写真/トイレの前田さん 文/サルシカ隊長
さて、ゴムボートで三重県津市の雲出川をくだるレポートの後篇である。
高級ゴムボートのパックラフトは思っていた以上に安定性、機動性、直進性に優れ、中谷の父ちゃんと隊長のワタクシは非常に気分を良くし、ゴキゲンにパドルを漕いでいた。
朝7時から川を流れはじめて30分。
流れが急になる浅瀬がいくつかあったが、ケツを岩でごりごりした以外は無事に流れていた。
川幅が広くなり、流れが緩やかになる。
大きな岩に気をつければケツを打つこともなかった。
本格的にリラックス。
パドルを漕ぐのをやめて、ただただゆっくり流される。
「あ、そういえば前田さんがいない」
さっきまで前田さんは川に沿って伸びる道を車で並走していたのであるが、その姿も車もない。
「ありゃ、どこ行っちゃったんだ? これから橋もあるし、川も広がってるから撮影ポイントなんだけどなあ」
「ちょっと待って連絡してみる」
中谷の父ちゃんはiPhoneを取り出して前田さんに電話。
船に乗りながら携帯で電話ができるって、なんともすごい時代になったもんだなあ。
しかも中谷の父ちゃんのiPhoneは防滴だけど防水ではない。
果敢なチャレンジャーなのだ(笑)。
「あ、前田さん?
パックラフト2号の中谷です、どうぞ」
なんだか無線機のようになっているのである。
「えー、われわれはチェックポイントの鉄橋まであと300メートルのところにきてます。
前田さんも至急ポイントにてカメラの設置をよろしく、オーバー」
もうすっかり気分は探検隊なのである。
でも隊員はもはや初老の域に入っている56歳である(笑)。
「あまりにも遅いからさあ、もう先に行っちゃったのかと思って川下までいって戻ってきたんだよ〜。
いったいどこで何してたのさ」
ブツブツ文句を言いながらシャッターを切るカメラマン前田。
「はい、ふたりこっちを向いて〜、撮るよ〜。
はいチーズ!」
いやいや記念写真じゃないんだから!
記録写真なんだからチーズはいらないの!!
「もうちょっと笑顔を見せてよ!
もう1回撮るよ!
はいチーズ!」
仕方なく、中谷の父ちゃんとわたくしは前田さんの方を見上げて「ニッ」と笑う。
すると今度は、
「隊長、中谷さん! ちゃんと前みて! ほら岩がすぐうしろ!!」
カメラを見ろだの前を見ろだのうるさいのだ。
いいの!
船は丈夫なのことがわかったから、岩にぶつかるぐらい平気なの!!
「もう漕ぐのやめた〜!!!!」
おいちゃんふたりは船のうえで仰向けになって寝る。
本当はビールでも飲みたいところだけど、なんせまだ朝の8時にもなっていないし、この川下りが終わったら仕事だし(笑)。
「は〜、幸せ〜!! もうずーとこうしていたい!!」
「労働者諸君! ご苦労さん! 急いで会社にいきたまえ!!」
「われわれは急がず焦らず、川を流されていくのだ!!」
「ワハハハ!」
みたいなことを言っている。
まったくダメなおじさんふたりだ。
本当にうつらうつらしていたら、水の流れが早くなっている。
ザザザザザと、水の打ちつける音が聞こえてくる。
「やばくね!!」
慌てて身を起こし、コクピットにおさまる。
そして前方をみると、結構激しい瀬が見えている。
「ぎゃ〜〜〜!!!!!」
完全に油断していたので、思い切り激しく、危ないコースへと突入してしまう。
途中で完全に岩の上に乗り上げてしまい、手で必死に船を動かす。
が、水が勢いよく流れてくるので、船がひっくり返りそうになる。
結構ピンチ。
が、難易度からいったらもう超低レベルの瀬である。
しかも安定度抜群のパックラフトでチンしたら、もう恥ずかしくて外を歩けないのだ(笑)。
なんとかピンチ脱出後、今度は本当に川の流れがなくなる。
先に堰があるのだ。
1キロぐらいの距離をひたすら漕ぐ。
流れに身をまかせてきたわたしたちにとってそれは、アシストつきの自転車から普通の自転車に乗り換えたような状況(笑)。
「今度からさ、バス釣り用のスクリューでも持ってこようか」
「そういやさ、草刈機にスクリューつけると、めっちゃ早く船が走るって聞いたよ」
「あ、それはいけそうだなあ」
「今度やってみる?」
「船舶の免許とかいらんよね」
そんな馬鹿な話をしつつトロ場を抜け、堰に到達。
水が少ないのでさすがにそのまま乗り越えられず、一度ラフトを下りて、人力で運ぶ。
この堰を超えたら、もうすぐゴール。
最後の最後に結構な瀬がある。
もう歩いていけばいいのに、われわれは果敢にチャレンジするのだ。
「うひょ〜〜〜!!!!」
と、雄叫びを上げながら激流くだり(笑)。
堰からわずか30メートルほど下がきょうの終着点。
石橋の沈下橋のところでゴール!!!
亀さんのようになって沈下橋をいく中谷の父ちゃんと隊長のわたくし。
たぶん沈下橋って津にはここだけじゃないかなあ。
欄干もなく、軽自動車が通るのが精一杯の道なのに、かなりの車が走る。
どうやらこのあたりの抜け道になっているようだ。
ちなみに今回の出発ポイントとゴールポイント。
経路はこちらのGoogleマップをご覧ください。
随分短いけれど、ま、試し漕ぎってことで(笑)。
片付けも空気を抜いて畳むだけだからあっと言う間。
前田さんの車にすべて放り込んで、スタート地点に戻る。
本当は昼めしを食べて解散の予定であったが、この時点でもまだ午前9時半(笑)。
モーニングだよ。
というわけで、近くのレストラン白山へ。
モーニングを食べるつもりが、なぜか長崎ちゃんぽんを注文。
だってここの名物だもん。
しかも。
前田さんはもうひとつの名物であるイタリアンを注文。
朝からしっかりメシを食って、さあ片付けて仕事だあ(笑)。
こうして、
サルシカ新企画「ゴムボートで三重の川をくだろう」第一弾、雲出川編は無事終了。
次はどの川を下ろうかなあ。
いっしょに川を下りたい人、撮影およびドライバーとして協力してくれる人求む!
また予定はサルシカおよびFacebookにて連絡します。
ただし、
結構直前に決まるのでよろしくね(笑)。