物置の奥にしまいこんでいたカニカゴを引っ張り出してきたのである。
ついにカニカニシーズン到来なのだ!
海にはワタリガニさんが、そして川にはズガニさんが、カサカサ、サカサカと横歩きして「ニカニカ」笑ってサルシカ隊を待っているのである。
が、ここのところずーっと雨だった。
愛知県の方では大洪水になるほど、ドカンドカンと雨が降った。
家の近くの川もコーヒー色の濁流と化し、カニさんもニカニカ笑っているどころではなくて、どこかに避難しているようであった。
←出発前にオニギリを食うM子。なぜだ?
まあ、つまりなかなかカニとりにいけなくて、悶々としていたわけなのである。
で、雨がまだ降り止まのにカニかごを引っ張り出して出かけちゃったわけですね。
今回の出撃隊員は、のだっちとキヨちゃん。
「カニカニカニカニ」とうるさいM子。
そして私の4名である。
のだっちは山にいるときはクワガタ名人だが、海川にくるとカニ名人、エビ名人になる。
まったくもって頼りになる男なのである。
のだっちが漁師さんやカニカニマニアの人から仕入れてきた情報によると、
「今年は気温と水温が高かったので浅瀬にあまりいない」
「ワタリガニは普通のカニかごではあまり獲れない。専用のを使ったほうがいい」
「水が濁ってるとあまり獲れない・・・・」
とまあ圧倒的な不利な話ばかり。
だからといって諦めない(いや諦められない)のがサルシカ隊である。
干潮の時間に、なるべく遠くにカニかごをしかけた。
これで一晩置いて、翌日の干潮の時間にあげにいくのだ。
今回仕掛けたカニかごは2つ。
むふふふふ。
M子じゃないけれど、楽しみで楽しみでたまらないのだ。
8月31日(2日目・・・・)
カニカニ大作戦2日目。
いよいよカニカゴ引きあげの日だ。
のだっち隊員、キヨちゃん隊員、そして隊長の私の3名は、朝10時、おごそかに吉川自動車駐車場に結集し、そしてカニカゴが静かに海底に沈む日本鋼管へと車を走らせた。
ハラハラドキドキしつつポイントへと向かう私たち。
この緊張感、このワクワク感はいったいなんだろう。
我らオッサンたちの濁った目が、この時ばかりはキラキラと光り輝くのである。
隊長の私は昔、いまは亡き父とここにきて、バケツ一杯のワタリガニをとったもんです。
当時は本当に簡単に、ほいほい獲れてた気がする。
親父の腕がよかったのか、それとも海がまだまだ豊かだったのか。
まあたぶん後者であろう(笑)。
1つめのカゴをあげると、小さいながらもワタリガニが1匹はいっている!
やったぁあああ!
もうひとつのカゴに期待をかける。
わくわく、どきどき。
いやあ、マジでたまらないこの瞬間!
打ちひしがれているのだっちとキヨちゃん。
この例えようもなくガックリくるこの気分は何でしょう。
さっきのワクワクは一瞬にして飛散し、どんよりした気分に包まれます。
のだっちの目にはうっすらと涙すら浮かんでます。
今日、我われはカニに負けたのです。
あまりに悔しかったので、改めてカニカゴを沈めてきました。
敗者復活戦です。
我われはしぶといのです。
まあ、ということは、明日もカニカニ作戦は続くわけです。
餃子!このあと追加で5人前!
から揚げこれで1人前!
あとで更に追加!
で、運転手のだっちに「すまんすまん」と言いつつ、私とキヨちゃんは生ビール!
いったい私のダイエットはどこにいったのでしょう!
しかし、いまは戦いのさなかに、ダイエットだ、キャベツだ、などと言ってられぬのだ。
がっつり肉を食い、ビールを飲んで勝負だ!
カニカニ大作戦はまだまだ続くのである。
なんたって我らはサルシカ隊!
しぶとい・・・いや、しつこいのだ!!
海がダメなら、川があるさ、と、今度はズガニ捕獲のために秘密の川にカニカゴを仕掛ける!
ぬはははははは、白黒キッチリつけてやるぜぇ、なのだ。
9月2日(3日目・・・・)
カニカニ大作戦も本日でついに3日目。
きのう海に2つ、川に3つのカニカゴをしかけた。
で、まずは3日連続通っている海の日本鋼管から・・・・。
今日は月曜。
さすがに、のだっちやキヨちゃは来られないので、仕事時間の調整が可能なM子と私で出撃。
で、結果であるが・・・・。
ゼロ。
衝撃の収穫ゼロ!
しかもカニカゴ1つが波でテトラの下に押し付けられて、どれだけヒモを引っ張っても、位置を変えて踏ん張っても引き揚げらず、放棄。
カニは獲れないわ、カニカゴは失うわ、もう踏んだり蹴ったりの結末なのである。
続いて川に移動。
その途中、カメラ屋さんからフラフラと出てきたフォトグラファー加納に遭遇。
無理やりズガニ引き揚げに付き合わせる。
だからここからフォトグラファー加納の写真に切り替わるのである。
こないだからの雨でまだかなり水が多い。
それに今日も明け方に雨が降って水がかなり濁っている。
不安。
イヤな感じがするのだ。
「どうなのよ?入ってんの??」とM子。
「入ってるよ!」と隊長。
「葉っぱがいっぱい入ってる!!!」
茫然自失・・・・川で呆然とたたずむ隊長。
M子も、フォトグラファー加納も言葉を発しない。
「・・・・・・・・」
川の激しい流れの音だけが続くのであった。
しかも悲劇は続いた。
帰り道、フォトグラファー加納と家に向かっていると、軽トラのいとう君が、突然バキャバキキキキ!と異音を発し、エンジンストップ・・・・・。
5分もしないうちに駆けつけてくれたレスキューキヨちゃん! ありがとぉ!!
幸い家の近くだったし、吉川自動車のキヨちゃんが工場にいてくれたので、ピックアップをお願いする。
そして工場にいとう君を運び、エンジンルームを明けてみると・・・
ウォーターポンプが外れてタイミングベルトに巻きつき、トンデモナイことになっていた。
で、キヨちゃんから「これはチーンやな」と、ご臨終通告。
あまりに急な話でとまどう私。
きょうの朝は・・・いやさっきまで・・・あんなに元気だったのに・・・。
荷台いっぱいの薪を運ぶいとう君・・・山菜をとるためにデコボコの山道をいくいとう君・・・昨年はじめて我が家にやってきたいとう君・・・そして人間いとう君の仕事場に打ち捨てられていたいとう君・・・数々の思い出が走馬灯のようにかけめぐる。
「さらば・・・さらばだ、いとう君!!」
私がショックと感傷で沈んでいると、フォトグラファー加納がパシャパシャ写真を撮りつつ、
「カニは獲れやんわ、いとう君は壊れるわ、悲惨やな。まあ気を落とすな、オクダ。人生こういうこともある」
と笑いを必死にこらえつつ言うのである。そして、
「しかし、おまえはエラいわあ、カニが獲れやんでも、しっかりオチをつくるでなぁ・・・ガハハハハ!」
と大笑いするのである。
史上最低のカニカニ大作戦!
見事完全失敗に終わったのであった!
無念!