「ポポ君、限界集落のぶしなに出店ス!」第649回サルシカ隊がいく

投稿日: 2018年01月08日(月)08:25



長野県長野市から車で1時間ほどにある限界集落・信級(のぶしな)。
そこにはポポ君の友人が昨年夏に発作的に始めた食堂がある。
ラーメン好きの村人の夢をかなえるべくポポ君が立ち上がった!
その顛末記を食堂オーナー兼出版社社長の寺島純子・通称姐御による文章でお届けします。






師走に入ってキーンという冷え込む夜が多くなった12月9日、はるばる三重県から軽トラで、しかもこの高速の時代にわざわざ下道を通ってポポ君がやってきました。

ここは信州が誇る限界集落中の限界集落・信級(のぶしな)。人口たった120人のこの地区は、水道も引かれてなく、信号も、お店も、ほんとーにいわゆる現代文明的なものは何もないのであります。
そんな村に忽然とできた「食堂かたつむり」は、詳しい生態も明らかにされていないポポ君にとって、似たような生態もしくは亜種と思われる人々が集まってくる部族のサンクチュアリ的な場所らしく、食堂ができる前から数えると3回もポポ君は出没しているのでありました。






その日もキーンというか金金というか筋筋に冷え込み、村へ続く断崖絶壁の祖室渓谷は、真っ白に雪化粧しておりました。

「オハヨーッ!!」
ポポ君、日本語にてご挨拶。
「さび~ね!」
途中、暖房が効かなくなった軽トラをだましだまし走らせてきたポポ君は、下半身縮み上がって到着でございます。
「おお~!待ってたよ~!」
すでに食堂かたつむりには、ストーブ番の石坂アニキ、厨房には「かたつむり」の隠し玉・清美ちゃん、そして姐御こと私・寺島がポポ君の到着をいまかいまかと待ちかねていたのであります。
そう、ポポ君がやって来たのには理由があるのでした。

なんと、翌10日は一日だけの「ポポ君ラーメン」開店の日。
なにせ、この信級でお店はこの「かたつむり」一軒だけで、ラーメン屋さんに行くには国道19号線を北上し、信州新町か長野市まで行かねばなりません。
村の人に「何が食べたい?」と聞くと二人に一人は「ラーメン」という答えが返ってくる、ここは「ラーメン過疎地」なのでありました。
ゆえに「信級で本格的なラーメンが食べられるん?」「ええ~ポポ君が!」とずいぶん前から村人の期待はもっこり膨らんでいたのであります。






しかし、あまりにも「ポポ君ラーメン」の期待が膨らみすぎて、いざ12月に入ると「ほんとに来てくれるのかな」「信級でラーメンなんて無理なんじゃ…」と疑心暗鬼の空気がたれ込めておりました。
そんななか、荷台に寸胴やらフライパンやらガスコンロなどを積み込んで、颯爽とポポ君がやってきたのであります!!
部族たち、懐かしい血族に再会したかの如く到着を歓迎。






さっそく石坂アニキと黒生ビールで乾杯であります。
食堂にはランチタイムのお客様。といっても寺島の母&おば&ご近所さん、イノシシ肉大好きの解体屋の石井のおっちゃん。
ポポ君は、おこたにあたって旅の疲れをまったりと癒しつつ……。
とそのとき、なんと一宮ナンバーの黒いプリウスが到着。






なんと、鼻笛つながりのヒロシさんが、日にちを一日間違えてやってきた~!
トランクから下ろしたのはケース入りのギター。ストーブの横の長椅子に座って、ポロンとギターをつま弾きながら、歌うは昭和のフォークメドレー♪♪

「♪ は~な~よめは~ 夜汽車~に乗って~嫁い~で~ゆ~くの~…」
いや~寺島ドンズバリのドストライク!歌詞カードもないのに昔の歌はなぜか歌える脳の不思議。
まるで居酒屋の「流し」のごとく、次から次へと歌って揺れて、歌声酒場と化して行ったのであります。
お~い、ラーメンの仕込みはどーすんだ~い!





解体屋のおっちゃんが「寒ブリもらったんだけっど、いるか?あげるわ」とミカンでもあげる口調で、脂の乗り切った能登の寒ブリをトロ箱ごと置いてってくれたり、ご常連のイチローさんが日本海の親不知(おやしらず)まで行って買ってきてくれた「あんこう」もあったりで、夕ご飯はすでにして冬の海の幸まつり!
こういうのがみんなタダでやってくるのが「食堂かたつむり」のすごいところ。
いやいやいや、ラーメンなんかより、こっちを売ったほうが儲かるんじゃないの?と言いたいのですが、こういう美味しいものは自分らで食べちゃうんであります。
お~い、ラーメンの仕込みはいつやるんだ~い!

