銭湯いこにVol.20「伊賀の銭湯で落語なのだ!」④~湯けむりに笑う~

投稿日: 2012年03月30日(金)17:28


写真/松原 豊 文/ケロリン桶太郎&奥田裕久

飯も食った。
酒も飲んだ。
伊賀の町も歩いたし、銭湯にもつかった。
身も心も清め、心おだやかにそのときを待っていた。

落語会の会場となる一乃湯のネオンに明かりが灯った。
いよいよ開場の時間である。

ここまでカッコよく書いてきたが、どうもワレワレの行動というのは締まりがない。
キンチョー感というものがないのだ(笑)。

スズキックスは演台に勝手にあがりこんで、不謹慎にも落語家ごっこをして遊んでいるし、ケロリンと神父さんは一乃湯の昔の写真に見入っている。
そしてまもなく落語をやる染弥さん本人も、差し入れのコロッケが食べたくてこんなことしてる(笑)。

が、遊びもここまで。
開場と同時にどんどんと車がやってくる。
ワレワレ、サルシカ隊銭湯メンバーは駐車場整理係、開場への案内係などに走る。

銭湯の取材をして歩いてしゃべって湯に入って、それから車と人の誘導である。
ワレワレも大変なのである。

1台の車がスズキックスの制止を振りきって突っ込んでくるなあ、と思ったら、なんとボーノー隊員。
ただちに一番遠くの駐車場へと案内する(笑)。

すると今度はタクシーがやってくる。
落語を聞きに銭湯までタクシーに乗ってくるヤツとはどんなヤツだ、と覗き込むと、今度はサルシカ銭湯メンバーのイワワッキー(笑)。
一乃湯の場所を忘れてしまい、駅からわずか500メートルの距離をタクシーに乗ってきたという。
相変わらずの男である(笑)。
しかし、市会議員の忙しいスケジュールを縫って、ちゃんとやってくるその心意気は素晴らしいのである。

染弥さんが着替えはじめる。
と同時に、徐々に顔が引き締まっていく。

開演まであと10分。
一乃湯店主の中森さんがソワソワと動き続ける。
男湯の脱衣場からはザワザワと声が聞こえはじめる。
もうかなりお客さんが入っているようだ。
中森さんがまだ来ていないお客さんを確認する。
ガラリと扉が開く。
トイレから戻ってきたイワワッキーだ。
みんなでイラッとする(笑)。

地元ケーブルテレビの取材もやってきた。
なんとビデオカメラが3台もまわっている。
新聞やタウン誌のカメラもバシャバシャとシャッターを切っている。
それに負けじと、我がサルシカ隊のちっちゃなカメラマンもバシャバシャバシャとシャッターを切る。
枚数で勝負するんじゃない!

そして最後のお客さんも会場に入ったようだ。
ケロリンがラジカセで出囃子を鳴らす。
そして染弥さんが女湯から男湯へと入った・・・・。

ワーという拍手と歓声。
一乃湯の男性脱衣場はお客さんに埋め尽くされていた。
すごい熱気だった。

「むかしから銭湯というのは人寄場(ひとよりば)と申しまして・・・毎日たくさんの人が集まり、風呂に入って汗を流し、裸の付き合いをする社交場でございまして・・・」

染弥さんの噺がはじまる。
そもそも落語を生で見るのは初めてという人がほとんどで、なおかつ非常に近い距離感である。
最初こそみんな緊張してか表情が硬かったが、染弥さんの話でどんどんやわらいでくる。
声を出して笑いはじめる。

そして噺に入った。
題目は「時うどん」と「手水まわし」。

銭湯に笑い声が響く。
かつて銭湯が家にないのが普通だった時代・・・銭湯に人が集い、汗を流し、裸の付き合いをした時代・・・そんな人寄場としての
銭湯がここに蘇ったのだ。

限定35席は予約で完売。
当日の人は立ち見で。
そしてワレワレ、サルシカ隊と一乃湯の関係者は控え室に設置されたモニターで落語を楽しんだ。
総勢50名を越える笑い声が一乃湯に、そして伊賀の夜に響いたのだ。

落語の合間には、一乃湯のご主人の中森さん、染弥さん、そしてサルシカ隊・隊長のワタクシの3人で銭湯トークをやった。
ケロリンの桶の秘密・・・昔は別料金だった洗髪代など・・・マニアックな話で盛り上がった。

1時間ちょっとの予定を大幅にこえて、2時間ちょっとの一乃湯寄席であった。

自転車で、バイクで、車で、歩きで、にぎやかにお客さんたちが帰っていく。
テレビのカメラがお客さんの声を拾う。

「本当に楽しかったです~、こんなに笑ったん久しぶりです~」
「今度は昼間にもやってほしいです~、おじいちゃんおばあちゃんにも見せてあげたいです~」
「またやってください、ぜひ恒例で!」

うれしい声ばかりだった。
染弥さんだけじゃなく、ワレワレ、サルシカ隊まで握手を求められた。
感謝された。

そしてわずか15分ほどで片付けを完了させて、宴会である!
もちろん脱衣場で!!(笑)
メインのおつまみは、伊賀名物の豆腐田楽!

見よ、このみんなの楽しそうな顔を!
満足いっぱいの表情を!

「またぜひやりましょう!」
「今度は秋に!!」

なんと、もう次回の予定が決まっていたのであった・・・(笑)。
この夜、伊賀の一乃湯は、湯船に水を張っていないにもかかわらず、熱湯チンチン風呂であった。
熱く熱く熱く、果てしなく呑み、語り、笑ったのである。

伊賀、いや三重県の銭湯は永遠です!!(笑)

一乃湯
情報はこちらをご覧下さい

「伊賀の銭湯で落語なのだ」・・・・完