銭湯いこにVol.41「定期船でいく志摩の廃銭湯めぐり①」

投稿日: 2015年06月15日(月)18:38

001写真/写真師マツバラ(松原 豊) テキスト/サルシカ隊長(奥田裕久)

海辺ではしゃぐおっさん(笑)。
とても銭湯企画とは思えない写真からスタートなのである。

今回の舞台となるのは三重県志摩市。
そう!
来年サミットが開催されることが決定し、何かと話題の地域である。

サルシカ銭湯企画部のリーダー(写真中央のケロリン桶太郎)は、ずいぶん前から志摩の銭湯めぐりを企んでいたのだ。
しかも、車やバスで行くのではなく、定期船でめぐる。
もう企画を聞いただけでワクワクしてくるのである。

しかし。
事前に言っておくが、いま志摩市で営業している銭湯は1軒もない。
果たしてどんな銭湯めぐりになっていくのか。
参加者もまったくわからない状況でのスタートであった。

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前日、私は仕事で静岡に出かけており、夜は名古屋で宴会。
そのまま駅前のホテルに宿泊。
で、当日、朝7時10分発の賢島行き近鉄特急に飛び乗った。
当然二日酔いのヨレヨレ。

1時間後、家の最寄り駅である津駅に到着。
が、ここでは降りない。
代わりに、銭湯企画リーダーのケロリン、写真師マツバラ、そして最近こっそり銭湯企画メンバーに潜り込んでしまった中谷の父ちゃんが乗り込んでくる。

「あああ、隊長がおったあ!! ホンマにおったあ! あ、二日酔いの顔しとる〜、隊長二日酔いや〜!!」

いきなり車中がうるさくなる。
頭がズキズキ痛む。

DSCF5150左/酔っぱらいの写真師マツバラ、右/酔っぱらいの銭湯評論家ケロリン桶太郎

最近、三重のタウン誌でも銭湯企画の連載をはじめ、ぶいぶい言わせているケロリンと写真師はいきなりビールを開ける。
ふたりは同級生である。
銭湯マニアとカメラマン。
このふたりの偶然の再会が銭湯企画のスタートである。

が、こやつらは、

「ああああ、うまい、朝のエビスはうまい!」
「チーカマちょうだい、チーカマ!」

ずっとこんな調子なのである。

実は写真師マツバラはこの日、伊勢で日の出の撮影であった。
午前2時に起きて伊勢へと行き、日の出を撮影後、この銭湯企画のために電車で津駅にわざわざ戻った。
そして津駅でビールとチーカマを購入し、今度はエビスを飲みながら伊勢方面へと戻っているのであった。
もうワケがわからんのである(笑)。

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そんなわけで、二日酔いの男1名、酔っぱらい2名、前回酔っ払いすぎて反省中の男1名は、終点の賢島に到着した。
ちなみに名古屋からだと近鉄特急で2時間10分。
結構な時間がかかるのであるな。

さて。
志摩市には、主要な駅が3つある。

1つは町の中心である鵜方(うがた)。
いい飲み屋もあるし、ショッピングモールもある。

2つ目は磯辺(いそべ)。
ここは伊勢志摩スペイン村のアクセス駅である。

そして3つ目がこの終点の賢島なのである。

改札を抜けると、すぐさま定期船のりばはこっち、と案内がある。
海のすぐそばにある駅なのだ。

駅前の通りにはお土産物屋や飲食店が並んでいるが、平日の朝せいか閑散としている。

定期船のりばのすぐ手前に乗船券売り場あった。

われわれが乗ろうとしていたのは、あご湾定期船。
賢島から離島の間崎を経由し、英虞湾の反対側の和具へとつないでいる。
他にも航路があったが、それはまたあとで説明することにしよう。

事前にケロリンがいろいろ調査していて、せっかく船に乗るのだから離島の間崎で一度船を降りて島巡りをしてみようという話になっていた。
賢島から間崎まで370円。
その先の和具までは610円。
どうせ和具まで行くのだから、和具まで買っておいて途中下車ならぬ途中下船をすればよかろうと話していたら、事務室にいたお姉さんが「途中下船はできません」という。
それじゃあ間崎までひとまずチケットを買っておくかということになって小銭を出していると、またもやお姉さんが、

「間崎にはチケット売り場がもうないので、ここでその先のチケットも購入してください」

という。
途中下船はダメだけど、その先までのチケットを買えとはどういうことなのだ。
これはいじわるクイズなのか??

