写真/鼻谷くん テキスト/サルシカ隊長
中谷ハウスの建築工事、初日の午後。
なんとトラブルもなく、工事はウソのように順調に進んでいた。
床が完成し、ひっくり返して断熱材を入れる。
羊毛の高級断熱材。
チープな小屋に不釣合いであるが、中谷の父ちゃんは寒いのが大嫌いなので、これだけは奮発をしたらしい。
たぶん小屋の他の材料費すべてよりも、この断熱材の方が高い(笑)。
「こんなの入れたらカメムシの巣になるだけじゃないの!」
「そんなに寒いのが嫌なら、この羊毛をそのまま身体に巻き付けとけばいいんじゃないの」
「羊毛に包まれたおっさんって気持ち悪いよね〜」
「うわ〜、想像したくないなあ」
そんなことを言いつつも作業は進む。
午後2時過ぎ。
長久手視察チームと隊長のワタクシは工事現場を離れ、基地から車で10分ほどのところにあるツリーハウスへ。
サルシカがここにツリーハウスをつくったのは何年前のことであったか。
助っ人を募集したところ、なんと全国から150人もの人が駆けつけてくれ、1ヶ月で作る予定がわずか2日間で完成してしまったツリーハウスだ。
これがきっかけで、サルシカの活動は飛躍的に前進した。
そして、自分たちでつくればなんとかなると知った。
このツリーハウスがなければ、いまのサルシカの活動も秘密基地もなかったのだ。
そんな話をしつつ、みなさんをご案内。
でもこのツリーハウスは完成後にいろいろ問題があって活用ができなかった。
その反省すべき事実も、いまのサルシカの活動に生かされている。
ツリーハウスで長久手のみなさんと別れて、サルシカ秘密基地へ戻ると、中谷の父ちゃんが満面の笑みで待ち構えていた。
「隊長〜、いつまでさぼってんの〜、もう工事終わっちゃうよ〜、いや〜、今回の工事は楽勝楽勝! ああ気持ちいいからもう今日は飲んじゃおうか〜」
なんて言っている。
床部分に置いて作っているのでわかりにくいが、工事は壁部分に入っていた。
前と後ろの2枚を2チームにわかれて作っている。
いつのまにか、ちよぞーさんも工事に参加していた。
18名ものメンバーがそれぞれに汗をかいてがんばっている。
最初に出来た側面に板で壁をつけていく。
中に細い木を打ち、それに重ねるように太い木を打ち付けていく。
すべてが順調だった。
順調すぎて気持ち悪いぐらいだった。
中谷の父ちゃんはうれしすぎて、ずっとふんふんと鼻歌をうたっていた。
その、衝撃の事実が発覚するまでは。
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
声をあげたのは、中谷の父ちゃん本人であった。
「壁板の下に防水シートを貼るのを忘れてたあ!!!」
もう壁板を半分ほど打ち付けたあとである。
みんな嘘だろ、という顔になった。
どーすんだどーすんだ、という顔になった。
が、結局板を外して直すしかないとわかると、一気にみんなの肩が落ちた。
ガックシという音が聞こえるかのように。
「昼からビールを飲むからこんなうっかりミスをするんだよ!!」
「2本も飲んだらしいよ、あの人」
「ただでさえボーっとしてるのに、なんで昼から飲むかねぇ」
「ああ〜、くそくそくそ!!」
みんな文句をいい放題いいつつ板をはがす。
で、ここで一級建築士の資格を持つ一級松田の登場なのである。
「松田くんさあ、一級建築士なんだからさあ、なんかおかしいと思わなかったのぉ?」
「いや〜、いいのかなあ、と思ってましたけど、他がテキトーだからこれもそれでいいのかなあ、と」
その一級松田の言葉に、「あああああああああああ!!」と、再び中谷の父ちゃんが声をあげた。
果たして、この間違いは直せるのか?
それとも最初からやり直しなのか?
波乱のまま次回へつづく。