが残っている地域である。
海と山のめぐみもある。
わずか5人だから、われわれの想像を超えた「人のつながり」がある。

どんどんここに移住してきてほしい、と思っているわけではないと思う。
でも、ここが消えないように、ゆるやかに人がつながり、増えていけばいいと5人の方は考えているのではないか。

まずは一度、須野に足を運んでみてはいかがか。
木花堂が再開したら、ぜひとも階段を登って訪ねてみてほしい。


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写真:松原 豊