夜の宴が始まるころ、この時期だけ来てる鉄砲撃ちの田中さんも帰ってきて、ポポ君はラーメン仕込みの前に、ブリを卸して刺身にする、という和の板前になっておりました。
「刺身にする?いいよ~!いいブリだね~」
根っからの料理好きで、こんな見事なブリ見たら捌かずにはいられないポポ君。
このとき、フライパンでは鶏の手羽が炙られ、持参の寸胴鍋では大量の鶏ガラが煮込まれていたものの、いまだスープ完成には至らず。
明日の11時30分開店までに、果たしてスープは間に合うのか~!
という状況のなか、「これ食べてみる?うまいよ~」とか言って、手羽やらガラの周りのこびりついた肉やらを振る舞い。
調理途中のつまみ食いほどうまいものはないよね~と涙を流しながら骨にむしゃぶりついていたのであります。






そんななか、ポポ君は食堂のストーブ番長にして薪づくり・薪積みアーティストでもあるイチローさんちにいって、薪で沸かしたお風呂に入ってくるという、H難度の離れ技までこなしていました。
部族同士の強い結束!一人暮らしのイチローさん、薪ストーブと薪お風呂は毎日焚くのが日課です。
4時ごろ歩いて焼酎飲みに来て、家に帰ってお風呂に入って7時には寝てしまう。
それで「だめだ~。寝らんねえ。2時に目さめちまう」と悩んでいますが、「十分寝てるから。寝すぎてるから」とみんなに言われております。

お風呂だって一人で入るだけの為に焚くのはもったいないから、誰か入らせてもらうといいよねってことで、ポポ君におすすめしたところ、イチローさんけっこう張り切ってくれたんであります。
ポポ君は、あの薪の美しい積み方を見て、ひとり暮らしのイチローさんの深いところまでわかってしまったのかもしれません。
ポポ君のやさしさが冷え込んできた信級の夜に沁みていきました……。






一人二人と飲んだくれて脱落していく中、スープは深夜に完成した模様。
かたつむりの隠し玉・清美ちゃんの奮闘により、なんとか開店には間に合いそうな見通しとなってきました。






さあ、当日。昨日一日間違えて来ちゃったヒロシさんも起きてきて、当日のメニュービラを書いてくれてます。
まるで書き慣れてない黒マジック・カレンダー裏書きのメニューですが、不思議な味わいがあり、「おすすめ」の下の相合傘には、ヒロシさんの時代感が丸出しとなってもう味がしみしみ。土壁のお店にどんぴしゃりとはまりました。






10時、開店まで1時間半もあるというのに、大幅フライングのお客様ご来店。
ブルーベリーでお世話になってる羽田さんご夫妻です。
まずは生ビール3杯!ちくわ磯辺揚げやらあぶりチャーシューやらをつまみに、ゆったりとラーメンまで召し上がり…とここまではまだ余裕をかましていたのですが、コタツのお部屋に植野君ファミリー、新町から中澤薬局さんなどなど、「売れちゃう前に行かなくっちゃ」組のお客様がつづき、そっから先はもう怒涛の如くの来店ラッシュ!みんな家族でくるもんだから、席が埋まるのが早い早い。
ピーク時にはオーダーだけいただいて外の車の中で待っててもらうはみ出し状態。50食はあっという間に完売となったのでありました。






濃厚ながらもあっさりとして全部飲めちゃう鶏白湯スープに、ちょい太麺のこだわりの麺が絡んで絶妙の味。
そこに原材料費のほとんどを注ぎ込んだ柔らかいチャーシューと刻みネギとパリパリの海苔。ほぼ全員がスープまで完食してくれたのが何よりの評価です。








イチローさんも娘さんと孫3人とでご来店。これからパン屋さんを再開するベッカライ麦星の鈴木君と佳子ちゃん、スティーブンなっちゃん一家、それからそれから……もうほんとにたくさんの人が来てくれて感激!もしお客さんこなかったらどうしよう、という心配は、開店早々からぶっとんでしまいました。






そしてなんと!鈴鹿から黄色いスポーツカーに乗ってポポ君のお友達の池田ご夫婦も駆けつけてくれました。
手作りのおいしいお菓子までもって、こんな山の中まで。ほんと奇特というか、善人というか、アホというか…ありがたさの極みです。
これもポポ君の不思議な人徳でしょうか。

ポポ君ラーメンIN信級かたつむりは、かくして大成功のうちに終わりました。
「またやって~」「また来ま~す」そんな恐ろしい会話をお客様と交わしているポポ君。
「これからは日本全国、ラーメン屋さんのないラーメン過疎地を回ったら? フーテンのポポとして」
「あ、いいね~!フーテンのポポ!」

すっかり「フーテンのポポ」が気に入った様子のポポ君。
行く先々で恋をして、美人の彼女に見事に失恋し、またまた旅に出ていくポポ。
なんだか本当になりそうで、ちょっと怖い気もしますが、食堂かたつむりに、新しい名物が生まれたような気がします。
新たなるラーメン過疎地を探して、ポポ君ラーメンの旅はつづくのであります。

本編おわり


ここからは、ポポ君こと中谷のお父ちゃんが書きます。

世の中にはそっくりな人がいるもんだ。
おもしろい文章を書く
スキあれば人をそそのかす
限界集落に基地を作る
もうお判りですね、姐御とサルシカ隊長は姿性別は違えど、笑ってしまうほどその行動性癖はそっくりなのです。

そんな姐御が生まれ故郷に立ち上げた「のぶしなカンパニー」。
ほんとうに素晴らしいところです。

「なんにもないから、なんでもある」

何日か滞在して家に帰ってくると姐御のことばが胸にすっと落ちました。

食堂かたつむり
営業時間 11:30から17時
金曜日夜はバルを開催
定休日は、日曜日、月曜日
1月から3月は、金曜日、土曜日のみ営業
長野県長野市信州新町信級字中村5554-1
のぶしなカンパニー内
電話080-5143-5554

信州へご旅行の節はぜひお立ち寄りを!

のぶしなカンパニーの情報はこちらからどうぞ。

https://www.nobushina.com/