さて、茶摘みカフェの3回め。
最終話である。
茶摘みイベントの真っ最中、サルシカ隊長のワタクシはテレビの撮影やこのレポートの取材で、あっちへうろうろ、こっちへうろうろしていて、ほとんど茶摘みをしていなかった。
しかし、である。
茶畑から基地へ戻るとき、ワタクシが茶葉でいっぱいになったビニール袋をさげていたのに気づいた人はいたであろうか。
いつのまにワタクシは茶摘みをしたのか。
ワタクシは、ウルトラスーパーに茶摘みが早い男であるのか。
それとも分身の術を使ったのか。
否、である。
実は新芽なんぞにまったく目もくれず、帰る間際に茶葉をわしづかみにしてブチブチと引きちぎり、わっせわっせとビニール袋に突っ込んでいたのである(笑)。
今回、ワタクシは最初から緑茶をつくるつもりがなかったのだ。
紅茶をつくろうと考えていた。
紅茶も、もちろん新芽でつくった方がおいしいらしいが、十分育った茶葉でも大丈夫であるらしいのだ。
ワタクシは基地へ戻るや否や、妻M子と寿実ちゃんに茶葉をざっと洗ってもらい、乾燥用のネットに突っ込んでもらった。
そしてそのまま翌日まで、風通しのいいところに吊るしておいたのだ。
さて。
ここからは、サルシカ茶摘みカフェイベントの翌日の様子である。
上の写真は、一晩風にさらした茶葉。
水分がかなり抜けてしおれている。
この手順を「萎凋(いちょう)」という。
つまり、しおれさせて、もみやすくするのである。
そして揉む。
緑茶の場合は揉む前に蒸す。
が、紅茶の場合はそのまま揉む。
お茶の葉には、酸化酵素(ポリフェノールオキシダーゼ)が含まれている。
熱を加えると、この発酵酵素は消えてしまう。
緑茶の場合は発酵を止めてから揉むのに対し、紅茶は揉んで発酵させつつ完成させるのである。
揉み方のポイント。
ゴルフボール大ぐらいの団子をつくるように手のひらでぐりぐりやる。
面倒だが、少しずつ、続ける。
茶葉から水分が出てくる。
この中に酸化酵素が入っていて、発酵がはじまるのである。
発酵酵素を出すには揉むだけでは足りない。
茶葉にどんどん傷をつけていく必要がある。
で、ワタクシはすりばちに茶葉を放り込み、すりこ木で叩くようにぐりぐりやった。
叩いて揉んで、およそ1時間。
山盛りあった茶葉がこんなに少なくなる。
もう十分茶葉をいじめたような気がするが、まだ足りぬかもしれぬ。
で、土のう用の袋に茶葉を入れ・・・。
それを石で叩く。
叩きつける。
これでもか!というぐらい。
日頃のうっぷんを茶葉にぶつける。
コノヤロコノヤロコノヤロと言いながら(笑)。
いたぶられまくった茶葉は、こんなに少なくなってしまった。
すまん、オレが間違っていた、これからは心安らかにともに生きていこう、と話しかけつつ、優しくビニール袋に入れる。
ここからはいたわりの時間である。
ちなみにこの時点では、濃厚な緑茶の臭いと、すっぱい緑の臭いがする。
とてもこれが紅茶になるとは思えない。
ここから発酵をさせる。
温度は30度ぐらいがいいそうである。
ちょっと気温が低かったので、クーラーボックスにお湯を張り、その中にビニールに包まれた茶葉を入れる。
様子を見つつ3時間半。
まだところどころ緑の葉が残るが、全体的に茶色く変色している。
クーラーボックスを開けた段階で、濃厚な紅茶の臭いがして、おおおおと驚いた。
が、まだ青くすっぱい臭いが残っている。
ちょっと不安になる。
発酵した茶葉をオーブンで炒るように乾燥させる。
ここで初めて熱を加えて発酵を止めるのである。
オーブンの温度を低く設定し、ときどき返しながら、ゆっくりと乾燥させていく。
15分後。
カラカラに茶葉は完全に乾燥した。
キッチンがモーレツな紅茶の匂いに包まれている。
あの青くすっぱい匂いは完全に消えている。
手に取ると、パリパリと音がした。
香ばしく、深みのある紅茶の匂いがする。
これで完成である。
さっそくみんなで試飲した。
写真は、茶摘みイベントの参加者から送っていただいたものである。
われわれと同じタイミングで紅茶づくりにチャレンジし、成功させていたのである。
あえてその写真でご紹介しよう。
サルシカでつくった紅茶は、かなり多めの茶葉をポットにいれてちょうどいいぐらいであった。
香りが強い。
表現としてはおかしいが、まさに紅茶の匂い。
さっきまで緑茶だったのにわずか4時間ほどで変身してしまったのだ。
参加者のメールには次のようなメッセージが添えられていた。
「早速出来た紅茶を淹れてみました。
凄く香りが豊かで、とてもいい紅茶が出来ました。
また今度是非遊びに行かせてもらいます」
いやー、うれしいなあ。
三重県津市美里町平木の茶畑から採れたこの地域唯一の紅茶。
味わってみたいなあ、って方はぜひ秘密基地に遊びにきてくださいね。