銭湯いこに Vol.01「津・すえひろ湯」

投稿日: 2010年07月26日(月)22:20

写真/松原 豊   文/奥田裕久

地方からすばらしいものがどんどん消えつつある。

それは里山の暮らしであったり、単線の小さな電車であったり、手入れの行き届いた田畑であったり、息を呑む清流であったり・・・本当にたくさんのものが姿を消している。

しかし、そんな中で。
メディアに騒がれることなく、反対運動が起きるわけでなく、静かにそっとその長き歴史に幕を閉じるものもある。

そのひとつが銭湯だ。

そもそも風呂なしの家や集合住宅の少ない地方において、銭湯の存在理由は都会の下町などと比べてずいぶんと違うように思う。

現在、三重県の銭湯(組合に登録している大衆浴場、スーパー銭湯などをのぞく)は、なんとわずか49軒。
すさまじい勢いで消滅している。

「大変だけれど、毎日きてくれるお客さんのためにもがんばらないと・・・」

ボイラーの前で汗をぬぐいつつ、笑う銭湯の主がいる。
毎日のように銭湯に通い、顔なじみと今日一日を語り、背中を流し合うお客さんがいる。

なかなか知られることのない地方(三重)の銭湯をシリーズで紹介していこうと思う。

午後6時半。
銭湯の煙突が夕日に浮かび上がっていた。

シリーズ最初に訪ねたのは三重県津市幸町にある「すえひろ湯」。
国道23号選からほんの少し路地を入ったところにある。

昭和27年創業。
17年前に大幅にリニューアルし、近代的な外観になっている。

[googlemap lat=”34.707903″ lng=”136.506756″ align=”undefined” width=”400px” height=”300px” zoom=”15″ type=”G_NORMAL_MAP”]三重県津市幸町16−18[/googlemap]

すえひろ湯
住所:三重県津市幸町16-18
電話:(フリーダイヤル)0120-39-0531
営業時間:16:00~23:30
定休日:木曜日
(駐車場完備)

が、その近代的な外観とは裏腹に、メインの燃料は廃材。
重油などを焚いていたら採算がとれないという。

ボイラーに火を入れる裏手の空間は、すさまじい熱気である。
取材をお願いしたこの日の気温は、夕方だというのに30度オーバー。
たぶん中は40度を超えている。
足を踏み入れただけで汗が吹き出す。

すえひろ湯を守る主の米田幸二さん(48歳)。

10年ほど前、お父さんが倒れ、悩みに悩んだ挙句にすえひろ湯を継いだ。
お母さん、奥さんと共にすえひろ湯を守っている。

以前の仕事は建築関係。

「だから廃材を手に入れやすいんですよ。それでもなくなるときもありますが」

米田さんは現在、三重県公衆浴場業生活衛生同業組合の副理事長でもある。
この業界においては非常に若い存在だ。

「理事長と副理事長の私は若いですが・・・確かに高齢化が進んでます。跡継ぎがいない、やっていけないという話もよく聞きますし・・・5年、10年したらどんな状況になっているのかと思いますね・・・・」

「商売は正直大変ですよ。今でもお客さんは減り続けている・・・とはいえ、毎日きてくれるお客さんもいますからね、そのお客さんの顔を見てたら頑張らないとと思いますよ」

「家にお風呂がないお客さん? いないと思いますよ。ひとりなのにわざわざお風呂を沸かすのはもったいないというお年寄りの人が多いかなぁ」

脱衣場、風呂場ともにそんなに大きくはない。
でもすべて掃除が行き届いていて、気持ちいい空間になっている。

定番の富士山の絵はなかった。
これは地域的な問題であろうか。
これからいくつも回っていく中で確認をしていきたい。

ちなみに大人の入浴料は380円。
全国的に見ると安いそう。
東京だとすでに400円を超えている。

脱衣所でほてりを冷ましていた常連客の人に許可をもらってカメラを向けた。

「おいおい男の裸をとって何がおもしろいんやあ」

カメラマン松原とおいちゃんの声が外にまで響いてくる。
銭湯はにぎやかな雰囲気が似合う。

こんなに気さくに話ができ、そしてすぐさま笑えあえるのは、互いに裸だからか。
昔から銭湯は大人の社交場であり、大切な地域のコミュニティ。
汗を流し、垢を落とす場所だけではなかったのだ。

