サルシカのイベント工事には、残業がつきものである。
しかもそれは通常の仕事の後にやるものではない。
土日連続で工事をやって、両日ともに激しく飲んで、そのうえで月曜日も作業をやるのである。
サルシカにかかわる人間はいったいどうやって生活しているのか。
どんな仕事をしているのであるか!
そんな疑問の声をよく聞く。
が、なぜわれわれは仕事もそこそこにこうして遊んでいられるのか。
隊長のわたくしにも理由はまったくわからない(笑)。
金曜日に山形から三重県へとやってきて、土曜日、日曜日とサルシカ店舗の工事を手伝ってくれた山形のでこさんはまだサルシカ秘密基地にいた。
のんびりトレーラーハウスのソファに寝転がってタバコを吹かせていたので、製氷機の移動を手伝ってもらう。
この秘密基地の製氷機は中古であるが、隊長のわたくしが自腹で購入して設置したものだ。
が。
サルシカ店舗に残されていた製氷機が壊れており、新規に購入するお金もないことから、秘密基地からドナドナになるのだ。
夏の宴会のために、小遣いをはたいて買ったのに、あんまりである。
いよいよでこさんが山形へ帰るというので、女将の寿実ちゃんとM子といっしょに伊賀の松尾でおもてなし。
伊賀のかけそばをすすり、ざるをすすり、そして伊賀のお酒を土産にもって山形への家路についてもらった。
でこさん、ありがとう!!!
レンジフードは毎日磨いてピカピカにするよ〜!!!!
でこさんを見送ってから、女将の寿実ちゃんと私はお店へ。
池山大工がひとりで仕上げ工事をしていた。
その夜。
サルシカ副隊長の同級生でエアコン屋さんをやっている
シンクやガス代、製氷機も入って厨房らしくなってきた。
実はこの店舗をカタチにしていく上で、いくつかの大きな不安があった。
そのひとつが、業務用冷蔵庫と製氷機。
まえのオーナーさんが残していってくれたものが店にはあって、それを使ってもよいことになっていた。
が、壊れていたり、使っている途中で壊れてもそれはあきらめるしかないという約束であった。
製氷機は契約前に確認をしたさいに見事に壊れていることが判明(笑)。
冷蔵庫は電源を入れるとひんやりとした空気が出てきて、よっしゃ使えるという判断のもと、解体工事の間も、内装工事のあいだも後生大事に守り続けてきたのである。
が、ほぼほぼ店の内装が出来てきた頃、その冷蔵庫のメーカーのひとがやってきて、「その冷蔵庫ちゃんと動きましたか?」などと不安なことを言うのだ。
話を聞いたところ、その冷蔵庫は10度程度にしか冷えず、とても野菜や肉は冷やせないので、前のオーナーはワインセラーとして使っていたというのだ。
まさかまさか。
慌ててテストをしてみると、あろうことかどれだけ待っても10度にしか冷えない。
外気温より高い。
修理を依頼すると15万ほどかかるという。
ひえええええ!
なんてこった!
が、見捨てる神あれば救う神あり!
女将の寿実ちゃんの知り合いが、厨房器具を安く売ってくれる業者を紹介してくれるという。
しかも新品!!!
で、予算は大幅にオーバーしたものの、なんとか店舗プロジェクトを継続することができたのである。
が!!!
まだ「が!!!」があったのである。
それは・・・店舗運営には欠かせない、あれ、エアコンが「う・ご・か・な・い」という緊急事態。
業務用のエアコンを購入、交換なんてことになったら、もうそれこそ予算オーバーで、開店まえに破産、閉店である!
そんなとき、サルシカ副隊長のキヨちゃんの同級生が、エアコンのメンテをやっているというので駆けつけてくれた。
リモコンの不良の可能性あり。
それを交換するだけでOKならば、大したお金はかからないと言ってくれたのだ。
そしてこの日の夜。
キヨちゃんの友人が新たなリモコンを持って交換にやってきてくれた。
これで動けばOK!
ダメなら開店前に閉店!である。
運命の分かれ道。
スイッチオン!
ぶおおおおおおおおおおお!!
すぐさま温風が吹き出したではないか。
トラブルはリモコンのみであった。
それ以外は無事に動いたのだ。
うおおおおおおおおおおお!!! やったああああ!!!
そこにいたみんなで拍手をして喜んだ。
店舗のデザインと照明を担当している、光の魔術師こと、舞台ゲージツ家の鳴海さんは、完成したカウンターうえの照明のとりつけに入る。
いよいよここまできたのだ。
光の魔術師は、光の陰影、色彩にとことんこだわる。
やさしく、しかしクリアに、この店の料理を浮かび上がらせるのだ。
いくつものLED電球をテストし、いい色のものを探していく。
ここまで光にこだわった店が、三重県にあるであろうか。
わたくしは自身を持って「ない!」と言いたい。
池山大工と女将の寿実ちゃんは、唯一のテーブル席の仕上げに入る。
まずは何よりテーブルをつくらねばならない。
これも、津市美杉町の三浦林商さんからいただいた杉板を使ってつくる。
居心地のよい高さを考える。
ああでもないこうでもないと言いながら。
さて。
別の日になって・・・。
サルシカ秘密基地に、美里の修理請負人である水町さんがやってきた。
彼は電気製品からエンジン関係まで何でも自分で直してしまう。
そこで、店にあった壊れた製氷機が直らないかチャレンジしていただくことに。
いまや秘密基地の製氷機はお店へ行ってしまっている。
これが直らねば、秘密基地にあの潤沢な氷はやってこないのである。
数時間におよぶ水町さんの格闘の結果・・・・。
なんとまったく動かなかった機械部がすべて動くようになった。
が、ガス抜けか、冷媒関連のトラブルでいつまでも氷は出来ず・・・・。
残念ながらそこで諦めることになった・・・。
いいんだいいんだ。
がんばってお店で稼いで、秘密基地の製氷機を買い直すのだ。
中古でぼろくて安いのを買うんだ。
ちくしょー(笑)。
隊長のわたくしがそういう悲しい声をあげている頃、店はちゃくちゃくと仕上がっていた。
ガスの湯沸し器やガスレンジも入り、厨房の火をつかうゾーンはほぼ完成!!
そして新品で買った冷蔵庫が搬入!!
壊れていたもともとのやつはすべて冷蔵庫だったけれど、今度のはひとつの扉だけ冷凍庫!!
しかも信じられないぐらいの値段で買えた!!!
ありがたや、松阪の新橋さん!!!
コールドテーブルという冷蔵庫を厨房内に設置。
冷蔵庫の上が作業台になっているのだ。
入口のそばにワインや日本酒を冷やす冷蔵庫も設置。
ドアを開けると、いきなり冷蔵庫なのであるが、場所がないのだから仕方ない。
だいぶ店らしくなってきた!!!
さあ、いよいよ光の魔術師によって、われわれのお店が生まれ変わる。
まさに光の奇跡!
次回につづく