「菊丸の恩返し・津市美里町平木の祗園祭」第330回サルシカ隊がいく

投稿日: 2015年07月22日(水)10:09

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サルシカ秘密基地のある三重県津市美里町平木。
伊賀市との市境にある、小さな山あいの集落で、現在の人口は94人である。

その集落で200年まえから続く祭りがある。
祇園祭。

集落の長老に聴きとり調査をしたところ、
その祭りのはじまりはこんな感じであった。

200年前、集落を中心に疫病が流行り、たくさんの人がなくなった。
そんな中、まったく疫病にかからない家があった。
調べてみると、集落から少し離れたところにある愛宕さんにお参りしている家だけが病から免れていた。
そこで、その愛宕さんを集落に祀り直し、神様に捧げるために、かんこ踊りをはじめたという。
この集落が3人になるまで踊り続けるという約束で・・・・。

それが平木の祇園祭のはじまりであり、かんこ踊りの由来なのであるという。

残念ながらかんこ踊りは、今から50年ほどまえに担い手不足のために消滅してしまった。
が、祭典とみんなで集まって酒を飲み交わす夏祭りは、えんえんと続いてきたのである。

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かんこ踊りはなくなっても、祇園祭は平木にとって年に一度のビッグイベントである。
役員の奥さんたちを中心に、料理や余興の準備が1週間ぐらいまえから行われる。

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祭典の準備も集落のみんなで。
サカキも集落に生えているものを利用する。

われわれサルシカは、今回ある企画を担当させていただくことになり、集落のみんなといっしょにあれこれ準備をしてきた。
その企画とは、昨年、3代目林家菊丸を襲名し、林家染弥改め、菊丸となったあのひとの落語会である!!

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祭典の準備。
こんな昔ながらの光景が平木には残っている。
ここで神様に健康と豊穣を祈祷するのである。

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そこに林家菊丸さん登場!!
この日、平木の夏祭りで落語をするためだけに、1時間半以上かけて大阪からやってきてくれた。

実は菊丸さんは、染弥時代に3回連続でこの夏祭りで落語をやってくれている。
最初は、忙しい菊丸さんにお願いをして、1回だけのサプライズのつもりであった。
が、その時、集落の人が本当に喜んでくれた。
涙を流して笑って喜んでくれた。

「わしゃあこんなに笑ったん、生まれてはじめてやわあ」

そんなおじいちゃんの言葉に心を打たれて、2回め、3回めと続けてきた。

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しかし、菊丸さんの襲名が決まり、いよいよ襲名披露公演がはじまって、いよいよ調整がむずかしくなった。
そして一昨年、昨年と菊丸さんに夏祭りにきてもらうことはかなわなかった。

「襲名をして真打ちになったんや、こんな平木みたいな小さな集落にはもう来てもらえやんやろ・・・」

みんなそう思っていたのだ。

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今年3月に津市の総合文化センターで開催された菊丸さんの襲名披露には、平木からもたくさんの人が駆けつけた。
そのことを菊丸さんは気にしてくれていたのだ。

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「今年の平木の夏祭りはいつでしょうか?
 ご迷惑でなければ、スケジュールを調整して、
 改めて襲名の報告と、襲名公演に来ていただいたお礼にうかがいます。
 お金のことは一切気にしていただかなくて結構ですので・・・・」

春を迎えようとしていた頃、そんなうれしいメールが菊丸さんから届いた。
そして、4回めになる落語会が実現することになったのだ。

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菊丸さんには祇園祭の祭典にも参加してもらい、集落のみんなを喜ばせた。

「ほんまに遠いところ、よお来てくれたなあ」
「わざわざ来てもおて、すまんのお」

そんな声があちこちから聞こえた。

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そして場所を集会所に移して夏祭りのスタート。
かんこ踊りがなくなったあと、こうして集落の人が集まり、宴会をしてきた。
カラオケやちょっとした余興で盛り上がってきた。

しかし、本来ならば、かんこ踊りという芸を神様に奉納する祭りなのである。
そこで古典落語という日本の伝統芸能を演るというのは、本当にありがたいことなのだ。

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いよいよ菊丸さんが登場!!
出囃子はラジカセだし、高座はビールケースを並べたものである。

でもそこで菊丸さんは汗だくになって場を盛り上げてくれた。
落語で笑わせてくれた。

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このみんなの笑い顔。
笑い声が小さな集落に響いた。

人口わずか94人の小さな集落である。
でも、ここには笑顔がある。
みんなのゲンキがある。

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本当に忙しい中、予定を調整してきてくれた菊丸さんに心から感謝します。
またぜひ来てくださいね!!!
平木住民一同、心からお待ちしております!!