第57回「アンチョビ」

投稿日: 2016年03月22日(火)13:52

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メグーです。
魚をさばくことが苦手です。
頭をたたき落とし、内臓を取り出して、三枚におろす。
血で汚れたまな板、生臭いあの匂い、じっとこちらを見つめる首ちょんぱされた魚の目・・・。
こんなにも魚をさばくのが苦手な私がなぜ・・・?
今回のめぐみごはんは、カタクチイワシ100匹斬り。アンチョビ作りをお送りします!

発端は昨年末。
夫が「アンチョビ作りたいんですよねー」と私の父に言ったことから始まります。
私の父は、商売で魚を扱っており、毎日魚市場に出入りしています。
父によると、アンチョビを作るような小さなカタクチイワシは、スーパーには出回らない。
欲しければ、知り合いの漁師さんに頼んで購入することはできる、との事。
夫が「あー、じゃあ作りたいんで、手に入りそうだったらお願いします」と言うのを「へー、作るんだー」と右から左へ聞き流しておりました。

そして年の瀬がせまった12月某日。父から一本の電話が。
「手に入った。今から届けに行くぞ。」
え?今から?今、夫は出掛けてていないんですけど。
「新鮮なうちに処理せなアカンぞ。とにかく行く」
そして15分後。発泡スチロールいっぱいのカタクチイワシが眼前に。

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忙しいから・・・と帰ろうとする父の腕をつかみ、お手本を!どうやってするのかお手本を!!と頼み込みました。
「お前は魚もおろせやんのか!?」一体、自分の背中の何を見て育ったのかとガックリしながらも、それはそれは鮮やかにお手本を見せてくれました。
「手でやってもいいけど、こんだけの量をするとなると、雑やけどこっちの方が楽だろう」と見せてくれたお手本のやり方は、魚の背を手前に置いて、頭を切り落とす部分に包丁を入れ、骨に突き当たったところで、骨に沿って包丁を滑らす。
裏表を返し、同様に骨に沿って包丁を滑らして終わり。
「まあとにかく鮮度が落ちやんうちに、急いでやれよ」と言い残し、颯爽と去っていく父。
自分以外だれもいない家の中、カタクチイワシと向き合ってとりあえず電話しましたよね。
夫に言いたいことはただひとつ。帰ってきてはくれないか、と。
「午前中は帰れないよ。まあ、頑張って。よろしく」と返事を受け、もうこうなればやるしかない!
イワシ約100匹超の三枚おろし!いざ!!

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やってもやっても終わらない。
氷に浸かったカタクチイワシを持つ手がかじかむ。
ずっと立ちっぱなしの作業なので、腰も痛くなってきた。
3分の1くらいの量をさばいたあたりから、気がつけば「生魚、気持ち悪い」といった感情は消え去っていたように思う。
ただ目の前の魚をさばくのみ。さばくべし!さばくべし!さばくべし!と、すっかり修行モード。
1時間後、夫が帰ってきた時、状態は既にZONEへ突入。
「ここは私に任せて。あなたは塩を用意して」と指示を出す。
自分で言うのもなんですが、こんなに頼もしい私、見たことない!

結局、全てのカタクチイワシを3枚におろすのに、2時間以上はかかっていたかと。
その後は、水でさっと洗い、キッチンペーパーで水けをふき取り、塩をまぶしながら重ねていきます。

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あれ?あんなに頑張ったのにこの量?
タッパーを3つ用意していたのに、1つで全然事足りました。
後は、この状態で1~2か月放置します。
冷蔵庫で放置するやり方と、常温で放置するやり方があるようで、間を取って(?)我が家で一番寒い場所=脱衣所に置くことに。
家で一番寒い場所が、脱衣所だということがとてもつらいのですが、残念ながら事実です。
風呂上りの脱衣所にいつもアンチョビ。
思春期の娘がいたら、きっとものすごく嫌がるであろう家、そう、それが我が家・・・。

そして2か月がたちました。
塩に浸かったカタクチイワシを取り出し、3パーセントの濃度の塩水に30分ほど浸けて塩抜きをします。
1リットルの水に30gの水を溶かして、イワシをどぼーん。

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水けをキッチンペーパーでふき取って、煮沸消毒した瓶に詰めていきます。文章にするとカンタンだけど、すごく面倒くさい。一枚一枚、箸でつかむ手がつりそう。

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ちなみに枚数を数えたら、230枚ほどありました。一枚一枚、瓶にくるくると詰めていく。
アンチョビが1まーい、アンチョビが2まーい・・・。気の遠くなるような作業を経て、最後にオリーブオイルどぼどぼ。

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やったー!アンチョビ作ったどー!!

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ここから更に1~2か月くらい常温で保存し、熟成させたらできあがり。
食べられるのは春になってから。
甘い春キャベツとアンチョビでパスタ作るんだ!
新じゃがとニンニクと一緒に炒めて、パセリ振って食べるんだ!!うひひひひ!

ちなみにアンチョビを漬けていたお塩の上澄みは、ナンプラーとして使えるようです。焼きそば作りに、ソースの代わりにナンプラーを使うだけで、そこはもう微笑みの国タイランド。パッタイもどき最高。

最後になりましたが、アンチョビを作ってみたいけれど、アンチョビ用のカタクチイワシが手に入らないという方の為に。
魚市場にカタクチイワシの購入について問い合わせたところ、いつ入荷するかわからないし価格もなんともゴニョゴニョゴニョ・・・と歯切れのわるいお返事。
ウームと思いつつ、続いて最近お魚コーナーに力を入れている某スーパーに問い合わせたところ、二つ返事で仕入れは可能とお返事をいただけました。
「価格については、入荷してからでないとはっきりとしたことはわからないが、大体の金額は調べて返事することはできます。前払い等は必要なく、入荷したら連絡するので、その時に支払ってもらったらいいですよ」との事。
作りたいけど、手に入らない・・・とお悩みの方。お近くのお魚屋さんやスーパーに問い合わせてみるのも一案です。

思ってたより手間はかかりましたが、春の訪れがより一層楽しみになるアンチョビ作り。
みなさまのもとにも、素敵な春が訪れますように。