ま、しかしここでもめても仕方ない。
なにぶんこっちは酔っぱらい2名に二日酔い1名に反省中1名なのだ。

素直に間崎から和具までのチケット250円を買おうとすると、今度は販売機が反応しない。
ジロリとお姉さんを見ると、さすがに気まずそうに、

「乗船券は船でも買えるので、そちらでお願いします」

といって自分のデスクにそそくさと戻っていったのであった。

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定期船が来るまで30分ほど時間があった。
定期船のりばは静かで、係のお兄さんたちも暇そうであった。
停泊中の船がかすかな波に揺れ、ギイ、ギイと音をたてるだけであった。

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公共の乗り物を利用して旅をしていると、こういう待ち時間がなんとも心地よい。
普段なら入らない店にふらりと入ったりできるし、海を眺めつつ人生について改めて考えることもできる(笑)。

まだ飲み足りないのか、写真師はお店を覗いてばかりいたが、さすがにビールを注文せず、写真を撮っていた。

「偉いぞ、写真師!」

と褒めると、ニャハハハと笑ってカメラバッグから缶ビールを1本取り出した。
あとで船で飲むためこっそり購入していたのだ。
呆れた男である。

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予定時刻になり、定期船が到着した。
さっそく乗り込む。

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さあ、出発進行〜!!!
賢島をあとにして、いざ離島の間崎へ!
わずか10分ほどの船旅であるが、もうワクワクなのだ。

D3B_1314-150610-web-fin左/反省中の中谷のとうちゃん、中央/サルシカ隊長オクダ、右/酔っぱらいケロリン

われわれは屋根上のテーブル席を陣取った。
眺め最高!
潮風も最高!
わずか370円でこんな旅が楽しめるなんて本当最高だ!

昔、道路がまだ未発達だった頃、賢島と和具をつなぐこの航路は、まさに幹線としてたくさんの人を運んだという。
いま道が整備されて乗る人は減ってしまったというが、これは観光にも十分使えるのだ。

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途中、スペイン帆船型エスペランサ号とすれ違う。
特別室や展望室もある豪華観光船で、賢島エスパーニャ・クルーズを運行している。
向こうは英虞湾を周遊して1600円。
こっちは370円。
安くったって気持ちいいんだぞ、やーいやーいと言いつつ手を振る(笑)。

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定期船には、われわれの他は2人の客を乗せているだけであった。
観光で志摩を巡っているらしい。

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カジをとる船長さん。
実はこのあと、何度も顔を合わせることになる。
この日、英虞湾を走っていた定期船はたぶんこの船だけだったのだ。
だからこのあと次から次へと船を乗り継いでいくが、いつも船は同じ、船長も同じであったのだ(笑)。

このおっさん共は船に乗ったり降りたり、一体何をしているのかと思ったに違いない。

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間崎島の浜が見えてきた。
海水浴場のような浜が見える。
浜が白くて美しい。
ワクワクが増す。

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そして間崎島へ到着。
wikiで「間崎島」を調べてみたところ、こうある。

間崎島(まさきじま)は三重県志摩市志摩町和具にある、英虞湾に浮かぶ島。
島名は、志摩方言で暗礁と暗礁の間にある砂浜を「マ」ということから、地形にちなんだ名称であると考えられる。
島は東西に長く、標高は18.5m、リアス式海岸特有の複雑な海岸線をなす。
湾内では賢島に次いで面積が大きい。
和具から4.1km、賢島から3.0kmの位置にある。
集落は島の南西部にあり、116人(2013年4月1日現在、住民基本台帳人口)が暮らす。
真珠養殖とイワシ漁中心とする水産業が主な産業とする。

なんと人口116人の離島。
もちろんここに銭湯などない。

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定期船が出て行くと、港にはわれわれしかいなくなった。
他のお客さんはもちろんのこと、島民も誰一人いない。

次の定期船がやってくるのは50分後。
何も考えずに間崎島で下りてみたものの、いったいわれわれは何をすればよいのか(笑)。

サルシカ銭湯企画部の島めぐりがはじまった。
その様子は次回。