銭湯いこにVol.17「伊賀の銭湯で落語なのだ!」①~はじまる~

投稿日: 2012年03月26日(月)01:44


写真/松原 豊 文/奥田裕久

トンデモナイことになってきたのである。
サルシカの銭湯企画『銭湯いこに!』は、なにやらいつの間にかジンワリと熱く身体の芯まで温めるように人気が上昇し・・・
なんとテレビでも紹介されるようになり、なんとなんとケロリンまで出演してしまってシリーズ化の気配があり・・・
そしてついに、落語家であり、サルシカ名誉隊員である「林家染弥」さんが登場なのである!

アホなことでも、バカなことでも続けてみるものである。
思いもしなかった展開が広がりつつあるのだ。

なんたって銭湯で落語なのである。
本当にやっちゃうのである。

まずは順を追って話さなくてはならぬ。
話は2010年の12月に遡る。

第7回目の銭湯企画で、ワレワレは伊賀の一乃湯さんにお邪魔した。
まちかど博物館にも指定されているレトロな銭湯である。

前回の様子を読んでいない人は、まずこちら第7回「伊賀・一乃湯」を!!

そもそもこの一乃湯とは、出会いからして複雑だったのだ。
銭湯企画としてワレワレは銭湯に入り、写真を撮り、取材し、そしてそのワレワレの様子を読売新聞が取材してという・・・まるで合わせ鏡状態の取材だったのだ(笑)。

しかもワレワレの裸体は、元旦の新聞に大きく掲載され、
それはもうアチコチから、
「正月からキタナイモノを見せるな!」とか「恥を知れ!」などと罵られたものである。

しかしこの一乃湯は取材の形態以上に、その建物の雰囲気のよさが印象に残っている。
そして店主の思いが、熱湯のようにチンチンに熱かったのを覚えている(笑)。

そんな強烈な記憶が、次につながったのであろう。
今年の1月、
ワタクシがずっと出演しているテレビ番組『とっても!ワクドキ!』という三重テレビの情報番組で、銭湯企画をやろうということになったとき、まっさきにこの一乃湯が浮かんだのである。

そして林家染弥さんと共に一乃湯を再訪。
テレビカメラの前で熱い湯に身を沈めたのである。

そのとき、東北の銭湯めぐりから戻ったばかりのケロリン桶太郎も駆けつけ、さりげなく画面に写り込んでいた。
その証拠写真がこちらである。

この日、久しぶりに銭湯に入ったという染弥さんのテンションは高かった。
銭湯の人情に触れ、そして銭湯を守り続けようとする店主の熱い思いに触れ、染弥さんも燃え上がった。

「銭湯とね、ボクがやってる古典落語は非常に似てるんですよ。どちらも古きよき日本の文化やけれど、がんばっていかないとこの先消えてしまうかも知れない・・・そこんところが心に触れたんですよ」

そしていつの間にか、ぜひ銭湯で落語をやろう、この一乃湯で寄席をやろうという話になった。
染弥さんが店主に「ぜひとも!」というと、店主も負けじと「ぜひぜひぜひ!」と染弥さんに言った。

しかし期日を決めない約束は往々にしてそのまま流れるものである。
だからその日のうちに日程を決めてしまった(笑)。
値段もあくまでファンサービスで、大衆浴場にふさわしい価格にと決定した。

こうして「銭湯で落語」は始まったのである!

ちなみにこちらが一乃湯寄席のチラシである。
実はこの企画、ワレワレ、サルシカも運営者側にまわりながら、サルシカで告知をしていない。

一乃湯の店主・中森さんが、せっかくの機会なので、まずは一乃湯の常連客を優先したい、という話になり、その常連客とご近所の人たちで限定35席が埋まってしまったからである。

そしてその3月8日・・・・。
ついにその時がきた。
サルシカ隊、銭湯企画メンバーに招集がかかった。

「サルシカ隊に告ぐ、銭湯メンバーに告ぐ、全員出動せよ!」
「ラジャー!!」
「了解!」
「ガッテン承知のすけ!」

平日の木曜日でありながら、なぜかメンバー全員集まる(笑)。
この結束力はすごいのだが、社会人として大丈夫なのかと毎回不安になる。

銭湯博士のケロリン桶太郎、そしてその師匠である神父さんは、まっさきに伊賀の一乃湯へと向かった。
神父さんはなんと滋賀県彦根市から駆けつけてくれたのである。

そしてスズキックスは、落語セット(毛氈やら座布団やら立て看板やら)を津あけぼの座へ借りに。
あけぼの座は染弥さんが年に数回落語会をやっているところだ。
ワレワレの申し入れに対し、快く落語セットを貸してくれたのである。

ボーノー隊員とイワワッキーは仕事の都合で夜に合流。
そして写真師マツバラと隊長のワタクシは、大阪から電車でやってくる染弥さんを迎えに、伊賀神戸の駅へと向かったのである。

午前11時30分。
伊賀の一乃湯に到着。

駐車場に昭和の匂いが漂う看板が飾られている。
ワタクシがここを訪ねるのは3回目。
なにかと縁のあるところとなったのだ。

染弥さんも2回目の訪問とあってリラックスした雰囲気。
男湯の入口に今回の落語会のチラシが貼ってある。

落語会は男湯の脱衣場で行われる。
女湯の脱衣場が控え室。
この日は銭湯自体はお休みで、残念ながら湯に入ることはできない。

落語会は夜だし、銭湯もお休みなのであたりは静かである。
町のアチコチにも落語会のチラシが貼られている。

銭湯の手伝いをしている女性の方が、銭湯のまわりの草抜きをしていた。
この銭湯はとにかく掃除を徹底的にやるところなのだ。
今日は営業はしないけれど、落語会があるので、外回りを中心に掃除が行われているらしい。

古いけれど清潔。
ツヤが出るほどすべてを磨き上げている。
染弥さんがこの銭湯に惚れたところである。

まずは会場づくりからはじまった。
近くの公民館から椅子と座布団を運ぶ。
染弥さん本人も運ぶ。
隊長も運ぶ。
神父さんはなぜか笑う。

店主の中森さんは朝からずっと走り回っていた。
今晩、一乃湯はお客さんでいっぱいになるはずである。
老若男女が集い、語らい、体を温め、ほぐし、目を閉じ、うなり、そいて笑ってきた銭湯にたくさんのお客さんが帰ってくるのである。
中森さんは明らかにコーフンしていた。
落語セットを持ってきてくれたスズキックスも、準備を続けるケロリンも神父さんも、シャッターを切り続ける写真師も、そしてワタクシもコーフンしていた。

そして12時すぎ・・・・。
すべての準備は整った。

落語会まであと6時間半。
ここから、いつもの町歩きと銭湯めぐりもスタートしちゃうのだ。
そう、
他の銭湯へ行っちゃうのだ(笑)。

もちろん一乃湯の店主の了解を得た上である。
伊賀の銭湯全体を盛り上げていきたいという中森さんは、快く他の銭湯を紹介してくれた。

もちろんその取材にはテレビカメラも同行する。
これまでとはちょっと違う銭湯めぐりがはじまるのだ。

次回、伊賀の町歩き編。
懐かしい昭和の玩具とジュースに吠えまくり、林家染弥は手裏剣を投げる!!
乞うご期待!(笑)