銭湯いこに Vol.10「怒涛の尾鷲編」後篇

投稿日: 2011年03月26日(土)19:45

写真/松原豊 文/奥田裕久


尾鷲編の中篇をアップしたのが3月2日であったから、ずいぶんと時間が過ぎてしまった。
ようやく尾鷲の完結編である。




ちょっとこれまでを振り返っておくと、ワタクシたちは昼前に尾鷲に到着し、まずは新生湯を取材。
ブルーの壁に囲まれてひとっ風呂あびた。




続いて閉店が決まっていた松の湯(2月末にて閉店)にて、およそ100年の歴史を感じつつ、湯船に浸かる。
いつもは「うひょー」とか「ああああ」とかうるさいワタクシたちなのであるが、やはりこの日ばかりは神妙であった。
もうすぐこの風呂がなくなる・・・・そう思うと、ついつい言葉数が少なくなり、湯けむりの向こうに見える使い込まれた蛇口や鏡や、懐かしい看板をずっと眺め続けた。


松の湯を出たら、もう夕暮れであった。
お昼ごはんのときにビールを飲んでから、全然水分を口にしていない。
もうノドがカラカラ。

今日はキャンピングカーのサルシカ号でやってきているのだ。
もちろん泊まり!
ということは、呑むのだ。
呑んで食べて、食べて呑むのだ!!!


というわけで、先程までの神妙な雰囲気を一気に吹き飛ばし、目的の店へと向かう。
もうどんどん早足になる。
店の前まできたときは、もうすでに走っていたのだ(笑)。




「かんぱーい!」とグラスを合わせたお店は、尾鷲市の繁華街のほぼ中央付近にある「静(しず)」というところ。
ここは、ワタクシがテレビの取材で尾鷲にきたときに、尾鷲市役所の方に教えてもらったお店で、ぜひ再訪したいと思っていたのだ。
したらば、写真師マツバラも以前取材で訪ねており、尾鷲でどの店にいくかと相談したときに、思わず二人で声を揃えて「静!」と叫んで、驚きつつ笑ったのだ。


ここのお店で少し食事したところで、ボーノー隊員が仕事のため津に戻り、代わりに仕事で遅れていたスズキックスが尾鷲入り。
上の写真は、スズキックスが到着して改めて乾杯しているところである。




このお店は、カウンターやカラオケもあるが、尾鷲の新鮮な魚介類を「これでもか!」というぐらい食べさせてくれる不思議なお店だ。
この日も、写真のテナガエビをどどーんと1人1尾ずつ、他にもオニエビやガスエビなどエビエビ攻撃に続き、お刺身、煮付け、焼き物・・・・と、もう終わることがないのだ。

それでいて料金は超リーズナブルである。
そもそも物価の安い三重県津市の人間が驚くのだから、たぶん名古屋や東京の人間がきたら、卒倒するか、もしくはAKB48みたいに歌って踊り出すのではないかと思うのだ(笑)。


ワタクシたちは乾ききったノドをグシグシと洗い流すようにビールを飲んで、そして目の前の海産物に飛びついた。
もうあとは幸せの時間なのである。

が、1時間ほどして、女将さんが「もうすぐネリがはじまるけど、見にいかへんの?」と言う。
そう、今日は尾鷲最大のイベント「ヤーヤー祭り」の2日目であったのだ。
ワタクシたちの目的はあくまで銭湯であるから、
「祭りとはタイミングが悪いなー、人がたくさんいたらイヤだなー」
などと最初は思っていたのだ。
しかし、みんなのスケジュールの都合上、ヤーヤー祭り真っ最中の今日しか調整できなかったのである。

とはいえ、年に一度の祭りである。
ま、まだ時間は早いし、酔い覚ましにちょっと行ってみるか・・・てな感じで見学にいくことにした。
「また戻ってきて呑んだらええで、荷物は置いとき」と女将さん。
なんともええ店なのである。
で、言葉に甘えて料金も支払わないまま店を出たのである。


ざわめきは、少し離れた路地から聞こえた。
近づいていくと、どんどん人の姿が多くなる。
すごい熱気だ。




どがーん!
おおおおおおお!!
うおりゃあああああああ!
どんどんどんどんどんどんどんどんどんどん!!
ちょーさじゃあ!!
ちょーさじゃあ!
どおおおおおおおおおおおおおお!!

