「お好きなトッピングをどうぞ〜またまた秘密基地②」第287回サルシカ隊がいく

投稿日: 2014年12月11日(木)09:00

s287-01写真/フォトグラファー加納   テキスト/サルシカ隊長

やはり雨が降ってきた。
しかもザーザーと。
もはやサルシカ秘密基地工事のプロジェクトには雨はつきもの。
中谷のとうちゃんと大山さんが存在する限り、雨は振り続けるのである(笑)。

s287-02

隙間を埋め終えたばかりのデッキが雨に濡れていた。
屋根はあるものの、風も少しあるので雨が吹き込んでくる。
朝からハイテンションで進んできた工事はここで一気にトーンダウンとなった。

s287-04

そんなところに、第七劇場の役者さんである小菅さんが、土木作業員顔負けの格好でやってくる。
第七劇場は秘密基地のある三重県津市美里町に「テアトル・ドゥ・ベルヴィル」という劇場をこの11月にオープンし、全公演が満席という快挙を成し遂げた劇団である。
で、小菅さんは東京からこの三重の山あいの里に移住をしてきたのだ。
いわば、美里の期待の星のひとりである。

が、スターがきても雨は降り止まない。

s287-03

われわれは休憩を取りながら、「さてさてどーしたものか」と曇天を仰ぎ見る。
そしてため息をつきながら、さっきから誰とも目を合わせようとしない中谷のとうちゃんと大山さんを見やるのである。

「なんだよなんだよ、みんなあ。そんなに俺たちのせいにしたかったらすればいいじゃないかよ〜」
「雨が降らなかったら野菜だって育たないんだよ〜、自然のめぐみは俺たちのおかげなんだよ〜、ちくしょ〜」

中谷のとうちゃんと大山さんは、もうメチャクチャな理屈を申し立てるのである(笑)。

s287-05

そんな内輪もめの間も、本日の炊事班長である上出研修生は、ちゃくちゃくとお昼ごはんのカレーを作り続けるのである。
サルシカの畑でつくった水菜もサラダとして添えるため収穫されていた。
サルシカの自給率はどんどんあがっているのだ。

基地全体に漂いはじめたカレーの匂いに、隊員たちのテンションは少しあがる(笑)。

s287-06

そして、串揚げの「まるう」の移動販売車がやってきて、開店の準備をはじめる。

「おいおいおい、なんだよ、屋台があるのかよ、早く言えよ、このやろ」
「きたよきたよきたよ、串揚げとビールがきたよ」
「早くメシだメシだメシだ、宴会だ宴会だ宴会だ」

何やら急に隊員たちはやる気になっているのである。
そわそわと立ち上がり、カナヅチやノコギリを手にし始めるのである。

s287-07

ごらんいただきたい。
雨の中、懸命に働く隊員の姿を。
食べ物の匂いがすると、人というのはこんなに一生懸命働くのである(笑)。

そして!
なんと予定通り、お昼までには床の工事と鴨居の工事をすべて完了したのであった。

s287-09

で、待望のお昼ごはんである。
集落の人にもらった猪肉入りのジビエカレーである。
こう書くと何やら高級だが、もらいものの野菜と肉を入れた、果てしなく原価がかかっていないカレーである(笑)。

s287-10

サルシカのキッチンでカレーをよそってもらい、まるうの屋台へ移動。
そこでお好みの揚げ物をトッピングするという、すんばらしい仕組みである。
今後サルシカの活動には、まるうは欠かせないのだ。
たとえカヌーで川をくだるときでも、海でキャンプをするときも、まるうを連れて行きたいのだ(笑)。

s287-08

が、ここで問題が発覚。
上出研修生はこの9月に美里町に移住してきたばかりで、サルシカ秘密基地の建造プロジェクトに参加するのは初めてなのである。
作業の中で隊員たちがどれほど飢え、昼めしをどれほど渇望し、貪欲に食べるかを知らなかった。
50人前のカレーの材料を用意してあったが、参加者は20名だったので25人前のカレーをつくっていたのであった。

どんどん減っていくカレールーに彼は青ざめていた。
もし途中で「もうカレーなし!」なんてことになったら、もう反乱である。
血の雨が降るに違いないのだ。

上出研修生は、おかわりに並ぶ隊員たちに対して「まだ食うのかコノヤロ」とにらみつけ、ルーもごはんもどんどん少量によそいはじめるのであった(笑)。

s287-11

そんな上出研修生の心配をよそに、カレーを食べまくって満足気な隊員たち。
お腹が満ちると人は幸せになる。
やさしくなる。
すると、なんということか!
雨があがり、陽射しすら差してきたではないか。

中谷のとうちゃんも大山さんも俄然元気になって午後を迎えたのである。

s287-12

そして工事再開。
午後はいよいよ壁となって雨風をしのぐ戸板づくりである。
木で枠をつくり、そこに透明な波板をはりつけていく。
が、広いウッドデッキのすべてを覆うため、その戸板が27枚も必要なのだ。

s287-13

戸板は取り外しができるようにつくるので、慎重な採寸が求められる。
サイズが大きいと鴨居にはまらないし、小さいとそもそも固定ができないのだ。

3班ほどにわけてこの戸板をつくることにしていたが、みんな1つをつくるのにかなり手間取っていた。
この日の夜。
宴会はこのウッドデッキで行われる。
ある程度、壁が出来ないと、寒くて寒くて宴会なんぞできないのだ。
そのためにも決して工程を遅らせることはできなかった。

s287-14

工事班長の中谷のとうちゃん、そして隊長のワタクシはじわじわと焦りはじめていた。
が、そんなワタクシたちの頭上にはいつの間にか青空が広がっていた。
やまない雨はないのである。
そう、
終わらない工事はない。
サルシカ秘密基地には、いつも奇跡の風が吹くのである(笑)。

次回へつづく