photo:松原豊(写真師マツバラ)
万感の思いを込めて言おう。
ついに・・・。
ついに「サルシカ銭湯企画」が復活なのだ!!!
思い起こせば、昨年(2010年)6月。
本当に唐突に「サルシカ銭湯企画」はスタートした。
最初は「サルシカ隊がいく」の企画のひとつであった。
が、回数を重ねるごとにアクセスはぐんぐんとうなぎのぼり!
銭湯が人気なのか、もしくはデブ親父の裸が人気なのか。
何がなんだかわからないまま、今年(2011年)の元旦の新聞に、銭湯の湯船に入ってマヌケにバンザイしているワレワレの裸体が掲載され、
「正月からなんてものを見せやがるんだ、このやろう」
などとアチコチから文句を言われつつも、銭湯企画はドカンドカンと盛り上がり続け、2月の尾鷲編で最高潮を迎えたのである。
が、思わぬ事態から、銭湯企画は休まざるを得なくなった。
写真師マツバラが交通事故で足を骨折。
入院こそ免れたが、長い期間の治療とリハビリが必要となったのだ。
が、その間にも撮りためた作品『村の記憶』をこの6月に発売。
足を引きずりつつもモーレツなプロモーションを続けてきたのである。
そして!!
ついに傷は癒えた。
ワレワレの銭湯に対する熱い思いも頂点に達した。
やろう!!
やろうじゃないか、おっかさん!!(スイマセン勢いです)
しかも!!
以前より更にパワーアップし、熱湯チンチンにして!!
もとい!
コーナーとして独立し、「銭湯にいこに」として!!
というわけで、今回はもう最初から意気込みが違ったのである。
1ヶ月ほど前から着々と企画が練られ、準備が進められてきたのである。
行き当たりばったりのこれまでの取材とはまったく違うのだ。
9月27日(火)午後6時30分。
ワレワレは三重県の県庁所在地にある津駅の、アスト前のバス停に結集!
集まったのは・・・
■三重の銭湯界をリードするケロリン桶太郎(TOP写真左から)
■サルシカ隊長オクダ
■なんと以前の銭湯企画から今回までの間に市議会議員なんてものになってしまったイワワッキー
■犬や猫の吹き替えをやらしたら右に出るものはいないボーノー隊員
■写真師マツバラ(撮影中)
この5人である!!
恒例メンバーのスズキックス、そして神父さん(銭湯が大好きな本物の親父さんです)は、現地で集合となった。
6時37分。
白塚駅行きのバスに乗車。
今回めざす銭湯は白塚にある。
もちろん電車で行けるし、車の方が絶対に便利である。
が、銭湯はのんびりと、なんかガタゴト揺られていく方が似合うではないか、ということでわざわざバスで向かったのだ。
ワレワレはこう見えても味なことをするオッサンたちなのである(笑)。
そして15分ほどバスに揺られて、白塚小学校前で下車。
運賃200円。
今回はいろいろと書かねばならぬことが多いのであるが、実はこのバスの中で、ワレワレは感動的な出会いをしたのである。
それが、一生懸命ハンドルを握ってくれた三重交通の逢坂運転手である。
何はともあれ、まずはこのリンクにある車内アナウンスを聞いてもらいたい。
三重交通バス・逢坂運転手のアナウンスに感動!(2011年7月6日版)
季節の話からはじまり、乗客を思いやる気持ちをせつせつと語り、なおかつ一生懸命運転してくれるのである(笑)。
ネット上に逢坂さんのアナウンスはアップされまくっていて多くの三重県民、いや日本国民を感動させているのである。
あろうことか!
その逢坂さんが運転するバスにはじめて乗ったのだ。
しかも降りる際に「ありがとうございます、足元暗いので気をつけて」とまで言われてしまったのだ。
おおおお、なんという慈愛の心!
逢坂運転手までもが、ワレワレの銭湯企画の復活を祝ってくれているのだ!
バスが行ってしまうと、町は急に暗く静かになる。
第2回目の銭湯企画でも歩いた白塚の町をいく。
まだ7時にもなっていないが、真夜中の雰囲気。
以前お邪魔した和菓子の前田屋さんもすっかりシャッターを下ろして真っ暗。
すでに廃業している白玉湯は当然真っ暗のまま。
前回は町往く人がいて、立ち寄る店があった。
が、今回は車が通り過ぎるばかり。
なんだか急に心細く、悲しくなってくる。
まったく知らない町に来たようだ。
でも大丈夫。
すぐそこの角を曲って、まっすぐ進んだら、今日入る「さくら湯」さんがある。
前回の旭湯訪問のときに、中だけ覗かせてもらって写真を撮らせてもらった銭湯である。
その時の模様はこちら!
