「秘密基地、かき小屋になる〜またまた基地③」第288回サルシカ隊がいく

投稿日: 2014年12月12日(金)09:15

s287-01写真/フォトグラファー加納   テキスト/サルシカ隊長

夜の宴会は、焼き牡蠣なのであった。
火を使うので、このウッドデッキでやるしかない。
山に面した背面だけでも防風壁をつくっておかないと、寒風が「これでもか!」と吹きつけ、とても宴会を楽しめる状況ではない。
であるからして、夜の宴会を楽しむためにも絶対に背面の防風壁をつくりあげねばならぬのだ(笑)。

しかし。
防風用の戸板づくりは精密な採寸と慎重な加工が求められた。
基本的に大雑把な性格の人間が多いサルシカの面々は、「ああああ」とか「うううう」といううめき声ばかりがあがり、作業はなかなか進まなかった。

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そんな苦しい作業が続いていた午後2時。
サルシカ秘密基地に奇跡が訪れた。

そう!!
サルシカのツリーハウスではじめて三重県へやってきて、以来、遠く山形から秘密基地工事に何度も来てくれている「デコさん」が、大きなトラックでやってきたのだ。

実は「そろそろ来るのではないか」と誰もが予想していた。
が、まさか大きなトラックでドカガガガとやってくるとは!!

デコさんはなんと!
中古の薪ストーブを秘密基地にプレゼントしてくれるために大型トラックに乗ってはるばる1000キロ近い道程を走ってきてくれたのだ。

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しかもデコさんは、いつもワレワレが苦しいときにやってくる。

最初の基地づくりの時も、大雨の2日目。
もう本当に工事を中止しよう、やめようと思っていた時に彼はさっそうと現れた。
そして「こんな雨ぐらいでナニいってんの、大丈夫大丈夫、さあやろう、せっかく山形から来たんだから!」
と、みんなの尻を叩いてくれ、工事を終えることができたのだ。

見てくれはまさに東北の暴れ熊であるが、実は後光きらめくサルシカの救世主さまなのかも知れないのだ。

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「よーし、やろう!!!」

工事班長の中谷のとうちゃんが雄叫びをあげた。
そして、リユースの波板をデッキブラシでごしごしと洗った。

いつものごとく、サルシカの秘密基地はもらいものでつくるのだ。
お金をつかわず、労力をつかう。
流せ、汗と涙!
なのである(笑)。

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戸板づくりは最初は3班制でやっていたが、それぞれの工程に専門性の高い作業が必要となる。
3つの班がその作業スキルを取得するよりも、流れ作業にして、それぞれの作業に集中してもらったほうが効率がよいのではないか。
キヨちゃん副隊長たちによる検討の結果、その流れ作業方式が実施された。

木材をサイズ通りに切るチーム。
その木材で骨組みをつくるチーム。
その骨組みに波板を打ち付けるチーム。

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最初はつまづきつつも、どんどん作業は早くなる。
3枚、4枚と作るうちにもうその専門作業のプロとなっていく!
しかも!
最初の木材切断チームの作業が遅れているとわかると、ただちに他の班から増員され、滞りなく作業は流れていくのである。
トヨタの看板方式ならぬ、サルシカのルーチンワークである!

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一方、大工のT橋さんは、みんなと離れ、戸板ではなく常設の防風壁の工事に入っていた。
階段部分や妙な形になっている部分が多く、プロでないととても対応できないのだ。
ひとりでは作業がはかどらないというので、もやし石黒、野生児やっさんをアシスタントにつける。

めきめきと作業は進んでいた。
さっきまでの停滞ぶりがウソのようであった。

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背面の戸板工事は午後3時までにはすべて終了。
そして予定では明日の工事であった側面の戸板制作に突入していた。

熱く燃えたおっさんたちは恐ろしい。
ものすごい力を発揮する。
いつもは腰が痛いだの、老眼で目が見えないだの言っているが、やるときはやるのである!(笑)

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午後4時すぎ。
なんと側面の戸板まですべて完成してしまった。
最後の1枚を入れたのは、山形のデコさん。

「ほら終わったっぺ。さあ酒飲むべ」

そう、ワレワレはそのためにがんばってきたのであった(笑)。

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秘密基地工事が予定より早く終るなんてことはこれまでになかったことであった。
すっかり油断していた串揚げのまるうは慌てて赤ちょうちんを点け、フライヤーに火を入れるのであった。

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そう!
今日は牡蠣があるのだ。
戸板が見事に風を遮ってくれているウッドデッキで焼き牡蠣をするのだ!!

料理が得意なちよぞーさんは、チヌをさばいて刺し身にする。
焚き火がただちに熾され、誰もが宴会の準備に走った。
工事の作業以上に宴会の準備は早いのだ。
これぞサルシカ隊なのだ。

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そしてカンパーイ!!!!
波板の戸板に囲まれた秘密基地は、まるで海の家のようであった。
しかも牡蠣がじゃんじゃん焼かれて、潮の香りが思い切り漂うのである。

「ここは牡蠣小屋かあ!!!」

匂いにつられてやってきた集落の人が、焼き牡蠣をハフハフ頬張りながら笑った。
確かにどこからどう見ても牡蠣小屋であった。
背後には山々が広がっているけれど、どこからか波の音が聞こえてきてもおかしくない雰囲気だ。

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差し入れの干物を焼いた。
若鶏を焼いた。
そしてスキレットで牡蠣を蒸して「うひゃあああああ!」と声をあげた。

サルシカ秘密基地の工事が帰ってきた。
宴会がはじまり、みんなの笑い声に包まれてようやく実感ができる。
そうなのだ、このひとときのために、ワレワレは過酷な工事をしているのだ(笑)。

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飲んで食べてしゃべって笑って。
ふらりと牡蠣小屋から消えた男たちは、まるうのカウンターで肩を寄せあって飲んでいた。
こんな山の中で、串揚げでビールが飲めるなんて。

こうして夜更けまで飲んだ。
昼間の作業時間と夜の飲んでいる時間がほぼ同じであったという事実は、まだこの時点では誰もしらない(笑)。

次回、この「またまた編」の最終話!
でもたぶん秘密基地シリーズはえんえんと終わらない(笑)。