写真/ヴァナゴン太田・中谷の父ちゃん・IT松本 文/サルシカ隊長
ゴムボートで三重の川をくだろう企画の第1弾である津市の安濃川を終えて、早くも1カ月が過ぎようとしていた。
隊長のわたくしも、中谷の父ちゃんも、暇そうにみえてこれが結構忙しく、なかなか第2弾の川下りをできないでいた。
そんな時。
ひょんなことから、紀北町に取材にいくことになった。
紀北町海山区引本港で行われる「きほく夏祭りKODO」の取材をすることになったのだ。
引本といえば!
サルシカにとっては心のふるさとともいえる紀北町の清流・銚子川の下流のすぐそば!!
午前11時半までにお祭りの会場に入ればいいとのことなので、早朝から川下りをやれば、やってやれないことはない。
が、問題がひとつ。
誰がカメラマンおよび車両班を担当するのか。
紀北町にはサルシカ隊のメンバーがたくさんいるが、この地域の特性として、基本みんな祭りにいく。
遊ばなくても祭りを手伝っている。
紀北町在住の何人かに声をかけてはNGをもらい、ああやっぱりダメかと思いはじめた頃、紀北町のおとなりの尾鷲市にこの4月から赴任中のヴァバゴン太田さんから、
「きほくの夏祭りはくるの〜? ぼくも行くから遊んで〜!!」
と、連絡があったのだ。
飛んで火に入る夏の虫!
太田さんに午前中が空いていることを確認し、有無を言わせず、ゴムボート企画に引っ張りこんだのであった。
そして、きほく夏祭りKODO当日の朝。
朝5時に起きて三重県津市のサルシカ秘密基地を出発。
午前7時半には、紀北町海山区の種まき権兵衛の里近くの河原にいたのである。
が、そこにいたのは、ヴァナゴン太田ではなかった。
最近カヌーを手に入れてはまりにはまっているIT松本であった。
「おはようございます、来ちゃいました、あははは」
IT松本は午後の夏祭りでイカダレースに出場するのである。
その様子をわたくしと中谷のとうちゃんは取材にきたのである。
が、IT松本は、早朝から銚子川をくだるという話を聞いていてもたってもいられず、われわれよりも早く津市から走ってきたのだ。
「午後からイカダを漕いでめちゃくちゃ体力を使うのに大丈夫なの?」
私は心配そうにいった。
なんたって優勝賞金10万円がかかっているのだ。
がんばってもらわねば、今晩の大宴会が夢と消えるのである。
が、IT松本は飄々と笑って、
「大丈夫です! 仕事でパソコンばかり向かってますけど、身体は鍛えてますから!」
さて。
わたくしと中谷の父ちゃんこそ、超軽量ゴムボート「パックラフト」の準備をしなくてはならない。
パックラフトはひとつの重さ3キロちょっと。
だから、乗用車でも余裕で運べる。
ミニバンだとパドルも車内にしまえちゃうから、外からは何をしにいくかまったくわからない。
ずっと車に積んでおいてもOKだね。
いい川を見つけたら、その場でふくらませて川に浮かべんの。
ああ、理想的だなあ。
前回、わたくしと父ちゃんは、電動のブロアーを使うと、一瞬でパックラフトを膨らませることを知った。
何事も経験なのだ。
知恵を使うべきなのだ。
もちろん今回も持ってきた。
「松本さん、見ててね、本当に一瞬でふくらんじゃうから! 驚いちゃうよ!!」
が、ブロワーはブオンと最初の1回のみ拭いてあとは小さなドライヤーの音のようになっていくのだ。
そしてその小さな息吹も、ため息をついて消えた・・・・。
「いかんじゃん、バッテリが空っぽじゃん、もう誰だよ充電しなかったの」
中谷の父ちゃんが誰かを責める。
この人は困ったことが起きると、そこにいない誰かに文句を言うのである。
ま、つまりは自分の分身に、である(笑)。
結局、わたくしは手動で空気をふくらませる。
暑い。
汗がしたたる。
なーにが楽ちんだ。
なーにが川を見つけたらすぐ浮かべるだ、コノヤロ。
「なんだ、もうみんないるんじゃないですか、ずっと向こうで30分ぐらいまえから待ってたのにぃ」
そういや肝心のカメラマンおよび車両班のヴァナゴン太田さんがいないなあ、と思っていたら、となりの駐車場にキャンピングカーのヴァナゴンを停め、ぼへ〜っと待っていたのだという。
そこに、中谷の父ちゃんとわたくしの罵り合う声が聞こえてきて、居場所がわかったのである。
「軽いですよ、太田さん、片手で持てますから」
上手くいって太田さんにパックラフトを持たせ、川に運ばせるわたくし。
種まき権兵衛の里の駐車場まえの河原。
ここはキャンプやバーベキューでいつも賑わっているところだ。
サルシカでもなんどかここに来たことがある。
わたくしたちサルシカがこよなく愛する魚飛渓(うおとびけい)はこの上流。
せっかくなのでヴァナゴン太田さんにパックラフトの試乗をしてもらうことに。
IT松本さんにも。
パックラフトは操作性が高い。
くるくる回ってしまうこともないし、そこそこまっすぐに走ってくれる。
「いいなあ、これ」
「いいですねぇ、これ」
そして値段を聞かれる。
これが結構高い。
で、みんなそこでパックラフトを下りるのだ(笑)。
パックラフト1号にわたくし、2号に中谷の父ちゃん、そして伴走のポリ艇にIT松本が乗り込み、いよいよ銚子川くだりのスタート!
この水の透明度をみてもらいたい!
この日は水量がかなり少なく、これでもまだ透明度が低いぐらい。
コンディションがよければ、水がないような、まるで船が空に浮いているような感覚になることもある。
「それではいってきます〜!!!!」
ヴァナゴンで追跡しながら写真撮影をしてくれる太田さんに別れをつげ、われわれは銚子川をくだりはじめた・・・・。