まあ音だけで表現すると、こんな塩梅なのである(笑)。
もう少し分かりやすく説明すると、
町内ごとに若い男たちが町を練り歩き、丸太が組まれた場所で、町の誇りと男の意地をかけて激しくぶつかり合うのだ。
そのときのかけ声が「チョーサじゃあ!」というもので、意味はぜんぜんわからない(笑)。
しかし、先頭のおっちゃんが「待て待て待て!」と押さえても、
「あああああ、もうダメダメダメダメ、オレたちもうダメ、ガマンできない、溢れちゃう~!!」みたいな勢いで突進し、どおおおおお、と激しく衝突していくのだ。
真剣勝負のおしくらマンジュウだ(笑)。

しかもこの祭りの素晴らしいところは、若い女性がそのネリを取り巻き、応援していることである。
男が汗を流し、歯を食いしばり、声をあげてぶつかっている様子を、若い女性たちが嬌声をあげつつ手を振り、「いけぇええええ!」なんて言うのだ。

熱いのだ。
猥雑なのだ。
これぞ日本の祭りなのだ。

本来、日本の祭りは、若い男女が村を越えて出会う場であった。
その古き良き日本の祭りの風景がここにあるのだ。

「もう今晩は尾鷲じゅうがすごいで」
ケロリンがいやらしく笑いつつ言った。
ぶつかり合った男たちが、女の子とふざけあいながらどこかへ歩いていく。
うん、たぶん今晩はすごいだろうなあ、と他のみんなが思った。




一度「静」に戻って酒を飲み直し、コーフンを抑えてからまた出撃した。
ヤーヤー祭りは、町をネリあるき、そして港で終結する。
町を代表する男たちが生まれたままの姿となり、真冬の海へ飛び込んでフィナーレを迎えるのだ。

ここも最前列は若い女性ばかり。
もうワーキャーすごい。
そこを若い男がスッポンポンになって海へと走っていき、ドボーン!!
すごい歓声に包まれる。




こんな祭りが残る尾鷲は素晴らしいところだ。
ワタクシたちは再び「静」で戻り、酒を飲み交わした。

そして、祭りを終えた男たちが次々に店にやってきたため、ワタクシたちは誇り高き男たちに場所を譲り、店を出た。




祭りが終わった夜の街をフラフラと歩いた。
しかしどの店からも騒ぎ声やカラオケの音が聞こえてくる。
祭りを終えた男たちがアチコチで飲んでいるのだ。




尾鷲は人口の割りにはやたらと飲み屋が多い街である。
路地にずらりと店が並んでいる。
しかも深夜まで営業しているのだ。

あとで聞いた話によると、尾鷲は漁業の町で、陸にあがった船乗りたちのために店が増えたのだそうだ。

しかも面白いのは、その飲み方だ。
尾鷲の人たちは次々に店を変えつつ酒を呑む。
超ハシゴ酒だ。
30分ほど飲んで食べたら、じゃあ次・・・って感じ。

多い人だと1晩で4、5軒は回るという。
慌ただしいが、店にとってはいいことだ。
だからこれだけ店が残っているのであろう。




ワタクシたちも2軒めに突入!




この日は本当にいっぱい酒を呑んだ。
祭りのコーフンだった。
祭りは若い男女に互いを求め合いさせ、そしてオッサンに酒を求めさせるのだ(笑)。




かくして、
スズキックスは翌日、人生最大の二日酔いを体験することになる(笑)。

漁港そばの駐車場に停めたサルシカ号でワタクシたちは目覚めた。
すばらしい朝だった。

4人のオッサンたちが歯を磨いたり、トイレにいったりしていると、そこに1台の車がやってきた。
降り立ったのは見知らぬ男であった。

「サルシカさんですか」
と問われ、
「ええ、まあ」
とワケのわからん返事をする。

その男は、以前からこの「サルシカ」やワタクシのブログを読んでくれていて、この尾鷲にワタクシたちがいることを知り、そしてワタクシのブログからその場所を探り当ててやってきたのであった。

「ま、まさか、こやつは男が好きで、ワタクシをストーキングしようというのではあるまいか」と思ったが、話をしているとそんな感じではなかった。
しかもよくよく話を聞くと、紀北町の町議会議員だという。

いやいや、このような出会いはおもしろい。
しかもこのあと、彼は我が家の近所のエソラ隊員やキヨちゃんとも知り合いだと判明する。

いやー、世間というか三重はせまいな~。

この日、写真師マツバラはそのまま尾鷲で仕事。
津で仕事のあるスズキックスとワタクシは早々に尾鷲を出立した。

自分の車で寝てそのまま惰眠をむさぼるケロリンを残して・・・・・・・(笑)。