第20回「隊長、木花堂でアレもコレも買う!」

投稿日: 2011年12月02日(金)08:04

提供:ゲンキ3ネット

熊野応援シリーズ第2弾!
「made in KUMANO」・・・熊野の作家と熊野の素材にこだわった衣・色・住と、量り売りのお店「木花堂」へいく!


そのお店は国道42号線沿いにある。
津方面からだと、鬼ヶ城をこえ、左手に堤防が続く途中。
あまり目立たない雑居ビルの1階。
脇見ばかりして運転してると危ないので注意しつつ探そう。



「ん? なんて読むんだ?」
と思った人いますね。
「このはなどう」と読む。

名前もお店の雰囲気もオシャレ。
ヒゲ親父が入るにはちょっと気がひける(笑)。
ちょっともじもじする。
したらば、ガラスの向こう側から笑顔の女性が「おいでおいで」してるので、勇気を出して中へ。



店の前に熊野灘の荒波が広がっているとは思えない店内である。
ヒノキの香りがかすかにする。



こちらが、先程ワタクシに「おいでおいで」してた久保咲恵さん。
この店のオーナーである。

彼女は神奈川県出身。
自然の中での暮らしを求めて、お父さんの故郷である熊野に移住してきた。
現在はNPOの職員としてフリーペーパーなどの発行をしつつ、こちらのお店の経営もしている。

「きのう、すっごく楽しかったんですよ! 尾鷲湾を見下ろす尾根をずっと歩いて、すっごく素敵な場所を見つけたんです!」

彼女のいう「すっごく」は最上級の中の最上級という感じがする(笑)。

「へえ、そんないいところなら今度案内してよ」と言うと、
「いいですよ! その代わり13時間ほど歩きますがいいですか?」
「よくない!」

天然というわけではないのだが、なんだかふんわりと不思議な感じがする女性である。

彼女に会うのは実は2回目。
なんと第5回の隊長レポートで尾鷲の「夢古道おわせ」を訪ねた際、ワタクシの前にラジオの収録をしていたのが久保さんだったのだ。

そのとき名刺交換とお店の案内をいただき、ぜひ取材にいきますね、と約束していたのである。



お店の半分以上を占めているのは、染物、木工製品、ステンドグラス、革製品・・・などなど、熊野の作家さんがつくった衣・食・住に関わる作品が並ぶ。

素材も熊野のものにこだわり、昔ながらの製法にこだわったものが多い。
女性が喜びそうなものが多いと思いきや、ワタクシのようなオッサンも萌える作品もある。

ワタクシは本藍染めの手ぬぐいに萌えた(笑)。



木花堂は店自体が情報発信のためのメディアである。
小さな店内に熊野の文化が詰まっている。

「せっかく熊野でやるんだから熊野にこだわった店がやりたかったんです。熊野に来たらあそこによろう、あの店に行きたいから熊野にいこう、みたいになればいいなと思って」

なるほどなるほど。

彼女のお店のコンセプトを2年ほど前から温めていたそうだ。
アイデアをノートに書きとめ、絵にし、ひとつひとつが具体的な形をなすまで頭の中で熟成させ、そしてこの6月(2011年)に出店となったのである。



「格好いいことばかり言ってますが、正直なところ、熊野でこの先生きていくための足がかりをつくっていこうと考えているところもあります。
 まだまだお店だけで食べていくなんて全然できない状態ですが、少しずつ売り上げを伸ばしていって、熊野を代表するセレクトショップ的な存在になって全国にネット通販もできたらいいなあって」



もうひとつ。
この店のウリは「量り売り」。

乾燥しいたけ、お茶、醤油、お酢。
久保さんが厳選された熊野の食材を、まさに量り売りしてくれるのだ。



「売るたびにゴミをつくってしまうっていうのに抵抗があったし、格好のいいビンや入れ物を持って買いに来る、そんな文化が熊野に根ざしたらいいなあ、と思って」



しいたけやお茶を入れる缶、醤油やお酢を入れるビンは、久保さんが探しに探して揃えたものばかり。

「とは言え、入れ物は何でもいいんです。ジプロックを何度も洗って使って持ってくる人だっているし(笑)」

こだわりと鷹揚さ。
それが久保さんの魅力であり、木花堂の面白さである。



実は、今回の熊野の取材のほとんどを久保さんにアテンドしてもらった。
NPOでガイドや案内もしていることもあるけれど、彼女の人のつながりは幅広い。

そしてつながっている人たちは、みな彼女のファンなのである。
応援団であると言ってもいい。

熊野で生まれ育った人、外から移り住んできた人、そんな人たちの間に立って、その人達の関係を結びつけつつ、潤滑剤のように笑顔を振りまく。
そんな感じといえばいいだろうか。

ほんわかと、ふんわりと、しかし、しっかりとした魅力的な女性。
それが久保さんなのだ。



「先のことを考えると不安もあります。少しずつお客さんが増えているとはいえ、食べていけるにはまだまだですし、仕事がたくさんあるわけでもないですし・・・」

でも、と、久保さんは続ける。

「焦っても仕方ないのでボチボチがんばります。熊野でいきていけるように」



取材しつつも、しっかと棚を物色していたワタクシは、本藍染めの手ぬぐいと赤倉茶などなど購入。
ムヒヒとなっている(笑)。

みなさんも、熊野へ行ったらぜひ木花堂へお立ち寄りください。
いや、よかったら木花堂へ行くために熊野へ行ってみませんか?




写真/松原豊(村の写真師) 文/奥田裕久(サルシカ隊長)
サルシカ/ http://www.salsica.com/