あの昭和の匂いを残す銭湯が、熱い湯をたっぷりとたたえ、ワレワレの心と体を温めようと待ってくれているのだ。
「いざ!」
「いざいざ!」
どんどん足早になってさくら湯に向かう。
「あれ・・・?」
最初に声をあげたのは先頭をいくケロリンであった。
「なんか・・・電気がついてへんような気が・・・」
「休みか?」誰かが言う。
「いやいや、定休日は今日と違うし、それに2回も事前にやってきて今日の件をお願いしてあるんやで」
が、さくら湯は完全に閉まっていた。
真っ暗で、絶対に湯船に湯が入っているとは思えなかった。
みんなで真っ暗なさくら湯に走り寄ると、そこには張り紙があった。
「煙突修理のため28日(水)まで休みます・・・・」
つまり、明日まで臨時休業ということだ。
「おいおいおい~」
理由が理由なだけに誰も責められない。
ワレワレはヘナヘナとその場にへたり込んで、
「ここまで来たのにどーしたらええんやあ~」
「うわー、最悪やあ」
「記念すべき復活企画があ・・・」
と、それぞれに嘆いた。
すると、その声を聞きつけたのか、さくら湯のお母さんが奥の家から走り出てきた。
「ああ~、やっぱりお宅さんたちやったあ、ごめんね~、こないだの台風(12号)で煙突が途中で折れてしまってね・・・連絡をしようと思ったんやけど、電話番号も聞いてなかったもんやから・・・ごめんしてねぇ」
いやいや、悪いのはお母さんじゃないのだ。
悪いのは台風12号であり、
そして2回も来ておきながら連絡先すら伝えてなかったケロリンなのだ。
「ったく、おまえってやつは・・・」
「どーして名刺のひとつも渡しておかんのだ、バカモノめ」
責める相手を見つけると、みんな急にゲンキが出てくる。
人間とは不思議なものである。
「ま、いいではないか。ここはひとつ基本に戻って、改めて旭湯さんに入れてもらうということでいいじゃないか」
と、隊長のワタクシ。
そしてみんな同意で、歩いて10分ほどの旭湯へと向かうことになった。
「ま、こういうこともあるさ」
「これこそワレワレの復活銭湯企画っぽいじゃないか」
慈愛の心に包まれたワレワレは互いを励まし合って夜の白塚を歩くのであった。
「おおっ!!」今度声をあげたのは写真師であった。
「あそこに立ち飲み屋があるぅ!」
「どこどこ!!?」
ワレワレは前方の路地に目をやる。
そこに青白い蛍光灯の光がこぼれる店があった。
「おおおおおおおおおおおおおお!!」
その店のまえに立ってワレワレは改めて静かにどよめいた。
さほどにすばらしい店であった。
カウンターのみで7人も入ったらいっぱいになる店。
つまみが入った駄菓子の入れ物と空になった瓶ビールが目に入る。
中にお客さんがひとり。
いきなり暗闇から5人の男たちが現れて、店の前で騒いでいるものだから、お店のおっちゃんもお客さんも完全に警戒モードである。
「あの~」隊長のワタクシはゆっくりと店に入る。
「ビールとか飲ましてもらえるやろか?」
「そりゃあ飲ませるで店やでな」とおっちゃん。
その声を聞いて、やれやれと店になだれ込む。
「おっちゃん、瓶ビールひとり1本にこのスルメちょうだい」
入ってきたばかりにしては注文の仕方が図々しい(笑)。
しかしそれはこの駄菓子屋のような店の雰囲気がそうさせているのだ。
置いてあるモノ、雰囲気、何もかもがええ感じである。
「これキタッ!!キタ~~!!」写真師が小さい目をひん剥いてコーフンしている。
「おいちゃん、写真撮ってええ?」と聞くや否や、返事も待たずにシャッターを切りはじめる。
「いいねいいねいいねぇ!!これはキタよ~!!コレ最高!!だからこの企画はやめらんない!!おっちゃんも最高!!あああ~、もうイッちゃう!!」
来たり行ったり、まったく忙しい男だ。
そもそも写真師は前日まで東京の新宿で写真展を開いており、それを終えて今日の朝、深夜バスで三重に帰ってきたのであった。
しかも家に帰ることなく、そのまま津あけぼの座という劇場の支配人たちに拉致されて、津市内の店を撮影してまわり、ヨレヨレのままこの銭湯企画に参加したという凄まじい状況。
普段でも相当テンションがおかしいが、今回は仕方ないのだ(笑)。
で、ここの店の名は、山舗酒店。
実は金魚屋さんもやっている。
金魚の達人として三重テレビにも何度か出演したことがあるらしい。
が、ボーノーさんやワタクシのことはまったく知らないようだ。
ま、ワレワレの知名度はこんなもんだ(笑)。
何はともあれカンパーイ!!
銭湯にも入っていないのにビールがうまい(笑)。
写真師はビールを飲みつつ、ギャーギャーわめきつつ写真を撮っている。
そうこうしている間に、神父さんの車が店の前を通り過ぎ、ケロリンが慌てて店を走り出る。
銭湯にいく。
銭湯からカラコロと歩いて呑みにいく・・・。
ワレワレが求めていたものが、この店にはあった。
うれしくて1本のはずのビールが、2本、3本と空いていく。
いいのだいいのだ。
これでいいのだ。
ケロリン、イワワッキー、ボーノー、写真師、神父、隊長・・・。
仕事で遅れているスズキックスを残してメンバーが揃った。
さあ、そろそろ湯に入りにいこうではないか。
なんとまだ銭湯に入っていないにもかかわらず、
復活銭湯企画の前編は終わってしまうのだ。
後編。
大きな波乱がワレワレを襲うのである。
<つづく>