Photo;Jun Kano Txt:Hiro Okuda
[googlemap lat=”34.393299″ lng=”136.40969″ width=”400px” height=”300px” zoom=”10″ type=”G_NORMAL_MAP”]三重県多気郡大台町[/googlemap]
本州一の清流といわれる宮川。
三重県が誇る河川のひとつであり、多くのカヌーイストを魅了してやまない川である。
その上流の町に、たったひとりで農業に挑戦している女性がいるとの情報が、サルシカ取材班に入った。
彼女はすでに1児の母であり、しかも現在妊娠中。
しかしいつも元気に田畑で働いている、という。
「なんかスゴイ女性なんじゃないか・・・」
「これは行かねばなるまい」
というわけで、今週もまた、フォトグラファー加納と隊長オクダのヒゲハゲ&デブコンビ(通称ゲゲゲコンビ)は、取材に出かけたのである。
*今回の取材は、先週から募集している「サルシカ取材班」への応募・連絡によるものです。みなさまからの更なる応募、お待ちしております。
待ち合わせ場所の畑に、期待通りの軽トラ&作業着で登場の実華さん。
「自分の畑と軽トラを持つのが学生時代からの夢だったんですよ!」
彼女はそういって、いきなり笑わせてくれた。
遠藤実華さん(35歳)。
女性ひとりで農業をやっていると聞いて、かなりストイックな人かと思ったが、いかにもお人よしで明るい人だ。
でも話す言葉のひとつひとつはとてもしっかりしている。
ロジカルといってもいい。
たぶんすごく頭のいい人なのだろう。
しかし農業をはじめたキッカケは明確ではない。
「実家は農家ではないです。いつのまにか農業をやりたいと思っていたんですよね・・・フト気づいたら、こうなっていたって感じですね・・・」
彼女は三重大学農学部を卒業。
2年ほどアルバイトで農業を学び、25歳で自ら農業をはじめる。
その後、同じ大学に通っていた旦那さんと結婚。
「結婚しても農業やめないからね!」
「いいよ」
「そういうことで結婚したんで、私のやっていることを理解してくれていると思います。休みの日は手伝ってもくれますし・・・」
現在、実華さんは田畑を借りて農業をしている。
一町、枚数にして20枚ぐらいの田畑をひとりで切り盛りしている。
「自給のためにやってるんですか?」
という私の質問に対し、彼女はきっぱり答えた。
「いいえ、商売としてやってるつもりです。
でも正直、利益が出るような状況ではありません。
失敗もありましたし、今は試行錯誤の状態です」
実華さんはコメや野菜を無農薬で育てている。
手法はアレコレ試行錯誤しているが、無農薬というところは一貫している。
「手がかかるし大変ですけど・・・当たり前のことですから」
実華さんには気負ったところがまったくない。
彼女にとっては当たり前のことをやっているだけなのだ。
農作業用の帽子がよく似合う。
「前は恥ずかしかったんですけど・・・やっぱりコレが農作業には一番いいんですよね」
「恥ずかしいなぁ、いつもはもうちょっと草を刈ってるんですよ!」と実華さん。
田んぼの草は手で抜く。お腹が大きいのでかがむのが大変そう。
この日は30度をこえる猛暑。
「大変な作業ですけど、楽しんでるんで健康にも胎教にもいいはずです」と笑う。
実華さんがつくった赤米と大豆。
「去年はホントに大失敗したんですよ!」
あぜにもたれて一服。
「この畑や田んぼの風景を見てるのが好きです。癒されます」
「妊娠中ですけど、農作業やってて大丈夫ですか?」
なんか聞くの嫌だなぁ、と思ったことをあえて聞いた。
「大丈夫ですよ。
確かに重いものは持てないけど、小分けにして持てばいいわけだし、工夫すれば問題ありません。
それよりも好きなことを楽しんでやってるんで、健康にも胎教にもすごくいいんじゃないかと自分では思ってます(笑)」
好きなことを楽しんでやってる・・・。
素晴らしいことだ。
やろうと思ってもなかなか実践できることではない。
でも彼女はやっている。
ほんの少し農作業をしているところを見せてもらっただけだけど、心から農業が好きなのだと伝わってくる。
全身で楽しんでいるのがわかる。
体は疲れるだろうし、大変だろうけど、彼女は幸せなのだ。
「畑で汗を流して働くと、ホントにごはんがおいしいですよ。
もうそれだけで幸せです(笑)。
「最近ヤマビルがいるんで気をつけてくださいね」
実華さんはさりげなく言う。
「ヤ、ヤマビルですか?」
「ええ、吸われると結構血が出ますけど、まあそれだけですし、あとでちょっと痒くなるぐらいですから」
「は、はい・・・」
ヤマビルにビビった私は実華さんの後に続いてあぜを歩くのである。
続いて実華さんの家にお邪魔させていただくことにした。