地域の絆のためにがんばる米田さんとお母さん。
恥じらいながらも寄り添うその距離感が微笑ましい。

ド厚かましくも、番台に座らせてもらう隊長。
脱衣所の方を向いていなくて残念(だから座れたのだが。笑)であったが、子どもの頃から夢がここでついに叶ったのだ(笑)。

この直後、実際にお客さんがやってきて、実際にチケットを受け取ったりした。
いきなりヒゲ親父が番台にいたので、その年配女性のお客さんは相当驚いていた(笑)。

さて、
ここで、写真師松原と隊長奥田の初コンビによる銭湯レポートの第一部を終える。
この企画は・・・・

①松原&奥田による事前取材。
②近くのお店でちょっと一杯(笑)
③閉店間際の銭湯に再び戻って入浴シーンおよびスペシャル企画を取材撮影。

という3部構成になっているのだ。

そもそもこの企画を思いついたのは、ある飲み会がキッカケであった。
銭湯に入って一杯飲んで、また銭湯いって・・・みたいな企画であったのだが、そこに現れた二人がすごかった。

銭湯を心から愛し、三重県のすべての銭湯を制覇しただけでは飽きたらず、滋賀や奈良や大阪まで進出しつつある銭湯マニアであったのだ。
ワタクシ(隊長)は、このようなことに熱中するヤツらが大好きである。
萌える!!!(笑)

そのうちのひとり(ケロリン)が、写真師松原の同級生であるということもあり、話はトントンと進み、今回の企画となったわけなのだ。

参考までにそのケロリンのサイト「いこに!三重県の銭湯!」をリンクしておこう。
ぜひあとで覗いてもらいたい。

事前取材を終えた写真師松原とワタクシは夕闇せまる外に出た。
ひとっ風呂浴びたあとに、ふらりと入る、そんな店を取材するのだ。
少しは飲んじゃうけど、これは取材なのだ、仕方ないのだ、むふふふ。

米田さんに、この近くに風呂あがりのままふらりと行ける店はありますか、と聞いたら、
間髪おかず「ない」と言われた(笑)。

「ええっと・・・・一番近いところで、古道公園の前の居酒屋か、それか最近出来た阿漕駅のそばの・・・」

わはは。
最近出来たそのお店はワタクシの実家なのだ。お母ちゃんがやっているのだ。

米田さんも奥さんやお母さんと行ったことがある・・・・というので、ええい、じゃあいいや、ということで実家の「そら豆」にいく。
そこでチビチビと飲みつつ、仕事帰りのケロリンやスペシャルゲストと待ち合わせ、そして再出撃に備えるのである。

が、写真師松原とワタクシである。
店に入るなり、生ビール乾杯ですぐさま2杯目へ・・・・。

ここまで、なるべくカッコよくレポートしてきたが、もうムリなのだ。
こっからもうドンドン壊れて、いつもの「サルシカ隊がいく!」なのだ(笑)。

午後8時、仕事を終えたケロリンが一身田(いっしんでん)の実家を経由し、自転車に乗ってそら豆に登場!!
なぜわざわざ自転車なのか!!
それは、この銭湯企画にはダイエットバトルという側面というかサブ企画が含まれているからである!!!

これから1年かけて三重県内の10軒ほどの銭湯を紹介していく予定である。
その間に、主な登場メンバーがどれだけ痩せるか、というドキュメントなのだ。
すっぽんぽんでなおかつ体重まで晒すのだ!(笑)

これから銭湯に入るし、体重を測るのだといっているのに、ワタクシの母は次々におつまみを出してくる。
「優しいお母さんじゃないか・・・」なんて思った皆さん、甘すぎます!!
ウチのお母ちゃんは息子からもしっかり金を取ります。
どんどん出しといて取ります(笑)。

やばい、絶対に食べ過ぎ飲み過ぎだあ、とわめいていると、イワワッキーから電話。
ツイッターでつぶやいてもいないのに、今回の撮影のことをどこからともなく聞きつけ、参加したいと表明してきたのだ。

まあ、イワワッキーは31歳のくせに不摂生な体をしてるし、結構デブだからOKだろうということで、急きょ参加に!!
すると、すぐさまママチャリで走ってくるのが彼のエライところである。

テーブルに山となっていたおつまみ類をすべてイワワッキーに平らげさせ、そして再びすえひろ湯に出撃!!

夜中の津の町を自転車で走るケロリン(左)とイワワッキー(右)。
それを、下駄を履いた隊長がカラコロカラコロいわせながら追いかける(笑)。

この時点で写真師松原を含めて4名。
しかもお母ちゃんとケイコちゃん(共にサルシカ隊)もいっしょに銭湯にいくと言い出したので、計6名で閉店間際のすえひろ湯に駆け込む。

さあ、風呂だ風呂だ風呂だ~!!!

「ああああああああああああ」
「ふひいいいいいいいいいい」
「うううううううううううううううう」
「あはぁああああああああん」

みんなそれぞれにアエギながらお風呂に入る。
が、まだもうひとりの隊員スズッキクスがまだである。
肥満度ナンバーワンと思われる彼がいないと、企画ははじまらないのだ。

ちなみに、すえひろ湯には、打たせ風呂、電気風呂、そして気泡風呂などなど、いろんな湯が楽しめる。
しかし、ずっと湯に使っているとのぼせてしまうので、しばし脱衣所で休憩。

もうこの段階でみんなかなりのハイテンションである。
男はポコチンを出していると、妙に子どもに戻ってしまう傾向にある(笑)。

ここではさすがに公開できないが、みんなポコチン丸出しのまま、肩を組んだり抱き合ったり、もう危ないおじさんたち全開で騒ぎまくったのであった(笑)。

そして待つこと10分。
ついにスズッキクスが登場。

ひとりで体を洗うその姿が、なんとも哀愁を誘う(笑)。

いよいよ全員そろっての入浴。
本当に気持ちイイ。
これで380円ならば、お得である。
銭湯で汗を流してそのあとみんなで宴会という黄金のコースを、ぜひサルシカ隊としてはオススメしたい!!!

今回、イワワッキーとスズキックスは本当に久しぶりの銭湯であったという。
以前入ったのは何年前か思い出せないほど。
その二人の感動はひとしおであった。

さて、
ここでようやくではあるが、参加メンバーを紹介しよう。

左上/ケロリン(三重を代表する銭湯マニア、雑誌などにも登場している)
右上/スズキックス(なんとケーブルテレビで自分の番組を持っているタレント??)
右下/イワワッキー(うどんやの若大将。津市げんき大学の委員長など様々な肩書きを持つ)
左下/サルシカ隊長(まあ、つまりワタクシである・・・・笑)

なんとも濃厚なメンバーである・・・・。
そして・・・・!!

最後の最後にこのおまけ企画なのだ!!!

見よ、この腹にため込んだ脂肪たちを!!(笑)
この余計な脂肪だけで、たぶん子どもか女性ひとり分の体重になるに違いないのだ。

これから1年かけて、この企画を続け、必ずや目標体重に全員が達するのだ!!

それでは、記念すべき基準体重測定!!
なんとスズキックスが自宅からマイヘルスメーターの「マイヘルス」(ここで略しちゃいかんと思うが。笑)を持参!!
その高性能マイヘルスで測定となった!!
その衝撃の数値を見よ!!(笑)

まずは左のスズキックスから。
隊長が「どれどれ・・・」と興味津々で覗き込んでいる。

右はケロリン。
「ほほーう、想定の範囲内だ・・・」と余裕の様子。

左は「ぐわっはああああああ!」と声をあげた隊長。
最高記録体重まであと0.3キロというところまで急接近!!

右はイワワッキー。
「まーこんなもんかな~。結構体重が動くんで~」
若いから余裕をぶちかましてやがる。くやしい。

それでは体重一覧である。

スズキックス:88.9㎏(目標マイナス10㎏)
ケロリン:78.0㎏(目標マイナス3㎏)
隊長オクダ:87.7㎏(目標マイナス12.7㎏)
イワワッキー:70.0㎏(目標マイナス3㎏)
写真師松原:60㎏(目標特に無し)

以上、これが全員の裸の数値である。
しかし、この体重の記録の様子もなかなか凄まじかった(笑)。

そもそも撮影をしているカメラマンもフルチンだし、メモをしている隊長もフルチンである。

「ちょっとみんなぁ、前だけはタオルで隠してぇ」と言っている人が、プラプラさせているのだから、まるで説得力がない(笑)。

撮影終了後・・・。
我々は喉をカラカラにして、再び大門(津市の繁華街ですね)に移動。
手羽先の「一福」に飛び込み、生ビールで乾杯した!
そのクヒ~~~ッとうまかったこと!!!

すえひろ湯のお兄ちゃん、お母ちゃん、
取材にご協力していただき、本当にありがとうございました。

次回の宴会のまえにも必ず立ち寄ります。
これからもがんばってすえひろ湯を守っていってくださいね!!